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決断 〜アクアマリンと私〜

「わぁー、綺麗!こんな綺麗な指輪初めてもらったよ、ありがとう!」


それは、透明感があってキラキラしていた。そして、少し青い色をしていた。
純真無垢な少女の瞳のように透き通っている。


初めて夫からもらったプレゼント。Xmasプレゼントにアクアマリンのリングをもらったとき私は、なんの疑いもなくただ嬉しい気持ちでいっぱいだった。幸せだった…
これから起こる出来事など知りもせずにただ、純真無垢な少女のように笑っているのであった。その時はまだ…


今年のXmas直前、私は夫から離婚届を差し出された。とんだXmasプレゼントだ。
とは思いつつも、いつものことだ。言い合いになれば、すぐに離婚だ!とか出ていけ!と怒鳴る。
今回もそれだ。まともに相手なんてしない。そのうち怒りも冷めていつも通りの日常になる。そして何事もなかったかのように、夫は夫として、私は妻として生活を共にする。


ただ今回は、違う。違うというか、申し出を受けようということにした。
いつもは別れ話も離婚も流れる。すぐ元通り。何事もなかったかのようにいつもの日常に戻るのだ。じゃあ最初から離婚届なんて出してくるなよ、別れ話なんてするなよと思う。ただ、言い争いの要点についてとことん話し合おうじゃないかと思うのだ。
でもそれができない、そういう相手。いつも論点がずれる。そういう人間。調子が崩れる。
ある意味強者。いつも負けてしまう。もうそんなくだり、疲れた。


今、昔もらったリングを手にして思う。
嬉しかったんだ、幸せだったんだ、確かそんな気持ちだったんだ、当時の私は。
再びそのリングを手にしている私に、もうその気持ちは1ミリもない。
無意識にそのリングを握りしめ力が入ってしまう。


「悔しい…悲しい…」


もっと早く決断してもよかったとは思う。でも、決断できなかった。それは、愛していたから?
違う、そんなんじゃない。

がんじがらめだったんだ。気づいたら、自分で決断できなくなっていた。一人で生きていけない人間になっていた。どこにも行くことができない、誰も頼る人がいない、まるでカゴの中の鳥、主人に従順なペットのようだ。

悔しくても歯を食いしばり、悲しくても顔には出さず、夜中布団の中で独り泣く。ロボットのように淡々と家事をこなし、言うことを聞いて、嫌なことも文句言わずにやってきた。

褒めてもらいたいわけじゃない、お金が欲しいわけじゃない。
ただ、存在を認めてほしい。私はロボットじゃない。人間だ。生きてる。感情もある。病気だってする。悲しい時は涙が出る。元気がない時だってある。だからいつも笑顔では居られない。

私だって、主張したいことがある。好みもあれば、希望もある。やりたいことだってある。
なぜ、ダメなの?


「やりたいことがあるなら一人でやればいい。」
「言うことが聞けないのなら、もう別々に居よう。」

意味がわからない。

やりたいことがあるのは、私。それをやるのも私。あなたじゃない。
言うことが聞けないのなら、一緒には居られないの?
それって、本当に夫婦なの?


答えは出ない。だって話し合いにならないから。
答えなんて必要ない。もう私は決断したから。
もし、あなたがその答えを教えてくれたとしても、私の出した答えとはまるで違う、だから私は、私を信じる。もうあなたは信じたくない。


がんじがらめだった私は、それでも年月が経つにつれて体に巻き付いた鎖が緩くなっていることに気づく。そして頭を使った。考えた。
今その鎖は解けようとしている。私は力をつけた。鎖なんて引きちぎってやる!


年末年始、私たち夫婦は会話もなく、年を越した。
夫はそれでもいつも通りの生活に戻そうと、ごまをするような行動をとる。

お土産、気配り、イベントの誘い、仕事でも私が困らないように先読みした行動がいつにも増して多かった。
会話のない交流。なんか変な感じだ。


あなたはどうしたいの?ホント調子が崩れる。

でも私はもう決断した、揺るがない。失うものもない、後ろ髪引かれることもない、夫との生活を整理して旅立つのだ。


私は夫からもらったリングを袋にしまった。処分用の袋に。


私はあなたとは違う、私は…

私だ。




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