J2-第25節 徳島ヴォルティス 対 愛媛FC 2020.10.10(土)感想

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 5連戦第4ラウンド初戦は四国ダービー。台風の接近により開催を危ぶまれたが、コースがそれたため無事キックオフの笛を聴けることとなる。
 直近の5連戦を3勝2分けとして首位にたっている徳島ヴォルティス。リーグ再開後の四国ダービーでの手痛い敗戦をしっかり糧にしているらしく、以降逆転負けがないという。
 愛媛FCは前節から4人変更。西岡大輝選手が試合で負傷したため、古巣対戦となる小暮大器選手が右サイドバックにはいっている。シシーニョ選手はまだ怪我からもどってきていない。
 J2第25節、徳島ヴォルティス対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 台風が逸れたとはいえ、その風はつよく吹きすさんでいた。コイントスに勝ったらしい愛媛FCがコートをかえて風上にたつ。
 西岡大輝選手の欠場によりフォーメーションが読みづらかった愛媛。蓋を開けてみると[4―4―2]だった。ビルドアップのときはボランチの森谷賢太郎選手がセンターバックのあいだに下がり、川村拓夢選手がアンカーとして徳島の1―2列めでプレーする。両サイドバックが前へでて、両サイドハーフは2ライン間へはいっていく。
 愛媛のボランチが縦にならぶのに対し、徳島のボランチは横へずれる形でもビルドアップをしていた。右ボランチの小西雄大選手がサイドへひらき、左ボランチの岩尾憲選手が中央にかまえる。それにくわえて、どちらかが最終ラインに下がって縦にならぶこともある。また、サイドバックが前へでて、サイドハーフは2ライン間へはいるのは愛媛と同じだが、サイドバックのとる位置がかなり高かった。愛媛が中盤のあたりで横幅をとるのに対して、徳島は前線でそうしていた。

 徳島はキーパー、センターバックふたり、ボランチふたり、そしてトップ下の渡井理己選手の6人でビルドアップをおこなっていた。
 愛媛はブロックを敷きつつ、徳島のバックパスにあわせて2トップがプレッシングをはじめ、サイドへ追いこんだところで奪おうとした。が、2トップとサイドハーフの4人では、相手6人でのビルドアップを抑えきることはむずかしかった。プレッシングを嵌めこめそうな場面はあったが、フリーになれる場所を見つけるフィールドプレーヤーと、GK上福元直人選手の視野と冷静なパスによってはずされてしまっていた。

 立ち上がり15分は両チームともテンポのいい攻撃をみせて相手のゴール前に迫りあっていた。しかし決定機という場面までは生まれていなかった。愛媛は相手のライン間へのパスがとおっていた。しかし球ぎわで分があったのは徳島のほうだった。
 最初に決定機をつくったのは徳島だった。16分ごろから愛媛陣内でプレーする時間が継続。迎え撃つ形になる愛媛。愛媛は[4―4―2]のブロックを敷くが、中盤の選手はマンツーマンぎみの守り方をしていた。左サイドハーフの長沼洋一選手が、徳島右サイドバックの岸本武流選手についていって最終ラインに吸収されていたのが特徴的だった。ということで、2列めが3人になり、中盤の脇が空いてくる。17分にはそうしてできた2ライン間のスペースで杉森考起選手が縦パスを受けてチャンスをつくった。内田航平選手がボールを預かってドリブルで運ぶと、ラスト30メートルへはいったところでアーリークロス。これがゴール前へ抜けていき、飛びこんできたのがまさかのジエゴ選手。しかしうまく足にあたらずゴールキックとなった。これが徳島最初の決定機だった。

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 この決定機で、徳島の狙いが、前野貴徳選手と茂木力也選手の空けるスペースを突いていくことであるのも窺い知れた。杉森選手が2ライン間でパスを受けるすこしまえ、徳島は左サイドでボールを動かしていた。このとき、ライン間でパスを受けようとする西谷和希選手を茂木力也選手が最終ラインから飛びだしてつかまえようとした。するとタッチラインぎわに張っていたジエゴ選手が中央へ斜めに動きだし、茂木選手の空けたスペースを突いた。そこへパスはでなかったが、ジエゴ選手はそのまま中央あたりへもどり、内田選手からのクロスを待ちかまえる場面へとつながる。
 対して右サイドバックの岸本選手は、前野選手の空けるスペースを突くというより、タッチラインぎわに張ったままにして、長沼選手を外へ引きつける。そして空いたスペースをつかうのは2列めの選手たちだった。

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 23分には徳島がふたたび決定機をつくった。内田選手の縦パスを、2ライン間から下がってきた杉森選手が受け、ワンタッチで渡井選手へ。渡井選手は岸本選手へパスをだすとそのまま前へ。岸本選手からのリターンパスを受けると、垣田裕暉選手へラストパス。垣田選手のシュートはポストにあたってゴールキックとなった。
 たてつづけに似た形で崩されてしまった愛媛。対応策として、森谷選手がブロックの外まで小西選手についていくようになる。そうすることでフォワードとの距離を短くし、マークの受け渡しをスムーズにおこなえるようにした。縦パスをださせないようにすることに主眼をおいたようだった。

 なかなかマイボールの時間がなかった愛媛だったが、30分を過ぎたあたりから相手陣内でボールをもてるようになっていく。このときおもしろかったのが忽那喬司選手。前をむく場面がおおく、それは狭いところでパスを受けても同じだった。
 ただ、愛媛のボール保持の時間はながくつづかなかった。38分には徳島に先制点を奪われてしまう。
 徳島は自陣左サイド深くでのボール奪取から冷静に逆サイドの内田選手まで展開。内田選手はゆっくりとドリブルでボールを運んだが、長沼選手が岸本選手へのパスコースをけすのを選択すると、一転してスピードをあげる。一拍遅れて長沼選手が寄せてきてから、空いた岸本選手へパス。岸本選手もドリブルでタッチラインぎわをあがっていくと、その間に渡井選手が後方から駆けあがってきて、前野選手と山﨑浩介選手とのあいだでスルーパスを受ける。渡井選手はそのままペナルティーエリアの脇まですすみ、愛媛ディフェンス陣の隙間を突くクロスをゴール前の垣田選手へ。垣田選手があわせかけるも、茂木選手がなんとかクリアー。しかしこれがよわく、かつ逆サイドを上がってきていたジエゴ選手のところへ飛んでしまう。ジエゴ選手がシュートともクロスともいえるボールを蹴りこむと、ファーサイドで垣田選手がおしこんでゴールをきめた。
 前半ロスタイムにはふたたび愛媛がボールをもって徳島陣内へ攻めこむ時間をつくった。テンポよくボールを動かすことができていたのだが、決定機をつくるまでには至らなかった。やはり徳島からボールをとりあげてしまいたいよね、という雰囲気を漂わせつつ前半を1―0で終了した。

 ハーフタイム中に紹介されたデータで興味深いものがあった。愛媛の平均的なポジションの図だ。それによれば、長沼選手の位置は前野選手と重なっており、しかもやや後ろぐらいだった。それだけ対面する岸本選手に高い位置をとられてしまったということだろう。長沼選手がおしこまれてしまったことは、愛媛が攻撃をおこなったエリアのパーセンテージにも明らかだった。左サイド15%、中央24%、右サイド61%となっていた。
 閑話休題。
 両チームともハーフタイムでの交代はなかった。しかし愛媛はフォーメーションを4バックから3バックへ明確に変更した。小暮選手が1列上がって長沼選手とのウイングバックになった。また、忽那選手が左のシャドーへうつっている。
 前半に森谷選手が小西選手をブロックの外までつかまえにいく場面がみられたが、後半はそれもより明確になり、小西選手が最終ラインに下がったときでも追っていくようになった。残りのセンターバックふたりを藤本佳希選手と吉田眞紀人選手が見、ボランチふたりとトップ下の3人のことは忽那選手と川村選手、それからセンターバックのうちひとりがつかまえようとしていた。
 すこしでも高い位置でボールを奪おうという狙いがみえた。しかし、徳島陣内でマイボールの時間をふやしたい思惑とは裏腹に、自陣におしこまれてしまう時間がつづいた。ポジションチェンジを繰り返す徳島2列めの3人をつかまえきれなかったのもあるが、前半と同じく球ぎわでなかなか勝てなかったのも苦しかった。52分には西谷選手にペナルティーエリアの端へ進入されてしまい、ゴールラインぎわからクロスを上げられてしまう。杉森選手にドンピシャヘッドであわせられたがバーに助けられた。プレーが途切れないまま、つづく53分には中央でボールを動かされ、あっさり渡井選手をフリーにしてしまう。その渡井選手からのクロスにゴール前で垣田選手がヘッドであわせるも、GK岡本昌弘選手の正面で事なきをえた。
 徳島にボールをもたれるうえ、マイボールにできたとおもってもすぐに奪われてしまう苦しい時間帯がつづいた。耐えて自分たちの時間をつくりたい。ベンチでも交代選手の準備がすすむ。しかし57分、またしても杉森選手にペナルティーエリア端へ進入されると、シュートを打たれてコーナーキックになる。キッカー岩尾選手のクロスを藤本選手が頭でクリアーしようとしたが、あたりが浅くて弾けず、ボールはそのままゴールに吸いこまれてしまった。

 オウンゴールでの失点後、愛媛は準備していた4人の交代をおこなう。藤本選手に代わって有田光希選手、忽那選手に代わって山瀬功治選手、吉田眞紀人選手に代わって横谷繁選手、小暮選手に代わって丹羽詩温選手が出場する。丹羽選手は左ウイングバックにはいり、長沼選手が右へうつった。
 62分には徳島が選手交代。内田選手に代わって福岡将太選手、垣田選手に代わって押谷祐樹選手が出場する。
 愛媛は交代出場した選手たちがボールの前進を助け、徳島陣内でプレーする時間がすこしずつふえていった。しかし球ぎわでやはりなかなか勝てず、こぼれ球も相手に先んじられてしまうため、ボールを失ったときに即時奪還することができず、攻撃がつづかなかった。
 さらに愛媛に試練がつづき、しだいに球ぎわすらつくれなくなっていった。サッカーで戦うという言葉がでてくるとき、それは球ぎわを指すことがおおいだろう。ならば、球ぎわをつくれないというのは、戦いに勝つ負ける以前に、戦うことすらさせてくれないということにもなろう。……なるんだろうか?

 後半の飲水タイム後、愛媛は4バックへ戻した。センターバックは川村選手と山﨑選手のコンビになった。これによって前野選手と茂木選手がサイドバックになったほか、丹羽選手と長沼選手の位置も逆になる。徳島が自陣でブロックを敷くのをよしとしたのもあるが、ここから愛媛は相手陣内でボールをもつ時間がふえていった。
 終了間際、長沼選手が左サイドを突破してファウルを受けたり、前野選手からのクロスのこぼれ球を有田選手がおしこみかけたりと、繰り返しゴール前に迫った愛媛。しかしGK上福元選手の好守連発により、最後までネットをゆらせなかった。
 2―0で試合は終了。ダービーでの敗戦というだけでなく、首位チームとの実力差をも痛感するつらい試合となってしまった。

 かくしてダービーフラッグは徳島ヴォルティスへわたった。徳島は首位をキープ。リーグ再開後の初戦にくらべてはるかにプレーの強度も練度もましていた。前回対戦時では愛媛の高い位置でのプレッシングに窮することもおおかったが、今節はビルドアップで困ることは皆無。とてもボールを奪えそうにないぞと恐怖すら感じた。
 コテンパンにされてしまった愛媛FC。試合の日から遠い場所にてふりかえってみても、苦しみはいまだ生々しい。なによりも苦しく感じたのは球ぎわのところ。愛媛は今季、ボールを保持して能動的に攻め、ボールを失っても高い位置で奪い返して攻撃をつづけるサッカーを目指してきた。そのためにも球ぎわで負けないことは必要不可欠な要素であろう。にもかかわらず、球ぎわで勝つどころか、それすらつくらせてもらえない――これはショックがおおきかった。
 ただ、試合後に川井健太監督が述べていたように、試合のはいりはよかった。じゅうぶんライバルでありリーグ首位でもあるチームと伍していた。後半最終盤にみせた攻撃の迫力だってダービー1戦めを髣髴とさせた。失点ふたつもクリアーミスにすぎないといえばそうなのだから、引きずりたくなるような敗戦ではあったが、気をとりなおして5連戦第4ラウンドを戦ってほしいところだった。
 が、そんなタイミングで次節対戦するのが東京ヴェルディ。徳島同様ボール保持に長じたチームとの対戦は、愛媛にとって間断なくつづく試練となってしまった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 徳島ヴォルティス 2―0 愛媛FC
        @鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム

 得点者
  徳島:垣田裕暉、39分 オウンゴール、57分
  愛媛: