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走りながら考え、本質を見極める

「まず行動してみよう」「走りながら考えよう」は、私がよく使う言葉です。

この言葉を使うようになった背景には、独立当初の失敗の経験があります。独立すること自体を目的としていた私は、事業内容についてこだわりがなく「お金」の軸だけでいくつかの事業を始めたのですが、思うように売上は上がらず、1年ほどでキャッシュが尽きかけました。

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「社長である自分が、すべて決めなくてはならない」という考えに囚われたことが、失敗の大きな要因でした。

というのも、独立当初の事業について、先輩経営者から「失敗するから、やめておけ」と言われていたんです。それも、一人や二人からではなく、感覚的には「十人中十一人が反対している」くらい、強く反対されていました。

それなのに「すべて自分で決めなくては」と考えていた私は、先輩方の助言を聞き入れることができず、失敗することになったんですね。のちに、どうして先輩方が「やめておけ」と言ってくれたのか、頭で理解できるタイミングがやってきました。そこではじめて「なるほど、そういうことだったのか」と受け入れることができ、「人間は、ときに頭だけで理解することがとても難しい」ということにも気が付きました。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはまさにこのことで、経験から学びを得ることはもちろん大事なのですが、「頭で完全に理解ができなくても、先人の学びを一旦受け入れて、実行してみる」という姿勢を学んだ出来事でした。

それ以来、誰かに相談し助言をいただいたときには、見解が100%合致しなかったとしても、どこかでそのエッセンスを実践してみることを大切にしています。実際にやってみたら、「なるほど、こういう意味だったのか」と思い至るときがあります。

でも、多くの人は、完全に理解できてから意思決定をしようとします。未経験の荒野に進もうとするときには、これだとスピードは遅くなり、意思決定の質も低くなると思うんです。創業期から弊社のパートナーとして伴走いただいているデザイナーさんに「松林さんは、“クソ”クリエイティブですね」と褒めていただいたことがあるのですが笑、「理解して、意思決定をする」をやめたら、自分だけの知識や経験という制約を超えて、クソクリエイティブになれるのだと思います。

例えば、その時点で自分の頭で理解できない内容でも、先人のアドバイスを一旦受け入れ、いくつか組み合わせて実践してみたら、唯一無二のビジネスが作れるかもしれない。自分が見えている範囲、自分だけで理解できることを超えた“その先がある”、という視点が持てるかどうかで、結果は大きく異なります。


また、「どうしてそんなに、人に任せることができるのか」と聞かれることもあるのですが、これも、実際に任せてみないとわからないんですよね。任せてみて、任せ過ぎたら、減らしたらいいんです。多くの人は「自分はここまでしかできない」と思い込んで、可能性を限ってしまっていることがあると思います。でも実際にやってみたら「案外できてしまった!」ということも。だから「まずは行動してみよう」と伝えています。

とはいえ、なかなか人に任せるのが難しいという気持ちもわかります。そこで、私がもう一つ意識しているのが「センターピンを外さない」ということです。

ボーリングは、すべてのピンを倒すことがゴールのスポーツですよね。つまり、毎回ストライクを出せればいい。ストライクを出すには、セオリーがあります。それは、1番と3番ピンの間のポケットと言われるところに3〜6度の入射角でボールを投げ、センターピンを倒すことです。ボールがこの角度でセンターピンに当たらないと、ストライクを出すのは難しいということが分かっているんです。

目的がストライクを出すことなのであれば、考えるべきこと・意識すべきことは「いかに、適切な入射角でボールを投げ、センターピンを倒すか」ということだけ。後ろのピンがどうこう、ということを考えることはありません。

これは、ビジネスでも一緒だと思います。私はいつも、センターピンはどこかを考えています。このビジネスで成功する、もしくは失敗しないためのポイントはどこかを見極め、把握しています。

「センターピンさえ外さなければ、あとは任せて大丈夫」という発想なのですね。

私がいまでも大変お世話になっている前職の会社の会長から聞いた話で「ある自動車メーカーに、どんな故障も直すエンジニアがいた。他のエンジニアは、故障を直すために忙しそうに動き回っていたけれど、その人は、じっくり時間をかけて車を確認したあと、パッと故障を直した」というものがありました。これも、センターピン、つまり、問題の本質がどこであるかを見極めている例ですよね。

そして、じっくり考えて本質を見極めるためには、時間に追われすぎないことが大切です。経営において、それを実現するためには、キャッシュに余裕が必要です。資金繰りに追われていると、どうしても気持ちも焦り、間違った決断をしてしまう可能性が高くなります。そのため、私は、“1年間”事業を運営できるだけの現預金を持っておくというのは意識しています。1年あれば、何とか対策を打つことができるからです。

会社がキャッシュを手に入れる手段は3つ。売上をあげること、エクイティファイナンス(株式発行による調達)、デッドファイナンス(金融機関からの借り入れによる調達)です。

売上をあげるにはコストがかかるので、基本的にはエクイティかデッドで現金を確保することになりますが、それぞれのメリット・デメリットや、とりわけデッドファイナンスについてはかなり勉強しましたし、ファイナンスに関する勉強会の講師をさせていただくこともあります。これも、会社経営のセンターピンは何かを考え、行動してきた結果です。

だからこそ、行動してみたものの、本質を考えることを怠ってセンターピンを外しそうになっていたら、しっかり指摘します。
「それ、ガーターなるやん!」と。笑

「まず行動してみる」「走りながら考える」は、「本質を見極める」視点と両輪で考えることが大切ですね。

資金調達(ファイナンス)に関する考え方については、また別の機会にでも詳しく書こうと思います。


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