J2-第42節 横浜FC対愛媛FC 2019.11.24(日)感想

01_スタメン

 愛媛FCは前節からメンバーを幾人かかえている。1トップに神谷優太選手、右シャドーに藤本佳希選手がはいり、ボランチには山瀬功治選手。アンダーの代表で不在だった長沼洋一選手が右ウイングバックにはいった。
 横浜FCのここ最近は存じあげないのだけれど、イバ選手とかレアンドロ・ドミンゲス選手とか瀬沼優司選手とかがスタメンに名を連ねていないのが意外だった。
 J2第42節、横浜FC対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 愛媛のキックオフ。最終ラインから右サイドへロングボールを蹴りこみ、相手陣内でプレーをはじめる。藤本選手めがけてのボールで、前線に起点をつくることよりも、高い位置からプレッシングをしかけるのが目的。ただ、横浜は愛媛のフォアチェックをかいくぐって前進し、愛媛陣内でファウルをもらう。セットプレーになれば中村俊輔選手がいる。他言は要るまい。
[4-2-3-1]の横浜。ビルドアップは2センターバックとドイスボランチの4人でおこなう。センターライン付近まで前進できたら、愛媛ディフェンスラインの裏へロングボールを入れることがおおかった。
 4バックでサイドハーフのいるチームは、そのサイドハーフが内側へ絞り、空いた外側高い位置までサイドバックがあがっていって攻撃に参加するイメージがある。だが、たちあがりの横浜はサイドハーフがタッチライン際に張っていた。2ライン間には皆川佑介選手とトップ下の齋藤功佑選手のみとなる。そのためライン間をついて前進するというよりも、先述した裏へのロングボールが攻撃の主体となっていく。左の松尾佑介選手、右の中山克広選手、中央からは齋藤功佑選手が裏を狙って飛びだしていき、かなり脅威だった。

 愛媛左サイドからの攻撃がおもしろかった。
 普段はビルドアップの起点となってドリブルでボールを運んだり、中央やサイドへパスを散らす左センターバックの前野貴徳選手。この試合では左センターバックにとらわれない位置取りを繰り返していた。ときにはボランチの位置へ上がったり、左シャドーの禹相皓選手の近くまで移動したりしていた。
 ボールをもたないときには皆川選手と齋藤功佑選手がならぶ[4-4-2」のブロックで迎え撃つ横浜。2トップに対して3バックであれば数的優位をつくれる。だが、愛媛は西岡大輝選手と山﨑浩介選手が距離をとって2バックぎみにビルドアップをおこなったり、ときにボランチの川村拓夢選手がふたりのあいだや横に下がってくることで、前野選手が高い位置へ上がっていけるようにしていた。西岡選手のスピードのあるパスがあるからこそだとはおもうけれど、彼と山﨑選手のふたりでビルドアップできていたのはおどろきだった。あと、山﨑選手が左足で鋭い縦パスを入れる場面にもおどろかされた。めきめきと成長を遂げている山﨑選手が頼もしい。
 前野選手の位置取りも変則的だったが、それは左サイドの選手全体にいえることでもあった。禹選手はブロックの外まで下がってくることもあれば、タッチライン際までひらくこともある。彼の位置取りによって、左ウイングバックの下川陽太選手の位置取りも変化していく。禹選手が下がれば大外最前線へ張る。タッチライン際にひらいたときは内へ絞って2ライン間に顔をだすといったように。
 ボランチの川村選手は横浜1-2列めや最終ラインにいることがおおいけれど、横浜陣内までボールが前進すれば積極的に上がっていって攻撃に厚みを加えていた。また、彼のボール奪取からチャンスをつくっていた。ところでJリーグのホームページによれば、川村選手のタックル成功率は100パーセントでリーグ1位らしい。よくわからないけれどすばらしい。
 ということで、愛媛の左サイドは変幻自在。対面する横浜右サイドの選手たちは困惑したかもしれないし、そうでもないかもしれない。ゾーンディフェンスでしっかり守っていたようにみえたし、もしくは、愛媛がせっかくつくった隙をつけていなかったようにもみえた。
 愛媛はなんどか右サイドから左サイドへボールを動かすことで、横浜のブロックがスライドする間をついてボールを前進させていた。だが、ブロックがスライドによって間延びして分断されたとき、その裂け目をつくことができないでサイドにおしとどめられてしまっていた。北爪健吾選手に封じられていた印象でもある。

 しだいに横浜はサイドハーフが内へ絞り、サイドバックが高い位置をとるようになっていった。試合中に横浜の下平隆宏監督がサイドバックに高い位置をとれと指示をだしていたようだ。ただ、それまで高い位置をとれなかったのか、それともとらなかったのかはわからない。ともかくわかるのは、サイドバックが高い位置をとることで、ボランチの背後でパスを受ける選手があらわれたこと。それによって流れのなかから愛媛をおしこむ機会がふえていったことだ。
 さて30分。横浜は中盤でのパスカットからカウンターを打ってコーナーキックを得る。そのコーナーキックで愛媛のファウルがあって横浜がPKを獲得した。ニアサイドへ飛びこむ皆川選手のまえにからだをいれようとする下川選手。しかしはいりきれず、だした足で皆川選手を蹴ってしまったということらしい。PKを獲得した皆川選手がみずから決めて横浜が先制する。
 その後は愛媛がボールをもって横浜陣内でプレーする時間がふえていった。なんどかニアゾーンをついて決定機をつくりそうな場面もあったが、パスミスに終わってしまっていた。代わりに横浜のロングカウンターが脅威となっていたが、山﨑選手の好守などで追加点をゆるさずに前半を終えた。

 後半から藤本選手が1トップにはいり、神谷選手が左シャドー、禹選手は右シャドーに移動した。たちあがりは愛媛が2ライン間をついた攻撃で横浜をおしこむ機会もあり、得点を奪えそうなチャンスをつくれていた。ただ、52分に横浜が追加点を決める。
 左サイド中盤で得たスローインから皆川選手がタッチライン際でボールを収める。その背後をまわりこんだ松尾選手にパスがでる。松尾選手をとめることができず、愛媛の選手たちがサイドに集中。そうして空いた中央の空間に齋藤功佑選手が飛びこんでシュートを決めた。

 60分。横浜が愛媛のやりたい攻撃をみせてゴールを脅かした。
 中央でボールを受けた中村選手から左サイド武田英二郎選手へパスがでる。武田選手はワンタッチで斜め前のニアゾーン付近へパスをだし、松尾選手が裏へ抜けだす。西岡選手が寄せにきて空いた中央へ折り返すと、飛びこんできたのは齋藤功佑選手。ワンタッチでのシュートはしかし山﨑選手が弾きかえした。
 サイドから徐々に相手の選手を釣りだして中央を空けさせる形ということで、2点めと似た形でもあった。そして愛媛がなんどかつくりかけていた形でもある。違いはニアゾーンをつくパスがとおっていたか否かぐらいだろう。

 65分に愛媛が決定機をつくる。
 自陣右サイド(おそらく西岡選手)から下川選手へのロングサイドチェンジのパスがでれば、下川選手がしっかりとボールをキープ。前がかって間延びした横浜の1-2列めでフリーの山瀬選手へパス。外へひらいた神谷選手へボールを送れば、神谷選手はひとりでもちあがってから2ライン間の有田光希選手へ。ライン間が狭くたちまち寄せられてボールを失うが、こぼれ球をひろった皆川選手に山﨑選手と西岡選手がすぐさま寄せて奪い返す。西岡選手が空いていた中央へパスを送り、有田選手がツータッチで鋭いシュート。が、わずかにゴールの左に外れてしまう。59分に藤本選手と代わって出場した有田選手。虎視眈々とゴールを狙う。
 つづいて67分にも決定機。じっくりとボールを動かす愛媛。山瀬選手が長沼選手へサイドチェンジのパスをだす。長沼選手のクロスに神谷選手が飛びこんでドンピシャヘッド。が、バーにきらわれてしまった場面。66分に川村選手に代わって近藤貴司選手が出場していた。よってシャドーは左に禹選手、右に近藤選手となって、神谷選手がボランチに下がっていた。その神谷選手が後方でのビルドアップのみならずゴール前に飛びだしていった形。山瀬選手の中央からサイドへの展開と、そこからすばやく長沼選手がクロスを入れることで横浜の2センターバックをゆさぶって隙をつくったすばらしい攻撃だった。ニアゾーンへ飛びこんで横浜ディフェンス陣の注意を引いた近藤選手の動きもすばらしかった。

 愛媛がボールを保持して攻めこみ、横浜が待ちかまえてカウンターを狙うという構図がつづく。両チームともそれぞれ決定機をつくりつくられ、そして守り守られるうちに時計の針はすすむ。87分には松尾選手に代わって三浦知良選手が出場。いやがうえにホーム横浜の昇格への気運はたかまる。スコアは動かず2-0で横浜が勝利し、13シーズンぶりのJ1復帰を決めた。

 おめでとうございます、横浜FC。そしてファン・サポーターのみなさん。昨季プレーオフでの悔しさをバネに自動昇格を勝ちとったのは見事。とてもつよかったです。
 シーズンをとおして苦しみながらも成長しつづけた愛媛FC。苦しみは成長痛か。この試合後半とくに15分を過ぎてから、それ以外にも、勝利した39節FC町田ゼルビア戦、敗れはしたが40節水戸ホーリーホック戦と41節FC琉球戦の前半にみせたサッカーが、今季の愛媛の集大成であり来季への出発点なのだとしたらわくわくがとまらない。来季もたのしみだ。
 というなかで、今週もさびしい便りがとどいてしまった。林堂眞選手と神田夢実選手の退団だ。
 林堂選手はけがから復帰すればすぐにレギュラーを張れる選手だとおもっていた。来季も頼むぜとおもっていた。寝耳に水。対人の強さとロングフィードの精度はJ2でも屈指だろう。
 神田選手といえばジェフユナイテッド市原・千葉戦でのミドルシュート。なかなか出場機会を得られていなかったが、出場すればいつも可能性を感じさせてくれる選手だ。2ライン間に顔をだしてパスを呼びこむ動きを、もっとみたかった。
 林堂選手、神田選手、いままでありがとうございました。またね!

 さて、シーズンが終わったので来季まで書くことがない。オフシーズンはDAZNを眺めていて興味をもった欧州の試合について、気がむけば書くかもしれない。もしくはサッカーとはまったく無関係なことを書くかもしれない。たとえば本や映画やその日の雲の形の感想とか。いずれにせよ、来季は気がむいたときに書いていこうとおもいます。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 横浜FC 2-0 愛媛FC @ニッパツ三ツ沢競技場

  横浜:皆川佑介、32分 齋藤功佑、52分
  愛媛: