辻村深月「冷たい校舎の時は止まる」登場人物の備忘録
辻村作品を読むのはこれで8作品目。
ぼくのメジャースプーンあたりから登場人物への愛が溢れてしまい、遅ればせながら残していきたいなと。
ロードムービー、光待つ場所への拝読に向けて。
登場人物への印象
【片瀬充】
精神的に弱い子の、いわば「保険」にされる感じの子、居るよね。。
「自分は優しいんじゃないよ、ごめんね」みたいなやりとりの中で、すごいいい表現があったのだけど、早く読み進めたすぎて飛ばし呼み&メモ取り損ねた。。
あと猫に話しかける感じ、超共感。
【清水あやめ】
どんなコミュニティでも一人は居る、こういうお方。
何をやっても1番になる、しかもそれを本当に心から鼻にかけてなくて、心底他者を尊敬している人。
個人的には、何故清水さんだけマネキンではなく絵の中に描かれたのか、、?と思ったり。(このことにすら意味があるのかと訝ってたけど、これは最後まで伏線回収なく)
【藤本昭彦】
沢口くんとのエピソード。。
いじめに加害はしてなかったんだけど、そこまで気にも留めてなかったが故に、もっと自分に何かできたのではと自分を責めるという、これもすごいあるある。
いじめ加害する中心人物の取り巻きって、根はすごい優しいのにその中心人物に自分がいじめのターゲットにされないように、とか、もっと好かれたい、とかって理由で同調してしまうケースが多い。悪ノリでからかいに同調してしまった経験は私個人は何度もある。昭彦は同調もせず、ハッキリと自分の意見を言えていただけでも十分に立派な人だと個人的には思います。
【佐伯梨香】
勉強ができるが故に進学校に入って、でもオシャレだったりノリだったり趣味だったりが周りの子たちと合わないって感覚を持つ子、私の学校にも少なからず居ました。
それこそ私の高校時代の友人は「学校馴染めない!早く大学生になって、教師に文句言われず髪染めたりピアスあけたり化粧したい!」をモチベーションに、某大学に高3上がるタイミングで飛び級してた。能力のある人のこういう時のモチベってバカにならない。
そして優秀な子=家庭環境もだいたい良いから、余計に周りと分かり合えないというか孤立していくことも多いだろうなと。私も似たところがあったので共感。
【桐野景子】
まず話し口調がカッコいい。これで顔まで綺麗なんて憧れてしまう。。
『自分は常にクールで居ないと』と自認していた中で、唯一の自分の理解者だと思っていた家庭教師から「桐野景子なんだからそんなことくらいで、、」と突き放されたことにショックを受けた話。
あー、でも私も褒め言葉として、そういうことって平気で言ってしまうのかもしれないとは思った。カッコいい、とか、憧れの気持ちから発言していることでも、本人にとってはショックを受けてしまうこともあるんだなと。
【辻村深月】
うーん、めっちゃごめんなさい、『弱い』深月の方、個人的にはすごく嫌いな人種だった、、。
友達から除け者にされて、悪口とか言われて自分を責める人って居るってよく聞くけど。相手への反骨心ゼロで「ごめんなさい。。」ばかり考える人って、一体どんな善人なの?となる。よく言えば自責思考、悪く(?)言うと自分が悪者になりたくないだけなのかなと。
私も昔、いじめというほどではないけど一時期無視というか除け者の対象にされたことがあった。最初の頃は悲しい気持ちだったけど、「何故この人はそうするのか」を考えた時に『あぁこの人は片親だから精神的に未熟で人間がまだ出来上がっていない人なんだな』『あぁその腹いせを私に対して向けてるんだな』と、嘘かホントか分からないような仮説で自分を納得させたことがあった。
これが正解とは思わないけど、心の弱さがいじめっ子の感情を煽るケースもあると思うので、つけ上がらすなよ!嫌いになれよ!自分のやったことの罪わからせろ!っていう昭彦•鷹野の気持ちがむちゃくちゃよく分かった。。
ただ最後の角田春子さんに当てつけのように自殺されたのは本当に可哀想だった。仮に手紙のことを言ってたとしても100%深月は悪くないけど、それでも直前のことだったからというので本人が責任を感じるのは当然よね。んー、これが辻村さん本人に実際に起こった話ではないことを祈るばかりです。
【鷹野博嗣】
リレーで清水さんからバトン受け取った後のくだり。
いや後輩に手振ったのもすごいけど、それを鷹野がした意図まで汲み取った清水さんヤバい。
深月とのやりとりよりこっちの方がだいぶ印象強く、鷹野という人間を体現してるシーンなのかなと思いました。
あと他メンバの回想に比べて鷹野の回想少なかったような。。ヒロちゃん(HERO)とのやりとり、鷹野viewでもっと読みたかったな。
【角田春子】
被害者と加害者の逆転っていう表現。
うわーーーピッタリすぎるーーーとなった。
かつ本人(辻村深月)にダメージを与えるには最も効果的な方法やったと思います。
角田さんのやったことは、自分勝手すぎて真顔。でも勉強も何もかも上手くいかなくて、それでいて自分の目に偽善者ぽく映る友人がすごい色々上手く行ってると、妬む気持ちは分からなくもない。
今から思っても、高校生って世界が狭いから、他者と比べて勉強!部活!友達!恋愛!家庭!っていうこの5つのパラメータがうまくいくかいかないかみたいなことで生きるか死ぬか考えちゃうとかって短絡的な発想に至ってたな。私も。
この構図は大人になってからも部活が仕事に置き換わるだけで、大きくは変わらないのかもしれないけど、もう他人と比べ出したらキリがないほどの小さいパラメーターが増えるから(e.g. やれあの子の家は金持ちだけど親の愛情が薄かったみたいだ、やれあの子は顔が可愛いけど仕事できないからトントンだ、とか諸々)もう最終的に『どの家もどの人もいろいろある。自分だけが特別不幸ではない』って結論に至るような気がする。戦う相手は自分自身。
清水さんの絵が文化祭のポスターになってることをクラスメートが陰口叩いてたのを角田春子が庇ったシーン、今から思えば自殺した当日ってこと?あー、なんか心情変化があったのかなとか、こんな風に(今更)正義を宣う自分への嫌悪が募った結果やったんかなとかそんなことも想像しました。
総評
名前探しの放課後と重なる部分が多く(自殺者を探し当てる、登場人物のキャラ、タイムスリップ設定とか)、読み始めは既視感でしかなかったけど、読む進めるとやはり辻村さん。どっぷりハマってました。特に下巻は1日(6時間くらい?)で読んでしまいました。。。
読んでて楽しく、それぞれの人物に自分を重ね合わせ、↑のようなことを考えるきっかけをもらいました。読書は心を豊かにする、最近本当にそう思う。
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