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覗いてみよう!生物の不思議 #02

 みなさんは最高速度が7cmである地球上で最も遅い哺乳類はなにかご存じですか?正解は「ナマケモノ」です。ナマケモノは異節類の有毛目に属し、アリクイと関係が近い動物となっていて、遠い親戚だとアルマジロがいます。現代のナマケモノは、大きく分けると、ミユビナマケモノ属とフタユビナマケモノ属に分類され、全ての種を合わせてもせいぜい6種しか存在しません。
 
 少しさかのぼって数千〜数百年前のアメリカ大陸には、8つの科と50種以上に及ぶ数多くのナマケモノの親戚たちが生息していました。地面には地上性ナマケモノが闊歩していて、象ほどに巨大な地上性ナマケモノがいたり、木を登り下りできる体長1mの小さな地上性ナマケモノも生息していたりしたのです。他にも、生息地が山岳の高知で、岸壁をよじ登るクライミングをするナマケモノなどもいました。

 このように、アメリカ大陸には様々なナマケモノが生息していたのですが、不思議なことに海に生息していたナマケモノもいたというのです。
 
 1995年に、ペルーのピスコ地方から地上性ナマケモノの化石をいくつか発見しますが、それらの化石はどこか少し変わっていました。化石が発見された場所は海の地層であり、陸上に生息していたナマケモノが死んだ後、海に流されて来たと言うにはあまりにも多くの個体が化石で発見されたのです。この地上性ナマケモノの化石が発見された海の地層は約600万年前のもので、当時のペルーの海岸は砂漠であったため地上性ナマケモノが生息するにはとても難しいものでした。
 
 この化石で発見されたナマケモノが持つ尻尾は、カワウソとビーバーに似ているため水に適応した形をしていました。ではなぜ、このナマケモノは海に行くことになったのでしょうか?
 
 勘のいいみなさんならお気付きかもしれませんが、600万年前のペルーの海岸は砂漠でしたよね。
 
 当時、この地域の地上性ナマケモノは草原地帯で草を食べながら暮らしていたのですが、気候の変化によって生息地が砂漠化し、やむを得ず近くの海に生えている海藻に目をつけたことで、水生環境に適応したナマケモノが生き残ったというのです。
 
 ナマケモノの腕が長くなったのは、水泳に適した体型に進化していったということも含まれています。

 ところで、水に上手く適応した水生ナマケモノはどうして絶滅してしまったのでしょうか。その理由は、地上の形が変化していく過程で水中の温度が下がり、温かい海岸に生息していた水生ナマケモノは体温を調節するのが下手だったため、急激に下がった水温に適応することができなかったからです。
 
 また、あれだけ数多く地上に生息していたナマケモノも現在では見当たりません。この理由も気温の変化が原因で、氷河期が終わりを迎え暖かくなっていった地球で、体の大きな地上性ナマケモノは体に蓄積する熱を上手く発散することができずに絶滅していきました。
 
 さらには、私たち人間の出現によって地上性ナマケモノは容赦なく狩りつくされ、ほとんどのナマケモノは瞬く間に数を減らしていきました。
 
 しかし、このような悪条件の中でも無事だったナマケモノがいました。それこそが現代のナマケモノです。地面ではなく森へ生息地を変えたナマケモノは、小さな体とノロノロとした動きが功を奏し、新陳代謝率が非常に低いおかげで少量の食糧でも生存することができました。また、毛に生えてくる藻のおかげで天敵に見つかりにくく、非常食としても役に立ったことで生存率をグッと上げることに成功したのです。
 
 必ずしも、大きく、速く、強くなければ生き残れないというわけではないのです。つまり、現代のナマケモノは厳しい進化の競争の中で生き残ったということは、圧倒的な強者であるのです。