太陽の下で。

要点:真昼の眩しさ。アスファルトの照り返し。白昼夢が呼び覚ます回帰への意志。

真昼の日差しが熱を帯び始めると、J・G・バラードの終着の浜辺、あるいはロッド・サーリングの真夜中の太陽に類似した、非日常への入り口がすぐそばに潜んでいる予感がする。

熱せられた都市は廃墟であるべきだった。それもスタティックではない不快に蠢く廃墟であるべきだった。

アスファルトが溶けるタールの匂い。黒いビニールのなかで有機物が腐敗する匂い。アルミニウムに反射する熱。紫外線で焼けていくガラス片。コンクリートとアスファルト、そして文明のごみの山。なんて素敵なんだろう。そこに人間は不要なのだ。都市に必要とされたのは染料が溶け出して原型を失った人形だけだった。

時を遡ると、灼熱が僕らを溶かしていたことがわかる。南中の永遠が始まったとき、口を半開きにして太陽を見上げていた僕らは、都市の魔力によって、皮膚を失い、細胞壁を失い、一筋の流れに溶けていく。流れ出した液体はアスファルトの割れ目を伝い、側溝に落ち込み、下水を通って海に帰っていく。いつか祖先が上陸したのとは逆の推移を辿って、今度は海の中へ揮散していく。大海に溶け出した赤い血はすぐに見えなくなっていく。

僕らは識別信号を失っていくのだけれど、何故かとても気持ちが良かった。僕らはもう境に怯える必要がなかったし、過去と未来に囚われる必要もなかった。

永遠となった今の断面で、いつまでも泳いでいたいのだ。


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