元CIAによる「広報宣伝費は見た目で損してる(?)」

■「ミライトワ」受注先が800万円送金 組織委元理事側に渡った疑い
(朝日新聞デジタル - 09月23日 05:07)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=7121340

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今は内部監査を離れていますが、元CIA(公認内部監査人)です。

①複式簿記の威力
複式簿記のほうが単式簿記よりも不正を見抜きやすい。単式簿記というのはいわば「刹那の切り取り」になる。「確かにその瞬間の事実ではあるが、その前の経緯やその後の展開が見えない」のだ。
それを解決できる1つの手法が複式簿記だ。「なぜその取引が発生したのか?」という過去や「その後に与える影響」という未来が一定数見える。地方公共団体が遅まきながら複式簿記に切り替えつつある主因はこれだろう。

サン・アローの幹部らから事情聴取し、資金の趣旨などを調べている。サン・アローは取材に「回答を差し控える」とした。

とのことだが、簿記に何と書いてあるのかをたどっていけばおのずと解明するだろう。単式簿記だとこうはいかない。

②広報宣伝費は見た目で損してる(?)

また「広報宣伝」や「コンサル費」は不正が生じやすい。

なぜか。

いずれも「適正価格」がわかりづらいからだ。たとえば「1000円でコンビニでおにぎり1つを購入した」と聞いたら「ちょっと高いな」と分かるのは、それぞれが想定している「適正価格との比較」によるものだ。

ところが、ジャニーズや吉本の芸能人の誰か、テレビCM30秒広告を1か月スポットで、とか、週刊誌1ページに1年間広告というようにメディアへの露出条件などの組み合わせの中で「適正価格」がわかりにくいのだ。 私が内部監査をしていた時は類似の事例を引っ張ってきて比較していたが、それとて「コンビニおにぎり1つ」に比べると目安程度にしかならない。

「比較」で「違和感」に気づかなければ調査に突っ込みにくい。

元理事に800万円を渡す口実は実体のない「コンサルタント費用」あたりがありがちなところだ。

③「私的自治の原則」「契約自由の原則」「信教の自由」
それぞれの順守を考えるとAさんとBさんが「世間一般的には無価値なモノ」を「100万円」で購入しても問題とはならない。それが「推しアイドルのグッズ」なのか「貴重な古代文献」なのか「TRPGのルールブック」だろうが、支払いをしている本人が価値を感じていれば取引としては成立してしまう。

何に価値を見出すかは人それぞれの「自由」なわけだ(by犬井ヒロシ)。

本記事が受託収賄に問われているのは高橋元理事が「みなし公務員」だからであって、元統一教会問題のように「公務員が絡まない取引」では「問題なし」とされてしまうのは結構由々しき課題だ。

「自由」であるというのは「自己責任で自主自立しろ」「自分の身は自分で守れ」ということになるわけだが。

一部詐欺師の身勝手な言い分として「騙されるほうが(責任上or頭が)悪い」というのがある。だが「騙された人の自業自得」として完結してしまうと、元統一教会への献金のように「それがその後社会的に悪用される」ことを防げない。社会的損害を防ぐためにはなおのことそういった「騙されやすい方」を守る必要があるのだろうが、現行の法律「成年後見人制度」あたりでは制度が硬直的すぎて社会の目まぐるしい変化に対応しきれていないのが現状だ。

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。