J2-第22節 愛媛FC 対 ツエーゲン金沢 2020.09.26(土)感想

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 前節アルビレックス新潟に引き分けて連敗をとめた愛媛FC。5連戦第3ラウンド3戦めの相手はツエーゲン金沢だった。これまでの通算成績は愛媛の2勝3分け6敗。苦手としているチームのひとつであり、前回対戦では0―3から4―3への大逆転負けを喫してしまっている。
 ツエーゲン金沢は13位。ここ5試合の成績は4分け1敗と勝ち切れていない。しかし前節東京ヴェルディ戦以外では得点を挙げている。ほしいのは複数得点。
 元愛媛の下川陽太選手は16節のFC琉球戦で前半途中に交代してから出場がない。彼がふたたび試合にもどってくるのは、26節のレノファ山口戦とすこしさきの話になる。一方でスタメンには杉浦恭平選手の名がある。また、キーパーは白井裕人選手ではなく石井綾選手だった。
 前節の引き分けで最下位に転落してしまった愛媛FC。しかし連敗をとめ、4バックにも手応えをえたところで上向きにいきたい。前節ベンチにまわった前野貴徳選手、茂木力也選手、森谷賢太郎選手らビルドアップに長けた選手たちがスタメンにもどった。
 J2第22節、愛媛FC対ツエーゲン金沢の試合をざっくりとふりかえっていく。

 金沢は立ち上がり、加藤陸次樹選手がトップ下ぎみに位置どる[4―2―3―1]で愛媛のビルドアップに抗した。2トップが縦にならぶことで1―2列めをつかわせないようにするのは、ここ数試合でとくに顕著な愛媛対策だ。
 3分に愛媛がチャンス。自陣最終ラインでボールをまわすうち、金沢のアプローチがゆるくなった瞬間をのがさず、西岡大輝選手がみずからドリブルでボールを運んだ。このときしっかり忽那喬司選手が前へ走りだすことでマークについている長谷川巧選手を背走させ、西岡大輝選手がボールを運ぶスペースをあたえている。ボランチの藤村慶太選手がとめにいくが、西岡大輝選手はそのよせをかわすことに成功。藤村選手がでてきたぶん、中央に金沢の選手はいなくなったのでフリーでさらに運べる状況となった。
 7分にも似たような場面が生まれた。愛媛が最終ラインでボールをもちつつ、金沢の前線が前にでてくるのをうかがった。2列めとの距離があいたところで1―2列めに下がってきた山瀬功治選手へ縦パスを入れる。このときすこし曖昧だったのが杉浦選手の位置どり。加藤選手が前へでたぶん、川村拓夢選手をみるのは彼かとおもいきや、それほどきつくマークについているわけではなく、あっさりとフリーにしてしまっている。なので山瀬選手からの落としを川村選手は前向きかつフリーの状態で受けることができた。またこのとき、金沢ボランチの本塚聖也選手は山瀬選手に、藤村選手は森谷選手についていたため中央がぽっかりと空いていた。川村選手は杉浦選手をふりきってドリブルで前進。空いた左サイドへ展開し、前野選手がクロスを入れるチャンスをつくった。前野選手はサイドバックでの出場となったため、これまでよりも頻繁に高い位置へでていくことができていた。
 17分にも愛媛がチャンス。左サイドで西岡大輝選手が前線へロングボールを入れると、忽那選手が裏へ抜けだす。金沢はサイドバックとセンターバックが対応し、長谷川選手がヘディングでさきに触れるも、こぼれ球をひろったのは森谷選手。ペナルティーエリア内にフリーで走りこむ山瀬選手へロブパスを供給してチャンス到来。しかしわずかに山瀬選手にはとどかなかった。なお西岡大輝選手がパスをだしたとき、前野選手はひくい位置にいた。そのため右サイドハーフの窪田稜選手が前めの位置をとることになり、サイドバックの長谷川選手との距離がひらくことになった。森谷選手はその間延びしたスペースでこぼれ球を回収している。

 相手を動かしてできたスペースからボールを前進させる愛媛。だがそれは金沢も同じだった。10分には守から攻への切り替えで、球ぎわをつくらせないワンタッチパスをつなぎ愛媛のプレッシングを回避。空いた中央をドリブルで前進した(ここは森谷選手がファウルでとめた)。
 20分以降、金沢はたてつづけにチャンスをつくった。
 23分にはコーナーキックを守り切ってから攻勢にでる。このとき愛媛は陣形を整えるのに手間取ってしまい、丹羽詩温選手が左サイドハーフの位置につく[4―5―1]になる。金沢の右サイドの選手たちが前へでていくのがはやかったため、丹羽選手が下がらざるをえない状況になっていた。ということで前線は森谷選手ひとりとなり、金沢が中央付近でボールを動かせる時間帯となった。そして石尾崚雅選手から杉浦選手への縦パスがつづけて2回もとおって、それぞれ決定機に結びついた。石尾選手すばらしかった。
 24分には愛媛陣内深い位置で杉浦選手がボールを奪ってショートカウンター。ゴール前フリーの加藤選手がシュートするも枠の右へわずかにそれた。愛媛危機一髪。
 30分ごろから愛媛がボールをもつ時間がふえていくものの、集中が切れはじめたのか、せっかく中央でフリーの選手をつくっても見のがしてしまい、ボールをなかなか前進させられなかった。だが、数少ない前進機会で忽那選手が奮起していた。41分には縦パスを受けると、フリーの川村選手へ落とす選択肢がありながらも、ターンして相手を剥がすことに成功し、チーム全体をおしあげることができた。
 金沢は前半終了間際に愛媛をおしこみチャンスを量産した。だが、サイドからクロスを入れてゴールに迫ったものの、中央であわせることはできなかった。そうして0―0で前半を終えた。

 ハーフタイムで愛媛が選手交代をおこなう。丹羽選手に代わって藤本佳希選手が、渡邊一仁選手に代わって長沼洋一選手が出場した。金沢に選手交代はなかった。
 後半立ち上がりは愛媛がボールをもって金沢陣内でプレーする時間がおおかった。左サイドハーフにはいった長沼選手が内側へはいることで外を空け、前野選手がタッチラインぎわを全力であがっていく場面がつづいた。
 58分に金沢が最初の選手交代をおこなう。おしこまれていた右サイド(愛媛左サイド)の窪田選手に代わって金子昌広選手が出場する。
 後半立ち上がりを過ぎると金沢が攻勢にでるようになった。だがラスト30メートルにはいっていくことはできなかった。一方で愛媛もこの時間帯は同様に攻めきれなかった。
 65分に愛媛が選手交代。西岡大輝選手に代わって横谷繁選手が、忽那選手に代わって三原秀真選手が出場する。ここから愛媛はフォーメーションを[3―4―2―1]へ変更した。
 これによって金沢は最終ラインでの数的優位をえることになった。フリーになるサイドバックを経由することで、中央でフリーの選手をつくれるようにもなる。なので一見すると、愛媛はみずから状況にあわない戦い方を選択したようだった。だが、攻撃に目をむけると事情はかわる。71分には三原選手が島津頼盛選手をかわしてドリブルで前進することに成功。これで金沢をおしこむことができた。金沢は前半から各選手が積極的に走りまわっていたため、この時間帯は球ぎわで愛媛に後れをとることがおおくなっていた。そこを川井健太監督は突こうとしたのだろう。
 だが柳下正明監督も手を打つ。73分、島津選手に代わって高安孝幸選手が出場。76分にはその高安選手が三原選手をドリブルで突破してチャンスをつくった。78分には2トップをそっくり交代。ルカオ選手と山根永遠選手が出場する。これで金沢は前線4人がフレッシュになり、再度前から奪いにいく強度をつよめた。
 ただ、前線が活性化された代わりに、ボランチふたりはしんどうそうだった。それまでであればもう一歩よせていた場面でよせられないことがふえていき、愛媛が中盤で優位にたてそうだった。なので、自陣でパスをつないで金沢をひきずりだそうとする狙いは理に適っていた。だがかなしいことに、金沢の前からのプレッシングをかいくぐることはすくなかった。かいくぐればチャンスをつくっていたのだが。85分には間延びした金沢の陣形の隙間をつかって、左サイドから右サイドへ展開して相手をおしこんだ。できればおしこむまえにけりをつけたかったが。
 両チームとも攻めにでればラスト30メートルまで攻めこめるものの、最後のところであわず、0―0のまま試合は終了した。

 相手が元気なうちはロングボールを入れてでも相手陣内でのプレー時間をふやしていく。だが相手に疲れがみえてきたらボール保持に切り替え、試合を優位にすすめていく。愛媛FCにはそういう意図があったのかもしれない。
 ところがどっこい、今季は5人まで選手交代が認められている。リーグ再開後しばらくは、フィールドプレイヤーが最大で半分入れ替わるため、戦術や戦況が一変してスリリングな試合になることがおおかったが、さすがに各チーム慣れてきたのか、選手交代での劇的変化は以前と同じ程度になってきた感じがする。そして残っているのが、元気な選手がたくさんという状況。つまり、90分のうち、アグレッシブにボールを奪いにいける時間がふえた。相手が疲れてきてからが勝負といわれるポゼッションなのに、後半になっても相手が疲れないとなれば話が違う。それでもみんながみんな元気一杯というわけでもないのだから、そういうところを突いていけるようになればいいなと感じる試合となった。
 ちなみに、試合後に川井監督が「勇気をもたない選手がいた」とめずらしく厳しさをみせた試合でもあった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 0―0 ツエーゲン金沢 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:
  金沢: