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第6波の減衰が緩慢な理由

オミクロンの流行による第6波はこれまでの波に比べると格段に大きな流行波です (図1)。第5波が収まった2020/2/1-2021/12/1までの22ヶ月間の感染者数 (PCR陽性者) は1,722,786人ですが、2021/12/1-2022/3/1の3ヶ月の感染者数は3,333,413人にもなります$${^{1)}}$$。第6波では短期間に2倍の感染者をだしていることになります。 

しかしこの流行波の基本再生数はこれまでのものと大きな差はありません$${^{2)}}$$。オミクロンは感染力が高く急激な感染者の増加をもたらしたというメディアの声が大きいのですが、感染の規模で標準化すれば基本再生産数の値が示す通りの感染拡大速度で広がっているだけです。第6波の1週間あたりのPCR陽性者のピークは2/12でそれ以後は減少段階に入っているのですが、この逓減速度が増加速度に比べて遅く、なかなか入院患者の減少につながっていません。緩慢な第6波の減衰の原因をワクチンの3回目のブースター接種が遅れているためだという声も聞こえてきますが本当でしょうか?

 1. 仮説1: ワクチン接種の遅れが第6波の進行を抑制しているか?

 ワクチンを接種すると基本再生産数が下がります。基本再生産数が下がると感染者数は少なくなりますが、感染波の進行は緩慢になります$${^{3)}}$$。ですからこの仮説は成立しそうにありません。

 実際にSIRモデルで予想した第6波にこの仮説を適用してみましょう。第6波は次の条件で再現できます。

 初期感受性者数:3,040,000人
侵入感染者数:9.5人
感染期間:9.5日
基本再生産数:1.94
致死率:0.0022
感染者侵入日:2021/12/22

 モデルでは日本人の8割が生来抵抗性をもつことを仮定しています$${^{4)}}$$。さらに、これまでに30%の人がブースター接種を終えています。ワクチンの抑制効果を80%とすると日本人の85%が抵抗性を獲得していることになります。この条件で第6波を描くと図2の青線のようになります。

次にワクチン接種が進んでブースター接種率が60%になっていることを仮定します。抵抗性獲得率は90%に上がります。この条件で第6波を描くと図2の赤線のようになります。患者数や感染者の総数は減りますが接種率30%に比べれば緩慢な増減を示します。ワクチン接種が進めば感染者の減り方は緩慢になるのです。

 それでも感染者数と死亡者は40%程度に減りますから国がワクチン接種を推進する理由もわかります。しかし、これはワクチンの効果が現在の80%を維持する場合です。何よりも副作用によるリスクを考慮しなければなりません。間接的効果も含め超過死亡数が増える可能性$${^{5)}}$$は否定できません。

 2.仮説2: 水際対策を緩めたことが第6波の進行を抑制しているのか?

 岸田政権は昨年度の終わり頃感染がほぼ終息しかかっていたころ空港の水際対策を緩めました。しかし、今年に入ってからオミクロンの感染波が現れてあわてて入管を制限し、今また水際対策を緩め「まん延防止等重点措置」も終了しました。

 場当たり的な水際政策の影響は空港のPCR検査数に如実に反映されています(図3)。昨年の暮れは日本では感染者がほとんどいなくなりましたが、海外ではオミクロン波による感染者の増大が顕著になっていた時期です。

実際、空港でのPCR陽性者が昨年暮れの水際対策の緩和で劇的に増えています。空港での感染者が増えると必ず少し遅れて国内の感染者が増えます。

 東京オリンピックの前の昨年6月の終わりから7月の初めも空港検査が劇的に増え感染者が流入しました。少し遅れてオリンピックの開始とともに国内の感染者が増え始め、デルタ株による第5波が始まります。なぜ、海外での感染者が増えていた昨年の暮れに水際を緩めたのか不思議でした。

 今回もまだ大量の国内感染者を出しながら入国制限を緩和し、1日80人程度の感染者が国内に流入しています。この効果をSIRモデルに組み込むため$${^{7)}}$$一日の感染者数の増加分に80人を加えて次のように変形して漸化式を描いてみました。

 $${ΔI_n=-ΔS_{n-1}-ΔR_{n-1}+80}$$
I:感染者数、S:感受性者、R:回復者+死亡者

 すると一日感染者が80人侵入すると感染波の進行はむしろやや速くなることがわかります(図4)。感染者がなかなか減らないのは水際対策を緩めたためではなさそうです。

 もちろん累計感染者数や死亡者数は増えますがその変化は3%程度です。第6波は規模が大きいため水際対策を厳しくしても焼け石に水で大きな効果は得られません。むしろ、緩和して経済の回復を優先すべきだというのが政府の方針なのでしょう。

 3. 仮説3: 第6波は2つの感染波からなっているではないか?

 第6波の形をみてみると感染者の増加のピークにあたる2/10あたりから累積感染者数の増え方が少し緩慢になっており、SIRモデルのシミュレーションから少しずれています(図1 矢印)。このことは第6波が2つの波の合成波であることを示唆しています。

 そこで第6波を二つの波 (第11, 12波)の合成波としてシミュレーションを行ってみました(図5,6)。短期間に2つの波がくるとシミュレーションは結構厄介なのですが次のような値でおよそ実測値を再現できます。

 最初の波(第11波)
初期感受性者数:3,100,000人
侵入感染者数:5人
感染期間:9.5日
基本再生産数:2.54
致死率:0.0027
感染者侵入日:2021/11/12

 2番目の波(第12波)
初期感受性者数:3,040,000人
侵入感染者数:700人
感染期間:9.5日
基本再生産数:1.94
致死率:0.0022
感染者侵入日:2021/12/22

感染率の減衰が遅いのはおそらく第6波が2つの波の合成波だからでしょう。第11波と第12波の感染者の増加のピークは2/12と3/18です。第12波のピークは過ぎていますから、今後は増加速度と同程度の減少速度で急激に感染者は減少していくのではないかと思います。

 第11波と第12波はこれまでのものに比べると致死率は格段に低くなっています。最終的には12,000ほどが亡くなるのではないかと思いますが、感染者数は500万人以上ですから超過死亡で見ると3,000人程で致死率は0.06%とインフルエンザ並みです。

このデータを見る限り水際対策の緩和やまん延防止重点措置の終了は妥当な気がします。要するに、コロナは普通のカゼ以下だから特別なことはやらなくてもいいという方針に切り替えたように見えます。しかし、外国人侵入者が増えれば新たな感染波が発生する可能性があることは否定できません (図3)。

 このような状況ですから、世界中でワクチン接種反対のデモがおこり、マスクをやめて普通の生活をはじめているのも頷けるのですが、欧米に比べるとはるかに被害が少ない日本で、相変わらずマスク着用を推進し、庶民の楽しみである花見を禁止し、効果がないばかりかADEや抗原原罪により感染率や致死率を上げるリスクがある上、夥しい副作用のため欧米では訴訟騒ぎがおき、ファイザーやモデルナの株価が急落している用済み遺伝子ワクチンを大量購入し、学生にオンライン授業を強制しているのはなんとも不思議な光景です。

$${^{1)}}$$https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html
$${^{2)}}$$https://note.com/mbi/n/n76348ee0aa20
$${^{3)}}$$https://note.com/mbi/n/nea9172d61eb9
$${^{4)}}$$https://note.com/mbi/n/n6b7a7b62b483
$${^{5)}}$$https://note.com/mbi/n/nb74e4bece5c2
$${^{6)}}$$https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000913474.pdf
$${^{7)}}$$https://note.com/mbi/n/n39010e7cb503