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大学院進学の理由(修士・博士前期課程・専門職学位課程)

 これまで多くの大学院生に接してきました。修士課程や博士課程前期課程そして専門職学位課程(何れも修士の学位を取得できます)に進学される理由も、人それぞれです。最も進学目的が明確なのは、専門職学位課程(専門職大学)のロースクール(LS)やアカウンティングスクール(AS)への進学者で、この方たちの多くは弁護士や公認会計士の資格取得を目標にしています。一部の博士前期課程や専門職学位課程には、中小企業診断士の第一次試験合格者を対象にしたプログラムがあり、この課程の修了者には第二次試験が免除される恩典があり、どの大学院も希望者が殺到しています。LSとASでは定員割れや募集停止が少なくないのとは対照的です。
 文系の修士課程や博士課程前期課程に学部卒の資格で進学される方の多くは、広い意味での研究職や教育職を目指されている方です。図書館司書や博物館の学芸員などを目指す方も、相当数、大学院に進学されています。自治体の学芸員のポストは非常に競争率が高く、国立大学や有名私立大学の修士の学位を取得されている方が多数おいでになります。大手のシンクタンクにコンサルタントとしてのキャリアを希望されるような場合は、正直修士の学位は必須です。企業や自治体では、コンペでコンサルタントの学位等の記載を求め、修士や博士のコンサルタントがメンバーとして参加する場合には、コンペの評価で加点をするといったうわさを聞いたこともあります。
 最も代表的な進路としては、修士の学位を取得して博士後期課程に進んで、大学の教員を目指す方も少なくありません。特に七帝と言われる旧国立大学や早慶の文科系研究科には、将来の大学教授が多数学ばれていると思います。ただ、少子化の影響で、この二十年大学はたくさんできましたが、経営状況の悪い大学もあり、助教や専任講師のポストを得ることは、相当に困難と考えられます。それも覚悟のうえで、まずは修士課程ということで、研究に取り組まれている方も多数おいでになると思われます。
 修士課程や専門職学位課程には、社会人に門戸を広げている大学院がかなりあります。その典型がビジネススクール(BS)や公共経営大学院です。いずれの場合も、入学者の年齢は20代から70代まで幅広くおいでになります。年代ごとに進学の目的は様々ですが、ビジネススクールの場合には、日常の企業や自治体等での勤務経験から生じた問題を解決する力を身に付けようと、私費で進学される方が非常に多いです。もちろん、企業等の負担で大学院に進学されている方も少なくはありませんが、多くは私費で通学されており、大学院の教育水準に求めるニーズは非常に高いと言えます。社会人大学院生の場合には、有利な就職先や給与を目的として進学するというよりも、現状抱えている課題を解決するために進学されている方が多いと感じます。これは、欧米等のビジネススクール進学者とは異なる日本特有の状況です。もちろん間接的にはキャリアアップを意図はされていますが、それは結果としてそうなればというように考えておいでの方が多いように感じます。それゆえ、大学院進学の費用対効果といったような発想で進学されている方は相対的に少ないように私個人は考えています。
(2022.05.16)

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