J2-第15節 愛媛FC対水戸ホーリーホック 2019.05.25(土)感想

 c-c-c-changesとJ2の勢力図をぬりかえる水戸ホーリーホック。昨季の水戸をみていれば、彼らがJ2のトップにいることはサプライズでない。
 前節アルビレックス新潟戦で自分たちのつよみをだして勝利した愛媛FC。足踏みにも飽いたホーム100勝めを目指す1戦となる。
 愛媛のスタメンには山瀬功治選手と吉田眞紀人選手が名を連ねる。水戸は試合直前に細川淳矢選手が負傷したためンドカ・ボニフェイス選手が出場。中盤でちがいをつくれる木村祐志選手の復帰はまださきのようだ。
 J2-第15節、愛媛FC対水戸ホーリーホックの試合をざっくりとふりかえっていく。

・水戸ホーリーホック雑感

 水戸は強力な2トップを擁する。昨季であればジェフェルソン・バイアーノ選手(現・モンテディオ山形)と伊藤涼太郎選手(現・大分トリニータ)。バイアーノ選手がロングボールをおさめて、伊藤選手が前をむいてしかけてというイメージ。今季は黒川淳史選手が伊藤選手とおなじような役割を担っているようだ。
 しかし堅守速攻の枠組みにはおさまらない。ボール保持のときはサイドハーフが内へしぼって中央に人数をかけつつ、おもに左サイドバックがウイングといっていい高さまであがっていく。中盤にはアジリティーとテクニックに秀でた選手たちがそろい、攻撃のスイッチがはいれば一気にゴール前へ攻めこむ。
 カウンターをケアできる人数が残っているので、守から攻へ切り替わると相手の攻撃を遅らせつつ堅牢な【4―4―2】ブロックをすぐに敷いてしまう。つまり人数をかけなくとも攻撃を完結できてしまうので、攻めつつも守る準備ができてしまっているのだ。

・前野選手の機転

 開始3分で茂木駿佑選手にゴールを決められてしまったのは残念だった。とはいえ愛媛の面々にショックをひきずる気配はなさそうだった。慣れたわけではないだろうけれど、またかと心折れてしまわないのは前節の経験による部分もあるだろう。
 水戸の2トップ(ジョー選手と黒川選手)にたいして愛媛は3バック(前野貴徳選手、林堂眞選手、竹嶋裕二選手)。3対2の数的優位をつくれるので、愛媛は最後方でボールをもてていた。問題はそのさき。ディフェンシブハーフの山瀬選手がボールをもつと水戸の2トップはすぐにプレッシングをかけていた。山瀬選手が前をむいてプレーできないと、愛媛はなかなか攻めることができなかった。
 山瀬選手から前線へパスが供給されなくなるとどうなるか。ボールがハーフウェイラインを越えなくなって、水戸の2ライン間にいてほしいインサイドハーフの選手(神谷優太選手と吉田選手)が下がってくるようになってしまう。
 前線へボールが供給されないので、ビルドアップを安定させるために選手がおりてくる。すると2ライン間に選手がいなくなってしまう。たとえセンターフォワードの藤本佳希選手にロングボールをいれてもこぼれ球をひろう選手もいない。自陣で渋滞してしまうとミスも起こりやすくなってショートカウンターにみまわれる。なかなかいいところがない。
 ということで前野選手が1列あがった【2-3】でのビルドアップをおこなうようになる。これが奏功し水戸の1-2列めから縦パスをいれる機会がふえていった。ただかなしいかな、ワンタッチではたいたところに味方がいないとか、パスを受けたけれどコントロールできなかったとか、水戸のプレッシングがつよくてといったかたちでボールをうしなうことがおおかった。
 26分に愛媛が水戸のブロックをゆさぶる攻撃をみせる。
 前野選手が1-2列めでパスを受けると、水戸の右サイドハーフ茂木選手は神谷選手へのパスコースをけすために内へしぼらなければならない。となれば愛媛の左ウイングバック下川選手が空くようになる。このズレから水戸のプレッシングは後手にまわるようになり、愛媛はフリーになる選手をつかいながら冷静に右サイドまでボールを運ぶ。右ウイングバック近藤貴司選手からボールを受けた山瀬選手を、2列めから飛びだした前選手がつかまえにいくと、山瀬選手は前線へロブパスをだし、おさめた藤本選手から神谷選手がパスを受けてチャンスになりかけた。
 前半終了間際にはGK岡本昌弘選手がリベロの位置まででる【3-3】ビルドアップなんてかたちまで登場していた。なんとここでは前野選手が1-2列めどころか2ライン間へ進入してパスを受けている。
 というように、前野選手の機転によってインサイドハーフの選手がおりてこないですむようにしているようだった。

・左右へのゆさぶりと2ライン間の攻略

 前野選手の機転でビルドアップの安定をはかった愛媛。後半たちあがりには相手陣内でプレーするんだという意思をもういちどみせる。ロングボールをいれてこぼれ球をひろって前進してを試みたり、フリーになりやすいウイングバックからすくないタッチ数で2ライン間へボールをとどけたり。
 最終ラインから2ライン間へ縦パスをいれる機会もおおかった。49分には自陣でパスをつなぎ、水戸が間延びしたところで林堂選手から吉田選手へ縦パスがはいっている。ここでもフリーになりやすいウイングバックの下川選手のところで時間がつくれていた。
 後半からも前野選手は1列あがる。前野選手、下川選手、山瀬選手、神谷選手の4人で左サイドに菱形をつくり、ボールホルダーがふたつ以上のパスコースをえられるようにしていた。

 59分には水戸のブロックを右から左、そして右へとゆさぶり、間延びしたところで田中選手から吉田選手への縦パスがはいる。さらに水戸のセンターバックとサイドバックのあいだへ斜めに飛びこむ近藤選手へ吉田選手からスルーパスがでてGK松井謙弥選手との1対1になりかけた。
 このように相手のブロックを左右にゆさぶってから2ライン間を攻略し一気に攻めこむかたちを愛媛は後半くりかえすことができていた。
 しかし69分、単騎突破する黒川選手をとめるためにスライディングした林堂選手が負傷してしまう。彼に代わって72分に禹相皓(ウ・サンホ)選手が出場する。第3節FC琉球戦以来の出場だった。禹選手も山瀬選手同様、ボールを受けたときに前をむくのがじょうずな選手だ。
 田中選手が3バックの中央にさがることで、愛媛の最終ラインは純粋なセンターバックがいない構成になっていた。なおかつディフェンシブハーフはふたりとも攻撃的な選手。なので前野選手が1列あがることを自重するようになった。
 水戸はボール非保持の時間がふえていくものの、高い位置でボールを奪えばシュートまでもっていけていた。バーにあたった清水慎太郎選手のシュート場面も愛媛陣内でボールを奪ってからのことだった。
 プレッシングが嵌まらず空けた場所をつかわれる場面が散見されるものの、最後はやらせないよの守備で愛媛に決定的なチャンスをつくらせない。途中出場していた浅野雄也選手の枠をとらえたロングシュートや、GK岡本選手のそれを防ぐ好セーブと、最後までわくわくはらはらする試合は0-1のまま終了。愛媛のホーム100勝めは遠かった。

・終わり

 試合直前に大黒柱の細川選手を負傷で欠くピンチにも動ぜず勝利した水戸ホーリーホック。俊敏性とテクニックをもちつつ組織的に戦うという、JFAが標榜するスタイルを平然と実行しているようにもみえる。長谷部茂利監督ひきいる水戸がJ1で戦っている姿をみてみたいものだ。日本人のいだく日本人らしさが崩壊する瞬間を目撃できる気がする。
 なかなか餅をまけない愛媛FC。連勝できず苦しいものの、試合中に修正できるチームになっている。自陣だけでなく相手陣内でもポゼッションする意識もでてきており、試合ごとに成熟をかんじている。ただ林堂選手の負傷が気になる。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

 試合結果
 愛媛FC 0-1 水戸ホーリーホック @ニンジニアスタジアム

 得点者
 愛媛FC      :
 水戸ホーリーホック:茂木駿佑、3分