策士の話(大体全部アイツらのせい)
どうも、パゴパゴです。この記事はみえ様主催の「カニ人アドカレ2023」20日目の記事です。と言っても他の方のようにちゃんとした記事ではなく、カニ人ワールドについて個人的に気になった点についてアレコレと想像を巡らせるというか、時系列を妄想を交えてまとめるというか、とにかくそんなフワッとした記事になります。ちなみに前回の記事はこちらです。ヨナタマ嬢への愛が詰まった素晴らしい内容です。
さて、普段はヘンタイモジカキニンゲンの端くれとして広大なネットの片隅で二次創作小説ばかりを書いている私が何故このような考察モドキ的な記事を書こうと思い立ったのかといいますと、それはずばり爬の国まわり……特にヤマカガシ人爬ちゃんと彼女にまつわる諸々の登場人物たちに関する情報が異様に錯綜していると感じられたからです。
私は現在いかなるSNSのアカウントも所持していないので、カニ人ワールドの情報は専ら公式公認非公式Webサイトから入手しているのですが、先日の人竜族大量更新の際に膨大な情報量で頭がこんがらがってしまい、これは一旦整理しなければ……と思ったのが今回の執筆動機となります。
※本当に無駄に長いので飽きた方は途中でも結構ですので離脱して下さい。
…………よろしいですね? というわけでまずは今回取り上げるキャラクターたちの情報を抜き出してみましょう(本文中の画像・文章は全て上記のサイトから引用)。
魔王ちゃん
うわばみちゃん
大魔王黒蟒
ヤマカガシ人爬ちゃん
大日孁貴ちゃん
国津神須佐能
テナズチちゃん
祖竜テナズチちゃん
アシナズチ
祖竜アシナズチ
クシナダちゃん
深淵クシナダちゃん
卑弥夫ちゃん
八勾十
童女クシナダちゃん
やまたのおろちちゃん
九頭竜権現ちゃん
……………こんな感じです。上に挙げた延べ十七人の登場人物たちはそれぞれが相互に関連しており、同一人物の別形態も含まれています。常に誰かが誰かを嵌めたり攻撃したり呪ったりという間柄なのですが、話をややこしくしている最大の原因はヤマカガシ人爬こと大日孁貴ちゃんと祖竜テナズチちゃんだと思います。この二人は常に何かを企んでいないと死んでしまう陰謀家体質であり、遠い過去から現在に至るまで何かしらの策謀を巡らせては地上やアガルタの覇権を奪おうと画策し、周囲の人物たちは程度の差こそあれそれに巻き込まれています。二人とも非常に諦めが悪いのも共通していますね。
では次にこれらの情報をできるだけまとめて簡単な時系列を作成してみます。全部を一つに統合する事は難しかったのでとりあえず大きく二つに分けてみました。
続いてクシナダに関する時系列です。
………………如何でしょうか。穴があるのは十分に承知しておりますが、ひとまず自分にできる限り情報をまとめてみました。
上から順に見ていきましょう。まず最初に出てくるのは大日孁貴・国津神須佐能の姉弟です。大日孁貴は日本書紀での呼び名で古事記では同一の存在が天照大御神と呼ばれています。そうです、高天原の頂点に君臨する太陽神にして伊勢神宮の主祭神にもなっているあの神様です。とんでもないビッグネームを持つ竜種が出てきました。対する国津神須佐能はその弟神である建速須佐之男命がモデルですね。こちらも八岐大蛇(この表記は日本書紀)退治で有名な、むしろ知らぬ者の方が少ないであろう荒ぶる神様です。ちなみに大日孁貴と書いてオオヒルメノムチと読みますが、これは末尾に付した参考文献によると<偉大なる日る女の尊>という意味だそうです。<日る女>とは日の女、すなわち日の神の巫女。この巫女は日の神と同一化していると解釈されています。
天照大御神と建速須佐之男命は、残る一柱・月読命と合わせて三貴子と呼ばれる特別な神々です。黄泉の国から帰ってきたばかりで全身穢れでばっちくなった父神・伊邪那岐命が、「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原」という場所で禊ぎを行った際、左目を洗った時に成ったのが天照大御神、右目を洗った時に成ったのが月読命、最後に鼻を洗った時に成ったのが建速須佐之男命と言われています。
大日孁貴は現代においてはヤマカガシ人爬と名を変えており、かつて地上で卑弥呼と名乗っていた過去があります。どうやらカニ人ワールドにおける古代日本では邪馬台国は人竜族によって支配されていたようです。一応史実では卑弥呼には弟がいて姉の代わりに政務を取り仕切っていたようですが、類推するに恐らくカニ人ワールドにおいても実務は国津神須佐能が担当していたのではないでしょうか。姉にあごでこき使われてげっそりしている様子がありありと目に浮かびます。
「国津神須佐能」という名前も気になりますね。なぜなら実際の(我々の現実次元における)記紀神話では建速須佐之男命は国津神ではなく天津神だからです。ちなみにアマツカミ・クニツカミの「津=ツ」は現代語でいうと「〜の」を意味します。天津神とは大日孁貴=天照大御神を主宰とする高天原系の神々を指す言葉であり、対して国津神とは大国主命を筆頭とする日本の国土に元々住んでいた土着の神々の事を指します。本来天津神系である建速須佐之男命に由来するキャラに国津神と名付けたのは何らかの意味がありそうです。
※ここは私の認識が間違っていました。建速須佐之男命は天津神→国津神になったという説がある他、そもそも建速須佐之男命の子孫を国津神とする等の見解もあるようです。調べが足りませんでした。お詫びして訂正します。
そして鬼竜種。このワード、確か初出ではないはずです。昔カニ人がTwitterでアロワナ人魚ちゃんの話をしていた時に「陸には鬼竜種という種族がいてその末裔が淡水人魚族」みたいなニュアンスの事を言っていた記憶があります。実際には淡水人魚族の祖はミズグモ社長=アラクネでありアラクネは陸竜種という種族だったので上記の設定は消えているかもしれませんが、陸竜種=鬼竜種の可能性はありますし、虫の国に出てきた虫竜ちゃんの一人がミズグモ社長の血縁者の可能性がありますので、こちらは今後の展開を待ちたい所です。
ミズグモ社長
アラクネ
虫竜ツチグモちゃん
続いてアシナズチが開発した鬼術と呼ばれるもの。これはヤマカガシ人爬ちゃんが使う鬼道のベースになったものだそうです。後述しますが古代の地上世界においてアシナズチの妻テナズチは鬼竜種である大日孁貴・国津神須佐能の持つ特別な力を欲しがっていて、アシナズチはこの姉弟を研究していました。鬼術とはその研究の成果として開発されたものではないかと思われます。具体的にどういう術なのかは不明ですが、カニ人ワールドにはそのものズバリ「鬼」という種族がいて、それと他種族との混血個体も複数確認されています(人鬼人の阿比古、人鬼人と人魚のハーフであるドンノラボーイ)。
恐らく鬼という種族にまつわる何らかの固有能力があるのでしょう。同じ異類から見ても超常的なパワーなのか、不死身の再生能力なのか、隠形なのか、あるいは「アンデッドガール・マーダーファルス」のような異類限定の直死の魔眼的な効果なのか、実際のところは描かれていないので窺い知れませんが。
ちなみにこれは全くの余談ですが、ヤマカガシ人爬ちゃんが初登場した頃、「鬼道」という単語からカニ人ワールドにすでに同じ名を持つ種族がいる事に思い至り、「鬼道というのは鬼の力を引き出したり体の一部を鬼に変えたり、あるいは鬼を操る事ができる力というのはどうだろう?」などと妄想して古代邪馬台国を舞台にしたヤマカガシ人爬ちゃんと弟(普通のニンゲン)との血みどろアダルティック短編小説のプロットを書いたりしていたのですが、そちらは残念ながらお蔵入りになりました。
さてお次はテナズチです。「やまたのおろちが国家転覆を企んでいる」。昔の貴族が政敵を蹴落とす時に用いる讒言みたいな事を言って大日孁貴を唆します。この時点ですでにやまたのおろちちゃんは地上世界にいて、その実力は大日孁貴、テナズチ双方に脅威だと認識されていたようです。ここで気になるのはやまたのおろちちゃんがテナズチの話に乗ったという点です。カニ人スケッチの説明文では彼女の性格は「正義感が強く真面目一辺倒で融通がきかない」とされていますから、単純に「国盗りしようぜ!」と誘っただけでは乗ってこなかったと思います。正義感が強い相手をその気にさせるにはどうすればいいか。パッと思いつくのは潰し合わせたい相手の非道さ・悪辣さを殊更に強調してやる事でしょうか。苦しむ民を救い、誤った世を正せる「正義の体現者」が必要だと力説してやるのです。私だったら多分そうします。やまたのおろち討伐隊としてテナズチ・アシナズチ夫妻の娘クシナダが須佐能に同行しています。この時点で大日孁貴がクシナダの異能の存在を知っていれば100%弟に同行させる事はなかったでしょうし、それどころかテナズチの言動に裏がある事に確実に思い至るでしょうから、ひょっとするとテナズチらは自分たちが異類である事すら巧妙に隠していた可能性がありますね。アシナズチの術か何かで。ゲーム的に表現するならば自身のステータスを隠す術でも身につけていたのでしょうか。
須佐能がやまたのおろちと対決した場所は記紀神話の通りなら古代の島根県斐伊川の辺りでしょうか。両者の間でどういう戦いが繰り広げられたのかは分かりません。竜種と竜種の本気の激突があったのか……あるいは記紀神話をなぞり、素の実力では勝ち目がないと悟った須佐能がやまたのおろちちゃんに酒を振る舞ってベロンベロンに酔わせた上でボコボコにしたのか……いずれにせよやまたのおろちちゃんが尻尾を失い、須佐能が天叢雲剣を手にしている事から戦いは須佐能の勝利に終わったものと思われます。しかしカニ人のスケッチではテナズチの企みは失敗し夫婦共々アガルタに逃げ帰ってきたとあるので、恐らく須佐能はトドメを刺さず、その後何らかの方法で自分たちが騙されていた事を知ったのでしょう。クシナダも能力を使う事なく須佐能の妻となっています。自分が騙されていた事を知った大日孁貴はさぞかし激怒したでしょうね。想像するだけで怖いです。こうしてテナズチの地上での陰謀は頓挫する事になります。
その後、舞台はアガルタに移り、ヤマカガシ人爬と名を変えた大日孁貴は爬の国の国盗りを目論んでいます。彼女はなぜアガルタに戻ってきたのでしょうか? 邪馬台国は? 戻らざるを得ない理由があったのか、あるいは単に飽きたのか……様々な理由が想像できますが真相は不明です。とにかく彼女は地下世界に戻ってきました。後述しますが弟の須佐能とその妻クシナダも一緒です。ヤマカガシ人爬はどこかの時点で鬼術をベースにした鬼道という術を開発しています。大日孁貴・国津神須佐能姉弟の持つ鬼竜種の特別な力をベースに開発された鬼術をベースに鬼竜種である大日孁貴自身が開発した鬼道……もう何が何やら分かりませんが、とにかくヤマカガシ人爬はこれを用いて国盗りを企んでいます。メンタルは完全にテナズチと一緒です。似た者同士です。当時爬の国を治めていた大魔王黒蟒はこれにより精神崩壊に追い込まれていると考えられます。犯人は明言されていませんが私はヤマカガシ人爬がやったのだろうと推測しています。根拠はいくつかありますが、まず何より彼女が国盗りを目論んでいるため統治者である黒蟒は真っ先に排除したい対象であろうという事、そしてカニ人スケッチによると黒蟒は「大昔に闇討ちに遭い凶悪な幻術をかけられた」とされている事。鬼道のベースである鬼術は幻術を得意とするアシナズチによって開発されたものです。よってその発展形である鬼道が幻術寄りの技術であったとしても不思議ではありません。アシナズチ本人は隠棲しているらしいので容疑者からは除外、テナズチは再起を図っているので可能性はありますが、現時点では本人の能力が不明なのとかつて敗北したヤマカガシ人爬がいる爬の国中枢では目立った動きは取りにくいだろうと思いこちらも犯人候補からは除外しました。「大昔に」という文言が若干気になりますが、カニ人ワールド住民の平均寿命はニシオンデンザメ級に長いためこの「大昔」というのがどのくらいのスケールなのかは分かりません。なのでとりあえずはヤマカガシ人爬に絞っても良いのではないかと考えています。
クシナダ関連については色々とぶったまげました。まずは何おいても須佐能の妊娠・産卵です。初めてスケッチの説明文を読んだ時は素で二度見しました。カニ人ワールドにおける人気投票パワーの凄まじさには冗談抜きで戦慄すら覚えます。「できるか、できないかは聞いてねえ。産むんだよ」という事です。身体構造的に不可能などという甘ったれた道理は人気投票の前にはまるで無力。まさに狂気のコンテンツ。カニ人の醍醐味ここにあり。卑弥夫ちゃん、八勾十くん、生まれてきてくれてありがとう。おめでとう。大日孁貴は酔った勢いで弟の子供に名付けないように。嫌なゴッドファーザーだな。そして須佐能はお姉さんの言うことなら何でもハイハイ聞かないように。絶対に将来恨まれるぞ。2024年はNoと言える竜になろう。
クシナダの異能もまた強力ですね。「相手の固有能力を奪った上で絶命させる」。「羅小黒戦記」に出てくる風息の異能の凶悪版みたいなものでしょうか。奪った異能は複数ストックできるのか、それとも一つしか保持できないのか気になります。この能力を自分たち以外が利用する事のないように、テナズチ・アシナズチはクシナダに呪いをかけていました。副作用は記憶に異常をきたす事。そのせいでクシナダの記憶は須佐能と会ったばかりの頃をループし、精神の成長が止まってしまいます。この呪いが最初からかけられていたのか、それともテナズチの企みが頓挫した後にかけられたのかは不明です。不測の事態が起きた場合に備えて予めかけておいた可能性もあります。クシナダの種族は祖竜ですが後ろに変異体という文字が付きます。すなわち真っ当な祖竜ではないという事ですが、そもそも真っ当な祖竜というのがどういうものか我々には分かりません。突然変異みたいなものなのでしょうか。結局クシナダにかけられた呪いは彼女が産卵する事によってその子へと受け継がれ、彼女自身は呪いから解き放たれます。しかし解呪の副作用として体が若返ってしまい童女の姿に。記憶も欠損しているため夫である須佐能の事は微かにしか覚えていません。須佐能家には子供が三人いる事になり父親である須佐能は男手一つで彼女らを育てています。頑張れ須佐能。
さてクシナダの呪いを受け継いだのは彼女が産んだ八勾十くんです。息子である彼には母の異能が遺伝しているので、その異能を抑制する呪いもまた転移したものと思われます。しかし転移の際に呪いが変質しており、精神は通常に成長する代わりに肉体の成長が止まってしまいます。「ドラッグオンドラグーン」のセエレとか「戯言シリーズ」ネコソギラジカルまでの玖渚友のような感じです。そしてどうやら変異した事により呪いはまともに機能しなくなっているようで、今後何らかのきっかけで「相手の固有能力を奪い絶命させる異能」は発動する可能性があるとされています。これは解呪された母クシナダも同様です。彼らの存在がアガルタのどこかに潜伏しているテナズチや国盗りを企むヤマカガシ人爬に知れたら間違いなく争奪戦になるでしょう。また彼女らだけではなく、現在爬の国の実権を握る武家の九頭竜権現や、その九頭竜権現と対立し公家に肩入れするやまたのおろち、反体制派や爬の国と敵対する虫の国等の国家など、どの勢力にとっても切り札になる可能性があります。願わくば争いとは無関係な場所で平和に暮らしてほしいと思いますが、カニ人ワールドは思いのほかシビアな所があるので油断はできません。
…………というような形でダラダラと考察まがいの文章を書き連ねて参りました。本当ならもっと沢山の参考文献を使って分析を施したかったのですが全然駄目でしたね。そもそもテナズチ・アシナズチや大日孁貴を扱うのに古事記も日本書紀も手元にないというのが問題でした。次に同じような記事を書く機会があればもっとしっかりやりたいと思います。ああでもない、こうでもないと妄想しながら書いていると思いのほか字数を使ってしまいましたが、しかしそこがカニ人ワールドの楽しさでもありますね。開示される情報が断片的なので、受け手側がそれぞれの想像を膨らませる余地がある。カニ人の記憶共有システムに似ているかもしれませんね。あれも確か断片的なイメージしか流れてこなかったはず。そういう意味ではカニ人というコンテンツを楽しんでいる我々ヘンタイニンゲンも、いつのまにかカニ人という巨大なシステムの中に取り込まれていると言えるかもしれません。カニ人ワールドにはまだまだ謎が沢山あります。コンテンツを追いかける事で解ける謎もあれば解けない謎もある。むしろ話が進むたびに新たな謎が十倍くらいに増える事もあります。でもそれが楽しいのです。コンテンツ誕生から五年の歳月を迎え、カニ人の冒険はまだまだ続いています。界隈では新しい人虫ちゃんの登場ラッシュに沸いているでしょう。カニ味噌氏も「虎鶫」の連載を終えられ、次の作品の準備に取り掛かっているとか。くれぐれも──いや本当にくれぐれも健康には気を遣って頂き、願わくばいつかカニ人の図鑑が出版される事を……漫画化……あわよくばアニメ化……いっそ本当に人類が滅亡するまで続いて欲しいと願いつつ、この記事もそろそろ終わりにさせて頂きたいと思います。このような個人の考察を最後まで読んで下さって本当にありがとうございました。ここまで読んで下さったあなたは立派なヘンタイニンゲンだと思います。それでは最後はこの言葉で締め括らせて頂きたいと思います──人類は滅亡する。
【参考文献】
子安宣邦「〈古事記〉講義──「高天原神話」を解読する」作品社 2022年
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