狼に翼を#5‐2:決意

 姫、看守、家来。看守は上手側から登場。姫、家来に連れられて中央扉より登場。(この際の姫の気持ちは? 恐怖、憎しみ、怒りetc)

 家来「さあ、早く入れ! お前にとって良い報告が聞けたな。しかも、王の口から直接聞けるなんてな。お前は恵まれてるよ。もし俺が王なら、お前を殺しはせずに、無理やり妻にしていただろうな。だが我らの王は人の死を好む。名誉なことだと思え」

 姫「(睨みつける。)貴方の言葉など、聞きたくありません。私は逃げたりはしない。たとえ手錠や鎖が消え去っても、これが私の運命ならば受け止めるでしょう(声は大きめ、語尾が震えるといい? 恐怖表現)」

 家来、姫を舞台中央へ蹴り飛ばす。(中央に倒れる)家来中央扉より退場。

 姫「(床の砂を握りしめ)私は逃げたりしないわ。ええ、逃げたりはしませんとも。たとえ、たとえ処刑台の準備が整い、牢の扉の音が私にのしかかろうとも!(→強がり、手を震わせる?)この国の人々が煽る声、兵士の剣の音、そして、首の血を欲する刃の煌めきが私を怯えさせたとしても!(血を欲する刃→ギロチン処刑の意)なぜなら私は、私は姫であるからです。恐れてはいけない。最後の最後に至るまで、私は我が国の姫であるべきなのです。きっと、きっと上手くいくはずです。(見上げる)全ては、(/一呼吸置く。後のセリフに含みを持たせる)あの方のため。全ては国民のため、故郷が再び力を得るためです。(深呼吸)ただ、ただ一つの気がかりは、私のついた嘘。最後まで明るみに出ないようにと願いながら、どうか明らかにされてほしいと願うのです。この嘘が罪だと言うのなら、私が死ぬのもきっと定めなのでしょう。森の中の茨も、私の胸を絞め殺してしまうことでしょう。(この辺りから声震えさせはじめる?)もしもこの先、輝かしい未来があると言うのならば。私の死が、晴れやかで透き通った未来を引き連れてくるとしたら。それを目に映すこともしないままこの世を去る私を、美しい花々で弔ってはくれないでしょうか。それだけが、ただそれだけが私の望む全てなのです」

 姫、泣き崩れる。(恐怖に耐えられない、我慢の限界)

 姫「あの方は、あの方はもう一度来てくれるでしょうか。この哀れな私に、もう一度夢を見せてはくれないでしょうか。(窓を見上げる)あの隙間から聞こえた声が、まるで私を締め付けた茨を切り裂くようでした。いつ壊れるのか知れぬ橋を渡り、我が身も捨てて私に手を差し伸べたあの人に、最後にもう一度会えないでしょうか。あの人は、もう二度と会えなくなることを、知ってはいるのでしょうか。ああ、もう既に処刑台に上がるために靴は脱ぎ捨てたというのに!(覚悟は決めていた、「あの人」にもう一度会いたいと願う)今になって体が震えるのは、あの声のせいです。あの方にだけでも、真実を伝えることが出来たなら! このまま太陽と月のように、交わらぬままこの命を終えることが、私にとって一番恐ろしいことなのです」

 姫、静かに座り込む。ぱたぱたと水の滴る音がする。微かに鳥の鳴き声。

 姫、真ん中の扉より退場。看守、舞台上手側より退場。

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