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仙骨に褥瘡の薬塗ってガーゼ&テープ

わたしが今の薬局に入社して20年が経ちますが、その間ずっと来局されてる患者さんがいます。
田岡さん(仮名)。
最近、調子が悪く、入退院を繰り返しています。
今は家で過ごしてて、奥さんが面倒を見てる生活。

その田岡さんに初めて、褥瘡の塗り薬が出ました。
仙骨(お尻にある、いわゆる、しっぽの付け根)に塗る、と。

褥瘡の薬もいろいろありますが、今回は
「プロスタンディン軟膏」
でした。
この薬の特徴をざっくり言うと、

①油分で患部を覆うため、水分が逃げにくくなる
②有効成分の作用により、血行が良くなって、肉や皮膚を再生してくれる

だいたいこんな感じです。

奥さんの話によると、田岡さんは寝てる時間が長い、とか、椅子に座ってゲームをする時間が長い、など、褥瘡の香りがプンプンです。
褥瘡といっても、田岡さんの場合はまだ、変色してる程度らしく、かなり初期の方っぽい。
褥瘡が悪くなると、とんでもない目に遭うので、とにかく初期のうちにしっかり対策をして、悪くならないよう、理想を言えば良くなるようにして欲しいです。

薬を塗った上からガーゼをあてて、テープで固定するのですが、この処置の仕方次第で、薬の治療を続けられるか、続けられないかが、結構左右されます。
テープが弱くてきちんと固定できないと、ガーゼが剥がれて治療がうまくいかない。
逆にテープが強過ぎて肌がかぶれると、テープを貼り続けられなくなります。
適度な強さで適切に続けられることが大事なんです。

薬を渡した数日後に、薬局から田岡さんの家に電話して、ガーゼの固定具合を確認したところ、

 仙骨に貼ってるから、お尻の割れ目が開いたり閉じたりする影響を受けるけど、今使ってるテープで、なんとか固定はできている。
 ただし、今後続けていくとなると、伸縮性や粘着性に不安がある。

ということが分かりました。
たしかに仙骨にガーゼ貼るのって、動くたびに伸びたり縮んだりするし、座ってる時に摩擦が起こったりするし、難しいっぽいですね。

そのため、ニチバンっていう、テープで有名な会社の商品のうち、田岡さんに合ってそうなテープを仕入れることにしました。
ちなみにこれは、医療用です。
ドラッグストアにあるような市販用は、1個から販売できますが、今回のは医療用で、1箱に何個か入ってるため、箱単位だと販売価格が高くなります。

しかし、これを逆に利用することにしました。
要は箱を開けて、田岡さんに1個だけ販売して、使い心地を試してもらえばいいのです。
残りは薬局のカウンターに並べておいて、田岡さんが続けて買う時や、他の人が買う用に置いておけばいいのです。

これって大手ではできない、個人経営の小規模薬局のメリットだと思います。

①田岡さんが安価に試せる
②田岡さんから使い心地や使い方の工夫など、生の意見を聞ける
③田岡さんが今後、必要な分だけちょっとずつ買うことができる(高い金払って箱買いしなくていい)
④田岡さん以外の人にも、1個単位から提供できる

もちろん忘れてはいけないのが、薬の使用以外にも、生活習慣について、寄り添っていくことです。
田岡さんが座ってる時のクッションや、寝てる時のマットレスとかも、きちんと相談にのって、会話の中から田岡さん個人に合ったものを提案できるよう、褥瘡について、しっかりと勉強、強化が必要です。
薬局は、製薬会社が一般には公開しないデータにアクセスできるし、他にもお金払って勉強用動画を契約してるんで、フル活用です。
世の中には、信頼性の低い情報や、謎の商品が乱立していますので、きちんとした医療用のエビデンス(科学に基づいた論拠、みたいなもの)に基づいたものを提供し、最終目標は、田岡さんがプロスタンディン軟膏のお世話にならなくても済むようになることだと思います。

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