限りなく客観的に見れること

監査でも将棋でもその他のゲームでも、初見相手では相手の力量をすばやく推し量ると優位に立ち回れる。表面に出る言動はむろん一つの指標だが、そこだけを見すぎると本質的な部分を見抜けないことが多い。

直接手が多い人間はあまり強くないというのは当たっている。理由は簡単で『彼は直接手しか見えていない』からである。「思考するのが面倒臭い」等の理由で、目先の結果に単純化してしまうなどしているのだろう。

前回記事で言えば守勢や攻勢の手の意味を見抜くことはできても、「直接は意味が解らない手」「伏線」「違和感」を理解できないことが多いように思われる。残りわずかな期限の短期決戦ならともかく、時間やリソースに多少の猶予がある場合はペース配分まで考慮できなければ、早晩、目先の勝利を維持できなくなるものだ。

事象や状況を偏りなく、客観的に見れる者は攻守の状況判断を間違えないので強い。

我が家では長兄がその典型になる。「攻めるべき時に攻める」「守るべき時に守る」が徹底している。長兄に比べれば、父は「守り過ぎ」だし、母は「攻め過ぎ」だ。感情的起伏が激しい人間や好き嫌いが多い人間、偏見のある人間ほどこの判断を誤りやすい。理想は正しい状況判断の後で感情を処理することなのだろう、なかなかうまくいかないが。

単純に感情を全否定するものでもない。短期決戦においては感情の勢いというものは侮れないものがある。ただ、一時的なものに過ぎず、そこで冷静に対処されると自滅してしまうことが多い。表面の感情すら計算づくで出す人間に比べると『怖さ』は感じない。一部の人間は別としてたいていは感情的になると感情に振り回され、冷静な判断を失うので、一般論としては感情的にならない方が有利である。ゆえに「正々堂々」よりも「勝負」を目的とするなら、相手を感情的に誘導するのも策のうちだったりする。

「敵は熱いうちにたたけ!」は某ゲーマーさんの名言である。

感情的になった相手というのは大概「自分の損害を顧みずに、こちらに与えるダメージの最大化」を狙ってくる。一見困るようだが、短期的イコール短気的な動きに手を限定できるのでやりやすい相手だ。怒りにとらわれず、冷静に相手が嫌がる最適解を探り続けるような相手のほうがはるかに厄介である(私の知る名古屋人は全員標準装備しているので当たり前のことだが)。
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CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。