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親子で「虫の命」を考えました

我が子に命の大切さを教えたい親にとって、虫は天敵です。

「虫の命」も大切にしていますか?

つい言葉に詰まります。

そんな「虫の命」から、命の大切さを感じ取っていく息子に、温かい気持ちになりました。


「虫の命」は矛盾がいっぱい!

俳人小林一茶の俳句に、次の句があります。

  「やれ打つな 蝿が手をすり 足をする」

「蝿のような小さな存在でも、手や足をすり合わせて命乞いしているのに殺すなよ」という意味だとか。

蝿を見ながら息子にこの句を紹介した後、その蠅をハエ叩きで追いかけ回しました。

残念ながら、母は虫が好きではありません……

そして息子も、親と同じで虫が苦手です。
苦手というより、怖がっている様子。

小さな虫が部屋にいだけで、「虫がいる!虫がいる!とって!!」と大騒ぎしています。

それでも時々見せる、「虫の命」を思う行動や一言には、はっとさせられます。

お母さんの趣味と「虫の命」、どっちが大事?

コガネムシの幼虫とは?

コガネムシの成虫

コガネムシの幼虫は、カブトムシの幼虫に似ています。
ちょうど一回り小さくしたような姿です。

しかし、立派な害虫です。

野菜の根を食べ、成長を邪魔します。
大量発生すると、野菜はもちろん樹木をも枯らしてしまうほど。
小さいながら、手ごわい相手です。

わが家は、小さな家庭菜園といくつかの鉢で野菜を育てています。

その年、収穫の終わったきゅうりの鉢には、コガネムシの幼虫が山のようにいました。
数えてみると、一鉢になんと50匹以上!

次の野菜を作るためには、何とかして駆除したい!
農薬は使いたくないので、一匹一匹つぶすことにしました。

コガネムシの幼虫はかわいい?!

コガネムシの幼虫

この年、幼稚園ではカブトムシの幼虫を育てていました。
毎日のお世話は子どもたちの役目です。

ここで問題となったのが、コガネムシの幼虫の見た目です。

そうです。
カブトムシの幼虫とよく似ているのです!
小さなカブトムシの幼虫のようにも見えます。

息子にとっては、毎日世話をしたかわいい相手のそっくりさん。

つぶされるコガネムシの幼虫に、息子は我慢できませんでした。

息子「なんでコガネムシの幼虫をそんなに殺すの?」
母 「だって、いたら野菜を全部食べられちゃうよ。
   お母さん、大切に育てた野菜が枯れたら嫌だから。」

毎日、うちの野菜を食べている息子は、これで分かってくれると思いました。
しかし、息子の反論は続きます。

息子「お母さんは、趣味で野菜を育てているのでしょう?」
母 「でもその野菜を、毎日食べているでしょう?」
息子「だって、野菜はお母さんが育てなくてもスーパーで買えるよ!」

そして、ついに一言。

「お母さんの趣味とコガネムシの命、どっちが大切なの?」

はっとしました。

日頃、命は大切と教えているのに...…
大量の幼虫の死がいを前に、なんと答えていいか分かりませんでした。

虫は殺しても良い生き物。
そう、考えていたことに気付かされました。

野菜を作らなければ、生活に困る訳ではありません。
確かに趣味です。

趣味と「虫の命」をてんびんにかけると...…

何年もたった今でも、答えは出ていません。

なめくじに塩をかけてみたら...…

息子が2匹のなめくじに塩をかけ、なめくじを死なせてしまったことがありました。

なめくじと塩

畑の土から、なめくじが見つかりました。

なめくじに塩をかけると、小さくなって消えてしまうと聞いた息子。
家に飛び込んで、塩を手に持って出てきました。

そして、ワクワクしながら、2匹のなめくじに塩をかけました。

人間やなめくじを含む生き物は、多くの水を体の中に持っています。
大人は身体の50~65%、生まれたばかりの赤ちゃんは約75%が水です。
なめくじは、なんと90%が水なのです。

さらに、なめくじには人間のような皮膚がありません。
「半透膜」とよばれる薄い皮があるだけです。

そんななめくじに塩をかけると、何が起こるのでしょうか。

「半透膜」に塩がかかると、体の内側と外側を同じ濃度にしようとします。
そして、体の中の水が出て行ってしまうのです。

水が出てしまったなめくじは縮み、そのまま死んでしまうこともあります。

その後の行動と心の変化

塩をかけた息子は、その後、じっと観察していました。

初めのうちは、興味深そうに見ていましたが、段々と色が変わり、体が小さくなり、ゆっくりと動かなくなっていきます。

その様子を見るうちに、自分がこの2匹を死なせてしまうのだと気付いたようでした。

「動かなくなっちゃった。死んじゃうね。」
そういった後も、じっと見つめています。

自分が死なせてしまうから、その時までしっかり見ていることにしたそうです。

じっとなめくじを見ている背中から、時々鼻をすする音が聞こえました。

観察しているうちに、愛着がわいてきたなめくじたち。
土をかけてあげたり、ときどきやさしくつついたり、動くかどうか確認していました。

少しでも楽にしてあげたい。
そう思っているように見えました。

そんな時、もう一匹なめくじが見つかりました。

「もう塩はかけないよ。」
と話しながら、前のなめくじと一緒に、土の近くに移してあげていました。


矛盾を抱えて

「虫の命」を考えた時、「命の大切さ」はとても矛盾を抱えた問題に変わります。

私たちは、「命は大事」と教えながら、虫を気軽に殺します。
息子も虫が苦手なので、普段は気にしていません。

しかし、「虫の命」の大切さを突き付けられる出来事に、突然出会います。

矛盾のない行いをしたいと思います。
しかし、虫は嫌いなのです。

やはり、「虫の命」は矛盾だらけ。

これからも親子一緒に、向き合っていこうと思います。


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