【MBA/体験記】第22話「ビジネス法語構文の迷宮」
こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!
前回までの『能ある鳩はMBA』では、
「ビジネススクール × 婚活」に関する考察について記載しました。
今回は、
「SNS上のとある『構文』は、ビジネススクールの授業で役に立つのか」
をテーマに見ていこうと思います。
1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!
ビジネス法語構文
さて、Twitterをしていると、SNS上で「いいね!」を集めるツイートのうち、次のような形式の発言に目が留まるようになりました。
過去とは振り返るものではなく、乗り越えるためにある。
負けるときでも、傷を浅くする努力が必要だと考える
勝てるところで勝とうとするのが勝つには一番大切
たしかに、妙な説得力があるように感じられますが、
実際には何かを言っているようで大したことは何も言っていません。
どうしてこのような発言が「いいね!」を集めるのだろうか、と鳩は不思議に思いました。
「この手の言い回し、どこかで見たことがあるんだけどなあ……」
としばらく考えていた鳩ですが、やがてある答えに辿り着きます。
そうだよ!
じいちゃんばあちゃん家でよく見たあの法語カレンダーだよ!
ただし、現実の法語はそれなりにいいことを言っていると思いますが、
中身のないことをつぶやいて「いいね!」を荒稼ぎする人間は、
吐き気を催す『邪悪』です。
「井の中の蛙大海を知らず……されど空の青さを知る……
そう、あの諺には続きがあったのをご存知でしたか?」
とか平気な顔で言い始めるのはこういう人間たちでしょう。
さて、以下では、このような言い回しのことを、
実際の「ためになる」法語と区別するために、
「ビジネス法語構文」
と呼ぶこととします。
ここからは、Twitterで実際に使われている事例を参考に鳩が作成したビジネス法語構文見ていくことで、その特徴に迫っていきましょう。
ビジネス法語構文の特徴 ①断言する
ビジネス法語構文の使い手は必ず断言します。
成功者の人生には、適度な運動が欠かせない
「結局のところ」のように強調する言葉を入れるとなお良いです。
結局のところ、成功者の人生には、適度な運動が欠かせない
ビジネス法語構文の特徴 ②短い言葉を使う
なるべく短文を心掛けるのも良いでしょう。
忘れられる人間は強い
心か
ビジネス法語構文の特徴 ③反対っぽい概念を並べる
反対のように見える概念を並べるのも魅力的です。
インプットはアウトプットのためにある
ビジネスとは質と量で決まる
激流を制するは静水
MECEを心がけると、別に当たり前のことを言っているだけなのにそれらしく聞こえます。
私に言わせれば、人生の生き方は2つ。嘘をつくか、つかないか、だ。
会社には2つのタイプの人間しかいない。上司と部下だ。
食事とはーー朝食、昼食、夕食で構成される
ビジネス法語構文の特徴 ④アクセントで倒置法を使う
積極的であることは何よりの武器である
これだけでも、「何よりの」と強調の言葉を用いて断言しており、ビジネス法語構文としては十分ですが、ここで倒置法をアクセントとして利用するとなお良いでしょう。
積極的であることは何よりの武器である
特に、若手であるうちは。
詩人にもなれます
ちなみに、文末へ、
「なんだよなあ」
を挿入すると、どこかで見たことのある詩を作れます。
勝てるところで勝とうとするのが勝つには一番大切なんだよなあ はと
結局は、適度な運動が大切なんだよなあ はと
井の中の蛙は大海を知らないが 空の青さを知っているんだよなあ はと
バーナム効果
さて、ここまで数多くのビジネス法語構文を挙げてみました。
本来なら、こんな中身のない言葉をいくつも目にすれば、
「ワカリきったことをクドクドと……」
と、うんざりしそうなものです。
しかし人間は、
それっぽいことが書いてあるのを見ると、
「自分のことだ……!」
と勝手に置き換えてくれる性質を備えています。
これは「バーナム効果」といって、占いなどでも使われている心理です。
以下、少し長いですが、ある文章を引用します。
「自分に当てはまるところがあるなあ」と思いませんか?
あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、それにかかわらず自己を批判する傾向にあります。
また、あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます。
あなたは使われず生かしきれていない才能をかなり持っています。
外見的には規律正しく自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります。
正しい判断や正しい行動をしたのかどうか真剣な疑問を持つときがあります。
あなたはある程度の変化や多様性を好み、制約や限界に直面したときには不満を抱きます。
そのうえ、あなたは独自の考えを持っていることを誇りに思い、十分な根拠もない他人の意見を聞き入れることはありません。
しかし、あなたは他人に自分のことをさらけ出しすぎるのも賢明でないことにも気付いています。
あなたは外向的・社交的で愛想がよいときもありますが、その一方で内向的で用心深く遠慮がちなときもあります。
あなたの願望にはやや非現実的な傾向のものもあります。
(2021年3月19日 閲覧)
断言しているようで、誰にでも当てはまるような曖昧さを持つからこそ、
ビジネス法語構文にはバーナム効果を惹起する効果があるのでは、
というのが鳩の推測です。
なぜならば、
さきほどのビジネス法語構文には「いいね!」が集まるだけでなく、
次のようなリプライまで返ってくるからです。
「インプットはアウトプットのためにある」
↓
(リプライ)
アウトプットを常に思い描きながら勉強していると、本当に自分が成長できているなと感じられます!
負けるときでも、傷を浅くする努力が必要だと考える
↓
(リプライ)
すごく共感できます! 負けそうな試合でお100点差で撒けるのではなく最小失点に抑えることが重要ですよね!
積極的であることは何よりの武器である
↓
(リプライ)
積極的過ぎて煙たがれることもある私です……(汗)
こうなるともう入れ食い状態でしょう。
ちなみに、これまで鳩が見てきたリプライの中で一番気に入っているのは、
「アグリーです。染みます……」
ですね。
そもそも、人間誰しも自分の意見を発信したいもの。
なので、ある言葉に「共感した!」と思ったら、勝手にボールを投げてくれます。
それっぽい言葉をてこにして、自分の言いたいことを言いたくなるからこそ、ビジネス法語構文には支持が集まるのかもしれません。
ビジネス法語構文はビジネススクールの授業に活かせるか
結論から申しますと、ほとんど活かせません。
たしかに、ビジネススクールの授業中の発言でビジネス法語構文を用いる人間はいます。
しかし、たいていの場合はその後、
発言が全く続かないか、
中身のない発言が続くことになります。
発言に説明責任が付いて回るビジネススクールでは、
バーナム効果で相手に自由な想像をさせることができません。
ビジネス法語構文を使うには注意が必要でしょう。
しかし、使えないのは中身のないビジネス法語構文であって、
そのエッセンスの全てが利用できないかというと、そういうわけではありません。
「発言の冒頭では、短い言葉で自分の意見や立場を表明する」のは、聞き手に自分の意見を伝えるのに必要なスキルです。
また、「対になる概念を並べて考えてみる」ことは重要です。
授業中、議論が行き詰ってきているなあと感じられるとき、
「いま抜け落ちている話題はなんだろうか」
「反対の場合となったとき、どのようなことが起きるだろうか」
という視点を提供することは、議論を活発化させるのに重要な視点でしょう。
このように、なまじ実践的な要素もあるところがビジネス法語構文の恐ろしいところです。
さて、
ビジネススクールへ通っている、
又はこれから通おうと考えているみなさん。
ぜひ、SNS上のビジネス法語構文を探してみてください。
「この構文はどのような構造となっているのか」
「自分だったらどんなビジネス法語構文を作れるか」
を考えてみることはきっと、ケース・メソッド授業で活躍する訓練につながるはずです。
訓練とは終わりのないアウトプットである ――白山鳩
以上、「ビジネス法語構文とこれをビジネススクールに活かすには」の記事でした。
次回、能ある鳩はMBA 第23話「Q&Aの掟」
お楽しみに。
to be continued...
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参考資料
・挿入マンガ①:荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)
・挿入マンガ②:久保帯人『BLEACH』(集英社)
・挿入マンガ③:武論尊(原作)原哲夫(作画)『北斗の拳』(集英社)
・挿入マンガ④:板垣恵介『バキ』(秋田書店)
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