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DROSのフィナンシェが食べたい週末

金曜日、妻が会社の同僚からDROSのフィナンシェを貰って帰ってきた。

これ
ぱかっ

DROSという洋菓子ブランドを知らない人も多いと思う。なぜならDROSはまだ東京駅にしかお店を出していない上にオンライン販売もしていないので、今のところ実際に東京駅に買いに行くしか手に入れる方法がないのだ。妻の同僚、プレゼントのセンス良すぎないかマジで。

このフィナンシェがとにかくおいしそうなんである。バターの風味と百花蜜の甘み、香ばしいヘーゼルナッツに加えて、そこに濃厚なゴルゴンゾーラチーズを使っている(とサイトに書いてた)。ゴルゴンゾーラってあれか、あの青カビの入ったちょっと臭くて塩気のあるやつか。あれを甘いフィナンシェに入れるとどうなっちゃうんだろう。ドキドキする。

さらにDROSのサイトにこのようなことが書いていた。

チーズの芳醇なコクと、ほのかな甘味。
木の実の華やかな味わいと、太陽のかおり。

ひとくち食べれば、みんなうっとり、
甘美な甘美なマリアージュ。

そのおいしさに誘われて、
鳥や動物、人間たちも集まって
今日も どこかで楽しい宴が始まる。

THE DROS(ザ・ドロス)
魅惑の味わい、神様からの贈り物。

DROS公式サイトより引用

なんとDROSは神様からの贈り物なのだという。旧約聖書に神様はエデンの園で人類に種を持つ草と果物を与えたとあったが、なんとDROSのフィナンシェも与えてくれていたとは!人間だけでなく鳥や動物までうっとりしちゃうおいしさということ?これは食べたすぎる。

だいたい私はフィナンシェ自体けっこう好きなんである。ふわっと甘いフィナンシェを一口かじる。苦いコーヒーを一口すする。かじる、すするを繰り返したところ、あら不思議。カフェイン何倍でもとれる有様。むしろ永遠にその作業だけで生きていたい。時給発生するならそういうマシーンになってもいい所存である。


土曜日、妻がこどもたちを水泳教室に連れて行ってくれた。私は家にひとり。モス(飼い猫)が何やらガサゴソやっていたので、何かと思って取り上げたらDROSの紙袋だった。目の前にDROS。食べたい。しかし妻に内緒で勝手にこれを食べた場合、家庭が冬の日本海より荒れることは間違いない。誘惑に負け先に手をつけるのは善良な夫としてどうかと思うので、ここは妻の許可を取るまで待つことにする。

夜になり、風呂上がりの妻にそれとなく「あったかいお茶淹れようか?」と言ってみた。お茶菓子としてDROSのフィナンシェを一緒に出すという作戦だ。しかしここも「今暑いからムリ」と言われてしまう。ううむ、タイミングが違ったか。DROSのフィナンシェ……とムニャムニャつぶやきながらその日は寝る。


そして日曜日、午前中に今だ!と思ってここは直球で「DROSのフィナンシェ食べない?」と妻に声をかけた。回りくどい言い方はもうやめた。食べたい気持ちをストレートに伝えることが大切だ。すると妻は「うーん、午後のおやつタイムにしようよ」とのこと。ここで無理に押して機嫌を損ねても良くない。午後か、まあ楽しみにしておくか。

ところが午後になり、こどもたちが「ターザン公園に行きたい」と言いだした。ターザンロープの遊具があるのでそう呼んでいるのだけど、歩くと少し遠くて車で連れて行かねばならない。まあ公園日和だし行きますか~と車を出すも、私の心は「ああ、DROSのフィナンシェを食べるタイミングが……」と思っていた。

ごはんつくろう~
はい、DROSのフィナンシェ
いただきまーす!

……いかん、DROSのフィナンシェの幻覚が見えてきた。もう心がフィナンシェに侵食され夕飯をつくる気持ちではなかったので、帰りにスーパーに寄り、今日はお菓子でもなんでも好きなものを食うぞ!という日にした。

わが家は月1くらいでこういうチートデイを開催する。昔読んだ本で、育児は死なせなければOK、栄養バランスは一週間で組み立てればよいということが書いてあり、それ以降やる気のない日はお菓子でもなんでも好きなの食え!という日をつくることにしている。ということで夜、大人たちは適当に酒とつまみを食べ、こどもたちはお菓子をおおいに食べた。もちろんDROSのフィナンシェは食べれず、涙で枕を濡らして眠った。


そして今日、朝から夫婦共に働き現時点でまだDROSのフィナンシェを食べることができていない。妻はソファで寝てしまっているのでもう今から食べられる可能性は絶望的だろう。

初めから家になければここまで心を奪われることはなかったが、あると意識してしまう。神の試練とはこうも厳しいものか。遠くて近きもの。極楽、舟の道、男女の仲、DROSのフィナンシェ。嗚呼。

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