J2-第41節 愛媛FC対FC琉球 2019.11.16(土)感想

01_スタメン

 泣く子も踊りだすホーム最終戦。愛媛FCは前野貴徳選手が復帰。U-22代表に選ばれた長沼洋一選手が不在で、彼の代わりに丹羽詩温選手が右ウイングバックにはいった。ボランチには川村拓夢選手がはいる。
 FC琉球のスタメンには元愛媛の上原慎也選手の名がある。ベンチには越智亮介選手も。西岡大志選手はけがのため、西岡大輝選手との兄弟対決はおあずけとなった。
 J2第41節、愛媛FC対FC琉球の試合をざっくりとふりかえっていく。

 FC琉球はボールをもったときに両サイドバックが高い位置をとるのが特徴だと記憶している。2センターバックとドイスボランチの4人でビルドアップをおこない、サイドバックが高い位置をとるぶん内へ絞ったサイドハーフが2ライン間でパスを受けようとする。そんなイメージだ。おそらく好調なときの琉球の姿。愛媛FCとしてはその形にさせたくない。
 前半たちあがり、愛媛は高い位置からプレスをかけにいった。とくに琉球の右センターバック岡﨑亮平選手へ禹相皓選手が猛然と寄せにいく姿がよくみられた。3節の初対戦時には、岡﨑選手のロングパスから先制点を決められている。それだけでなく、なんども2ライン間へ突きさす縦パスに苦しめられた印象もある。彼を野放しにしてはいけない。いかに岡﨑選手に良質なパスをださせないかが、愛媛にとって鍵となるようだった。
 愛媛のプレッシングは、久しぶりにみた気のする[5-2-3]の形でおこなわれていた。シャドーがすこし高い位置に残って五角形になるやつだ。中央へのパスコースを塞ぐことができ、もし五角形のなかにパスをだされても球ぎわをつくりやすい。もちろん2ボランチの脇が空いてしまうので、フォアチェックがかけられないときや中盤まで運ばれたときは[5-4-1]のブロックを敷く。
 さて、中央がつかえないとなれば琉球のパスは自然とサイドバックへ流れるようになる。その瞬間にシャドーの選手が寄せにいってよゆうをあたえない。もしサイドハーフへだされてもウイングバックが連動してつぶす。バックパスがでれば西田剛選手がパスの逃げ場へ寄せていく。じりじりと琉球を自陣へと後退させ、高い位置でのボール奪取や、苦し紛れのロングボールを蹴らせようとする。それに成功するときもあればうまくいかないときもある。
 愛媛が攻撃的なプレッシングをおこなっている時間帯、琉球右サイドバックの金成純選手はなかなか高い位置をとれなかった。愛媛としては狙い通りか。ただ、代わりに左サイドバックの徳元悠平選手は高い位置をとっていた。琉球は愛媛のプレッシングを回避して徳元選手のもとへボールをとどけようとしていた。そのさい興味深かったのが河合秀人選手の動きだった。
 琉球が中央から右サイド(愛媛左サイド)でボールをもつと、自然愛媛の陣形も同サイド寄りになる。すると右ウイングバックの丹羽選手の立ち位置は中央と外との中間あたりになる。というわけで徳元選手が大外でフリーになれる。とはいえサイドチェンジの距離が遠ければ、パスの滞空時間ぶん丹羽選手が寄せにいくことができる。なので琉球としては丹羽選手にそのよゆうをなくさせたい。どこで河合選手。彼が中央付近に位置して裏を狙うと、対面する丹羽選手はマークのために下がらなければならない。そのタイミングで徳元選手にパスをだされてしまうと、さすがに寄せにいくことはできなくなる。こうして徳元選手が縦に突破してクロスを入れる形で琉球はチャンスをつくっていた。

 14分に愛媛が先制する。ゴールキックを自陣からつなぐ琉球に、愛媛が高い位置からプレッシング。川村選手が縦パスをカットし、前野選手が回収。GK岡本昌弘選手まで下げる。琉球のボランチふたりが、パスを受けに下がる田中裕人選手と川村選手をマークするため前にでてきたタイミングで、GK岡本選手はその頭上を越すパスを送る。富所悠選手がさきに触れるものの、そのういたボールに競り勝ったのは近藤貴司選手。ひろった西田選手はドリブルによって琉球ディフェンスを中央にひきつけてから、フリーの下川陽太選手へ。下川選手がもはやあたりまえとなったワンタッチでのクロスを入れれば、飛びこんだのは禹選手。ボールに触れたあとにGK石井綾選手と交錯。こぼれ球を走りこんでいた川村選手がおしこんでJ初ゴールを決めた。

 先制したとはいえ、琉球の洗練されたボール保持が脅威なのはかわらない。
 ビルドアップではボランチの風間宏希選手が最終ラインに下りていき、愛媛のフォアチェックの人数にあわせる。キーパーも加わればもちろん数的優位。トップ下の風間宏矢選手は上里一将選手とならぶ位置まで下がることも。先述通りサイドハーフは内へ絞り、サイドバックが高い位置をとるため、[1-3-2-4-1]のような形(ときには中盤菱型)でビルドアップする。ただ、ショートパスをつないでいくよりも、丁寧に徳元選手までロングパスを送るほうが目立った。
 琉球がボールを失う場所は愛媛陣内であることがおおかった。おおかったというと語弊があるけれど、ようは琉球が相手陣内へ攻めこむことがおおかったということ。それを可能にしたのが徳元選手へのロングパスと、中盤でのボール奪取だった。愛媛としては琉球の寄せに抗しきれなかった部分もあるが、どちらかというと選手間でのミスがでてしまっていた印象だった。
 今季の愛媛はけが人のおおさに泣かされた。そのため3バックと4バックを試合中スムーズに変更できる柔軟さを身につけたが、選手間での共通した狙いをいつでもどこでもだせるまでには至らなかったのかもしれない。かなしいかな、いわゆるホットラインみたいなものができはじめたらけが人がでてしまうみたいな。この試合、球ぎわの厳しくなる中盤でパスミスが起こるのをみての連想。ただ、来季を見据えての選手起用をここ数試合しているようにも感じられるので、不安ではなく期待をもってる。
 閑話休題。
 琉球のボール保持に手こずった愛媛だったが、守備で前にでてくるボランチの背後、またはサイドバックの裏をついたカウンターでゴールに迫る場面をつくっていた。川井健太監督が試合後、前半の内にあと1、2点とれていればとコメントしたように、そのチャンスは充分あった。34分に西田選手がだしたスルーパスにはしびれた。右サイドの丹羽選手にだすとおもった。
 前半終了間際、琉球が2ライン間をつくようになっていった。イレギュラーによって起こった場面もあったが、45分の風間宏矢選手のシュートはうまく2ライン間を間延びさせて放ったものだった。
 福井諒司選手から裏へ走りだす上原選手にロングパスがでたため、愛媛ディフェンス陣はラインを下げる。パスが上原選手にとどくことはなかったが、背走をしいられた西岡大輝選手のクリアーはよわいものになってしまう。福井諒司選手がボールを運ぶことでおしとどめた愛媛2列めのラインと、上原選手におし下げられたディフェンスラインとのあいだが間延びし、クリアーボールはそのライン間へ落ちる。風間宏矢選手が前むきのまま回収してシュート。枠をはずれたが充分危険な攻撃だったし、琉球最終ラインによゆうをあたえてはいけないことがよくわかる場面だった。

 後半たちあがり5分は愛媛のペース。琉球陣内でプレーできていたし、ボールを失ってもすぐにとり返して攻撃をつづけられていた。その時間がすぎると琉球がボールをもつようになる。愛媛は[5-4-1]の3ラインをかなりコンパクトにして迎え撃つ。自陣でのボール奪取からカウンターでチャンスをつくった。ところで、相手陣内でのボール保持のとき、味方の空けたニアゾーンに飛びこんでいけるようになったら、川村選手はケビン・デ・ブルイネ選手になれるとおもう。期待はふくらむ。
 後半15分が経ったころ琉球にすこし変化がではじめ、左サイドバックだけでなく右サイドバックの金選手もかなり高い位置へ上がるようになった。前半はあまりみられなかった。おそらく、琉球が安定して愛媛陣内でポゼッションできはじめた兆し。愛媛はミドルゾーンでかまえるためフォアチェックをかけにくい。2シャドーもおとなしくボランチの横へ下がるほかなく、そうなれば琉球はビルドアップで風間宏矢選手を1列下げなくてよくなる。彼と上里選手が中央に位置することで愛媛のブロックも中央へ寄り、徳元選手と金選手がいっそう時間と空間を得られていた。
 愛媛にとって苦しい時間のなか、川村選手に代わって河原和寿選手が出場。左のシャドーにはいった。河原選手の位置取りは攻守両面で卓抜している。空間を空けさせないし、空間へはいっていくのも的確。とくに大外にひらいてから、タイミングを見計らって2ライン間へ進入してパスを呼びこむのはさすがだった(72分のこと。みずからヘディングを打つ場面までもっていった)。

 66分。琉球が追いつく。起点はやはり岡﨑選手だった。フリーでボールを運ぶと、中盤から左サイドへロングサイドチェンジをだす。パスを受けた徳元選手は中央の様子を確認してからクロス。上原選手が外へふくらむ動きであわせ、ゴールマウス逆側に決めた。あっさりとみえて、ゴールへ至るまでのプレーすべてがハイテクな琉球の同点弾だった。
 同点直後、琉球は富所選手に代わって小泉佳穂選手が、愛媛は西田選手に代わって玉林睦実選手が出場する。丹羽選手が1トップへ移動し、玉林選手は右ウイングバックにはいった。右サイドから精度の高いクロスでチャンスをつくっていた。

 両サイドバックが高い位置をとりはじめてから、琉球は2ライン間に人数をかけられるようになった。するとみられるようになったのが、サイドから2ライン間への横パス。ひとりが裏へ抜ける動きをしてラインを下げるがそれは囮で、空いた空間で背後に残った選手がパスを受ける形。なかなかおもしろいコンビネーションだった。
 時計の針をすすめる。
 おしこまれながらもからだを張ってしのぎつづける愛媛。カウンターからチャンスをつくったり、前へすすませない守備でおしこんだりして追加点を狙う。ホーム最終戦、河原選手のホームラストゲームだ。勝利をもぎとって終わりたい。終わりたかった。
 89分。愛媛陣内で得たスローインを小泉選手が2ライン間で受ける。愛媛の寄せとスライドが間にあわぬうちに、中央へ走りこむ河合選手へパス。ゴール左下隅へ見事に河合選手がシュートを決めて琉球は逆転した。ロスタイムには愛媛にも同点に追いつくチャンスがあったものの、琉球もからだを張って守り、試合は1-2で終了した。

 今週、河原選手につづいて、地元出身の玉林選手の退団も発表された。玉林選手にとってもホームラストゲームだったとわかると、敗れてしまったのがいっそう無念だ。新天地でも、この試合でみせたような、サイドを駆けあがってのクロスをあげつづけてほしい。
 いままでありがとうございました、玉林選手。またね!
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 愛媛FC 1-2 FC琉球 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:川村拓夢、14分
  琉球:上原慎也、66分 河合秀人、89分