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【行動経済学/MBA】② ヒューリスティクス/その事例

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓

今回の記事では、行動経済学において重要な「ヒューリスティクス」という概念を見ていきます。

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ヒューリスティクス

さて、のっけから、

「どこでアクセントをつければいいのかよくわからない語感の単語」

を出してしまってすみません。


01_02_ノーマル・バスト


ヒューリスティクスとは、人間の直観である「システム1」に関連した概念です。

何かを解決するときに、経験や知識からくる法則をぱぱっと参照しちゃう人間の特性を指します。


いわゆる「格言」も、ヒューリスティクスの1つですね。


例えば、プロのサッカープレイヤーが呆れるようなキックミスをしたとしましょう。

そんなときに、

「まあ、”猿も木から落ちる”と言うし、そういうこともあるだろうな」

と、格言を知っていれば、

「なぜキックミスをしたのか」

という事実に対して、自分の中でさっと解答を導けます。


このように、

「急いてはことを仕損じる」

「早起きは三文の徳」

ビジネススクールの生徒はパーカーを着る

といった古くからの格言は、ヒューリスティクスと言えます。


このように、何か問題を解決したり意思決定したりするときに、

(まあ、だいたいそういうことだよね……)

と思える自分の中の法則を参照して、ぱぱっと結論を導く。

これがヒューリスティクスです。


ヒューリスティクスのメリット・デメリット

このように、過去の経験や学習から覚えた知識はヒューリスティクスとして利用できます。


時間をかけずに物事を理解できるこのシステム1は便利ですよね。

素早く、大した労力なしに答えを得られる」のは大きなメリットです。

01_04_ノーマル


しかしこのメリットの諸刃の剣として、ヒューリスティックスにはデメリットも伴います。


なぜならば、

「印象に残っている知識や法則を参照して、大体のあたりをつける」

という行為は、

ときに、細部の違いに気づけなくさせてしまうからです。


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先ほどの、プロのサッカープレイヤーが呆れるようなキックミスをしたシーンを考えてみましょう。

「まあ、”猿も木から落ちる”と言うし、そういうこともあるだろうな」

と、格言(≒ヒューリスティックス)で、さっさと結論付けて、その選手に引き続きプレイさせることはできます。

しかし、よくよく調べてみると、実はそのプレイヤーが怪我をおしてプレイしていたのを隠していたとしたら、どうでしょうか。


「猿も木から落ちる」というヒューリスティックスで事を片付けたせいで、

「本来なら、休ませるべきだった」というあるべき意思決定と、

異なる意思決定をしてしまう、ということになるわけです。


ヒューリスティクスが当てはまらない「例外」にぶつかると、

とんでもない間違いを生み出す。

これが、ヒューリスティックスのデメリットです。

なんだか人生みたいですね。


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ヒューリスティクスによるバイアス:代表性バイアス


ある問題に遭遇すると、記憶の中の「判断に使えそうな代表的な事例」を無意識的に利用するのが、システム1のヒューリスティクスでした。


この、直感的な判断からくるバイアスを「代表性バイアス」と呼びます。

「バイアス」というぐらいですから、ヒューリスティックスの負の面ですね。


「代表性の罪」として、『ファスト&スロー』の著者であるカーネマンは、

こんなことを著書内で言っています。

代表性の第一の罪は、
起こりそうになり(すなわち基準率の低い)事象を、
きっと起こると思い込むこと
である。

たとえば、
あなたがニューヨークの地下鉄の中で、
ニューヨーク・タイムズを読んでいる人を見かけた
としよう。
この人は、次のどちらである可能性が高いだろうか。

博士号を持っている。

大学を出ていない。

代表性からすれば博士号を選ぶことになるが、
その選択は必ずしも賢明とはいえない。

ニューヨークで地下鉄に乗る人は大学を出ていない人のほうがはるかに多いのだから、あなたは二番目の選択肢を真剣に考えるべきである。

ダニエル・カーネマン、村井章子訳(2014)
『ファスト&スロー(上)』(ハヤカワ・ノンフィクション)


知的な香り漂うニューヨーク・タイムズを読んでいる人を見たときに、

「博士号か高卒、どっちだと思う?」

と問われたら、

高卒の方が人口は圧倒的に多いはずなのに、

「あの人は博士号かなあ」と思っちゃう、

ということですね。


さて、ここまで

システム1⇒ヒューリスティクス⇒代表性バイアス

と解説してきました。

ここからは、代表性バイアスの事例をご紹介していきます。


代表性バイアスの例① 少数の法則 

統計や確率を、少ない回数・小さい規模の事象にはあてはめてしまう

ことを少数の法則と言います。


たとえば、じゃんけんで相手が「グー・チョキ・パー」を出す確率は、

一般的にはそれぞれ3分の1ずつですよね。


しかし、これがある個人がほんの数回じゃんけんをしているだけの場合、

グー・チョキ・パーの確率は必ずしも3分の1ずつとはなりません。

パーばっかりだったから、そろそろグーを出してくるかな?

という確率論は当てはまらないわけです。

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「次はパーを出すぞ」と妙に自信たっぷりに宣言している人間がいれば、なおさらです。


代表性バイアスの例② アンカリング 

「最初に目にした数字を参照点となってしまい、今後の判断の基準となる」

のが、「アンカリング」です。


普段スーパーで買いものするときには、

10円単位で必死こいて半額品を探しているのに、


クルマを買うときは、

10万円単位のカーナビなどのオプションにも、ポンとお金を出す。


これは、「クルマという数百万円の商品」がアンカリング効果として働き、

「10万円単位のオプション」を安く見せていると言えるでしょう。


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代表性バイアスの例③ 再認ヒューリスティクス

 「聞いたことのあるものを、聞いたことのないものよりも過大評価する」

というのが、再認ヒューリスティクスです。


たとえば、次の2つのグルメマンガ……


マンガ『孤独のグルメ』(日本)

マンガ『エル・グルメ・ソリタリーオ』(スペイン)、


どちらがおもしろい内容だと思いますか?

(読んだことがある、という人はごめんなさい)


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どちらのマンガも読んだことの無い多くの人は、

『孤独のグルメ』

の方がおもしろそうだと思ったのではないでしょうか。


もう片方の『エル・グルメ・ソリタリーオ』は、

「なんだか、よくわからんマンガだろうな……」

という印象だったのでは、と思います。

(もちろん、「なんだかよくわからんから、かえって気になる」という意見もあるでしょうが……)


しかし実際には、

マンガ『エル・グルメ・ソリタリーオ』は、

『孤独のグルメ』のスペイン語版”El Gourmet solitario”をカタカナで書いただけで内容は同じです。


どちらも同じマンガなのですが、

多くの人は聞き覚えのある『孤独のグルメ』を過大評価したのではないでしょうか。


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このように、名前を再認できるものを評価するのが人間です。

「見覚え」「聞き覚え」といった感覚は、単純かつ強力なのです。


単純接触効果

この再認ヒューリスティクスによる効果の1つが「単純接触効果」で、

「慣れ親しむほど、そのものを好きになる」

「繰り返された事柄は、信じたくなってしまう」

といった効果を指します。


もしかすると、『孤独のグルメ』は鳩の記事でよく引用されているので、

マンガそのものを読んだことがない方々にも、

無意識のうちに親近感を与えていたかもしれません。



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また、シンプルな文章ほど、

覚えやすいので真実と受け取られやすい傾向にあります。


 「なんだか人生みたいですね」

「人に歴史ありですね」など、


中身が無くても格言風に仕立てられた文章を使うと、

「洞察に富む格言だ……」

と判断されるわけです。

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まとめ

では、ここまでの内容を振り返りましょう。

【ヒューリスティクス】

・人間の直観である「システム1」に関連した概念
・何かを解決するときに、経験や知識からくる法則を参照する人間の特性
・「格言」「ことわざ」もヒューリスティックスの1つ
【ヒューリスティクスのメリット・デメリット】

○メリット
・素早く、大した労力なしに答えを得られる

○デメリット
・ときに、細部の違いに気づけなくなり、あるべき意思決定と異なる判断をしてしまう
【代表性バイアス】

・直感的な判断から、起こりそうになり(すなわち基準率の低い)事象を、
きっと起こると思い込む
【代表性バイアスの例① 少数の法則 】

・統計や確率を、少ない回数・小さい規模の事象にはあてはめてしまう

(例)
「相手はこれまでパーばっかりだったから、そろそろグーを出してくるかな?」
【代表性バイアスの例② アンカリング 】

・最初に目にした数字を参照点となってしまい、今後の判断の基準となる

(例)
「クルマという数百万円の商品」がアンカリング効果として働き、
「10万円単位のオプション」にポンとお金を出してしまう
【代表性バイアスの例③ 再認ヒューリスティクス】

・「聞いたことのあるものを、聞いたことのないものよりも過大評価する

(例)
マンガ『孤独のグルメ』(日本)の方が、
マンガ『エル・グルメ・ソリタリーオ』(スペイン)よりも、
おもしろそうだと感じてしまう。

単純接触効果
・再認ヒューリスティクスによる効果の1つ
・慣れ親しむほど、そのものを好きになる
・繰り返された事柄は、信じたくなってしまう


以上、行動経済学における

システム1⇒ヒューリスティクス⇒代表性バイアス⇒その事例

をご紹介してきました。


次回の記事では、

行動経済学における「損失回避」という概念と、

これにまつわる投資家の行動や子どものしつけ方について触れていきます。


お楽しみに。

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