犯罪予告に対する「小柳的対応」

■殺害予告や爆破予告のネット書き込みによる営業損失

迷惑メールなどと同じく、ネット技術の発達で不埒な悪人は1名でも「お手軽に」周囲に迷惑を振りまける時代になってしまっているということですね。正体がすぐにはばれない状態で、手軽に予告ができ、しかも大勢の人間に影響できるので、主に現実では実力もなく、大したことができない愉快犯の方々に愛好されているわけですね。

まず書くまでもないかもしれませんが、こういう予告をする人間には厳罰を与えるべきです。他の方が多くしてくださっているご意見や感想についてはほかの方にお任せしたします。

私は企業の内部監査をしている人間ですので、その見地から掘り下げをしてみます。

本件に限らず、いわゆる犯罪予告のメールや書き込みに対する対応について。企業のリスクコントロールの見地から色々と思うところがあります。

全てのリスクに万全の備えを行うのは理想ですが、現実的には企業の資源、リソースは有限です。対応する優先順位を付けて傾斜配分で対応することになります。

「影響度×発生確率」でリスクを評価します。

こういった犯罪予告の類では「発生した場合の影響度は大きいが発生確率は非常に低い」というのが大半です。原子力の利用などと同じく、「影響甚大×発生確率僅少」なリスクの評価と言うのは実に難しいのです。

「発生確率は低いがゼロとは言い切れない」という点を突いた、なかなか巧妙なやり口なのは事実です<対策を考えるために「事実として認める」のみで、共感はしませんし、推奨などもってのほかです>。

ただ、犯罪予告のたびに休業や閉鎖をしていては企業としては商売あがったりです。機会利益の損失(逸失利益)が甚大なことになりますし、信用にもかかわってきます。毎日予告されたら毎日休業するというわけにもいきません。メリットとデメリットを考慮する必要があります。

では、どうするか?

私が責任者なら「犯罪予告があったことを伝えたうえでの営業」も選択肢に入れます。

たとえば犯罪予告の内容を店頭等で明示した上で営業を行います。お客様には「覚悟の上」で来店してもらうわけです。客足に多種の影響はあるでしょうが、「悩んだ時は情報公開」が基本原則でしょう。隠していて後で発覚するとろくなことにならないものです(笑)。 私自身、公認内部監査人であると同時に行政書士のわりに、法的な問題などはあまり検証していないアイデアです(!)ので、その方面での掘り下げには不足があるかもしれません(笑)。

①もし、事件が発生しなければ、逸失利益は最小限に抑えられます。
②予告通りに犯行が行われたとして、顧客にもそれを承知してもらうことで迅速で適切な対応が期待できます。
③「顧客も承知済み」ということで責任権限の分掌を狙っています。

上記の通り、「犯罪予告だけの愉快犯」に対して「影響の少なさ」を主張できます。本来ならば、無視して影響度ゼロだと強がってみたいところもありますが、やはり可能性は無視できませんし、未対策な様子を見て本当に犯行を起こされたらそれはそれで困ります。悔しいところですが一定の対応はせざるを得ないでしょう。

え?「もし予告通りではない犯行だった場合」ですか? もともと犯罪予告をするような連中の発言は信用できないわけですから、いまのところ残念ながらどうしようもありません。

また、予告を多数行い、混乱を誘い本命を手薄にさせるという手もあります。たとえばAとBの交通機関に予告をしてCに集中させておいて、実際のテロはCに仕掛けるという手もあり得るわけです。

その可能性まで考えると必要以上に過剰な反応は犯人の思う壺なのでしょう。「休業」と「営業」の間に3つ目の選択肢「条件付き営業」を加えることで、より適切な対応ができるように思います。もうとっくに実行しているところもありそうですけどね。

ただ、本当に犯罪を成功させたいのなら予告なく実行するほうがよほど成功か確率は高いのだから、やはり予告のままに実行される目算は低いでしょう。それでもゼロではないのが悩ましいところですが。

「天使(通常営業)」か「悪魔(臨時休業)」か「小柳(条件付き営業)」か。ということですね。


CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。