第19節 愛媛FC 対 ジェフユナイテッド千葉 2020.09.12(土)感想

01_スタメン

 5連戦第2ラウンド最終戦はジェフユナイテッド千葉。前回の5連戦同様、最後も強豪を相手にするベリーハードモード。
 ここ1週間は異なるスタイルで戦ったがと試合前のインタビューで問われ、けっか的にそうなってしまったと川井健太監督は話した。つまり、スタイルをかえようとしたわけではなく、スタイルの一部(高い位置でのボール奪取?)を強調したら違う姿になってしまった(ようにみえる)ということであり、そうさせたのは相手であるということだろう。
 この試合でキーパーが加藤大智選手から岡本昌弘選手に代わった。GK岡本選手は古巣対戦となる。ベンチ入りメンバーのなかには、ついに度重なる怪我から復帰し、それが古巣対戦となった吉田眞紀人選手の名もある。古巣といえば、キーパーの辻周吾選手と竹嶋裕二選手は千葉の下部組織出身。2歳差なので、おそらくふたりは中学と高校でかぶっていた時期があったのだろう。このふたりはのちに第33節ギラヴァンツ北九州戦でそろって今季初出場を飾ることになる。
 今季からユン・ジョンファン監督が指揮する千葉。6戦勝ちなし(1分5敗)と調子がよろしくない。スタメンには小島秀仁選手と川又堅碁選手が名を連ねた。残念ながら堀米優輝選手はベンチ外だった。ボランチの田口泰士選手が累積警告で欠場し、代わりにルーキーの見木友哉選手が先発した。
 J2第19節、愛媛FC対ジェフユナイテッド千葉の試合をざっくりとふりかえっていく。

 愛媛は[3―4―2―1]、千葉は[4―4―2]とそれぞれスタンダートな形で試合がはじまった。
 千葉は立ち上がり、ボールをもつといったんGK新井章太選手まで下げてロングボールを蹴りこんでいた。3分に山下敬大選手がヘディングでそらすことに成功すると、為田大貴選手が西岡大志選手に先んじてマイボールにしてサイドを突破。そのままペナルティーエリア内へ進入し、うまくマークをはずした川又選手へパス。川又選手がワンタッチで流しこんではやばやと先制に成功する。
 仕切りなおしたい愛媛。7分には渡邊一仁選手が中央でのターンから縦パスをいれる。ボランチの選手をかわしたことで千葉の2列めに穴があき、横谷繁選手へ縦パスを入れるコースが生まれていた。横谷選手がサイドにはたくと、キーパーとディフェンスラインのあいだへ西岡大志選手がクロスを上げる。ただ丹羽選手のヘディングシュートはバーの上へそれたのにくわえ、オフサイドの判定でもあった。おしかった。渡邊一仁選手は直後の8分にも活躍。相手の横パスを猛然とカットしてショートカウンターを引き起こした。シュートまでは至らなかったが。

 愛媛は相手の1―2列めをつかってボールを前進させたいところだが、千葉の山下選手がトップ下のような位置をとることで対抗。1―2列めをつかわせないようにしていた。ただ、愛媛はこの試合最終ラインからでも2ライン間へ縦パスをとおす場面がおおく、それゆえに千葉をおしこむ時間帯がつづいた。ただ、ラスト30メートルまでは攻めこめず、シュートチャンスまでなかなかもっていけなかった。
 縦パスがとおっているし、こぼれ球もよく回収できているから攻めることができていた。だから前半のうちに追いつきたい。むしろ追いつけそうではあったのだけれど、千葉が追加点をきめる。
 43分、小島選手が中央で溜めをつくってから右サイドの裏へロングパス一閃。本村武揚選手が抜けだしてペナルティーエリア内へ進入。長沼洋一選手と山﨑浩介選手のふたりでボールを奪ったかにみえたが笛を吹かれてしまう。長沼選手が本村選手をひっぱったとしてPKの判定となった。44分、キッカーの川又選手がきめてスコアは0―2となった。

 愛媛はハーフタイムに3人の選手交代。西岡大志選手に代わって有田光希選手、渡邊一仁選手に代わって川村拓夢選手、田中裕人選手に代わって山瀬功治選手が出場する。有田選手がトップにはいり、丹羽選手は右ウイングバックへうつった。
 ハーフタイム中から風がつよくなると、後半開始間もなく雨も降りはじめた。天気がかわり、風下にもなった愛媛。その変化が作用したのかなんなのか、立ち上がりは千葉におしこまれる展開になった。
 愛媛は3バックと川村選手の4人でビルドアップをおこなう。千葉は前半同様に2トップと両サイドハーフの4人でアプローチをかけにいく。ただその際、前半は1―2列めを埋めているようにみえた山下選手が、後半からは川村選手をマークするように変化していた。形としてはかわらないようにみえたが、空間ではなく、後方と中盤をつなぐ役割を担う川村選手を抑えることで愛媛のビルドアップを窮屈にしていた。
 愛媛の選手たちも、対面する相手の視線をのがれる動きで対抗した。前方へパスをだすと、パサーに対面する相手はボールの行方へ身体ないし顔をむける。その逆側から前へでればフリーになりやすい。たとえば相手の右側(パサーにとって左側)へパスをとおせば、相手の顔や身体はそちらをむくので、死角になる逆の左側(パサーにとって右側)へすすめば味方からのリターンパスをフリーで、かつ前向きに受けられやすい。川村選手がしきりにこの動きをみせていた(十八番にしているのは前野選手と西岡大輝選手。今季からは山﨑選手もおこなうようになってきた)。

02_相手の死角にはいってリターンパスを受ける動き

 ただ、せっかく前をむいてフリーになれても、パスの受け手がリターンパスをだしにくい身体のむきになっていることがおおかったり、相手がしっかりついてきてフリーになれなかったりして奏功しなかった。

03_リターンパスを受けられなくなる場合

 余談だが、愛媛は中央からボールを前進させるのがナイーブになるときがある。この試合のように、相手が1―2列めをケアしてくると、そこで前をむいてパスをだせなくなってしまう(1―2列めをつかえているとき、愛媛はとても元気にみえる!)。
 この試合にかぎらず、中央が厳しいとき、川村選手は相手の1―2列めではなくその脇に位置することがある。これは先の方法をつかって1―2列めで前をむいてプレーするための工夫なのかもしれない。

 さて、なかなか流れをつかめないでいた愛媛だったが、55分ごろからボールをもてる時間になっていき、千葉のゴール前へ迫る場面もでてくるようになった。そのきっかけは川又選手がゴール前で交錯して一時フィールドの外へでたとき。10人になったため、千葉はプレッシングへいかずに[4―4―1]のブロックを敷いた。川又選手がもどってくるまでに愛媛は左サイドへのおおきな展開に成功。川村選手がつかの間の自由をえて、長沼選手とともに左サイドからおしこんだ。ふたりはそれぞれクロスを上げるチャンスをつくるのだが、長沼選手のクロスはファーサイドでフリーになっていた丹羽選手にとおって決定機となった。ただ、GK新井章太選手の好守にあってゴールとはならなかった。
 60分には千葉にビッグチャンス。千葉のゴールキックからこぼれ球の奪いあいになり、バックパスで安田理大選手に預けることになる。ここで安田選手がワンタッチでロングパスをディフェンスラインの裏へだした。山下選手が抜けだし、GK岡本選手の頭上を抜こうとループシュートを放つが、これは枠をおおきくはずした。
 ゴールキックは山﨑選手がしっかり跳ね返したのだけれど、こぼれ球の回収がうまくいかなかった。そのうえ安田選手の不意を突くロングパスでまったく裏をとられてしまった。なるほどこぼれ球の奪いあいを制すればディフェンスラインの裏をおとしいれるチャンスになるという場面だった。
 直後の62分には愛媛が右サイドからおしこみ、有田選手のシュートでゴールネットをゆらす場面もあった。しかし残念ながらオフサイドだった。相手陣内深くまでおしこみ、詰まることなくペナルティーエリア内へ進入してクロスまでいけていたのだが。

 68分には矢田旭選手に代わって船山貴之選手が出場。76分には岡野洵選手、ゲリア選手、クレーベ選手が、それぞれ鳥海晃司選手、本村選手、川又選手と交代出場した。
 70分には愛媛が選手交代。横谷選手に代わって藤本佳希選手が出場し、フォーメーションを[4―4―2]に変更した。サイドバックが右に長沼選手、左に前野選手となった。
 終盤にはいり、両チームとも目まぐるしく采配で動くなか、愛媛が千葉をおしこむ時間帯になっていった。千葉のプレッシングがずれはじめたのもあって、バックパスで相手を間延びさせてからブロックの隙を突くプレーもみえた。84分にはコーナーキックの流れから川村選手がペナルティーエリア内深くへはいりこんでクロス。中央で山﨑選手がフリーという決定機をつくった。しかしここもGK新井章太選手に防がれてしまった。こぼれ球をひろった茂木選手のシュートも枠をとらえられなかった。
 85分には丹羽選手に代わって吉田眞紀人選手が出場。復帰戦は右サイドハーフでの出場となった。88分には、ブロックされてしまったものの、前野選手からのクロスをエリア内で受けてシュートを打つ場面もあった。
 千葉のプレスの強度が落ちたことでテンポがよくなりだした愛媛だったが、最後までゴールを割ることなく0―2で試合は終わった。

 ジェフユナイテッド千葉は7戦ぶりのうれしい勝利。愛媛FCは2連敗となってしまった。
 ということで、5連戦第2ラウンドを1勝1分3敗で終えた愛媛。つぎの連戦は8日後、アウェーでのザスパクサツ群馬との下位対決からはじまる。群馬は今節東京ヴェルディに1―3で勝利し、勝ち点で愛媛とならんで21位になっている。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 0―2 ジェフユナイテッド千葉 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:
  千葉:川又堅碁、3分、44分