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桜の下で本を読む

4月1日。
土曜日だけれども年度はじめの日だからでしょうか、それとも晴れて暖かい日だったからでしょうか、なんとなくなにかが変わったような、身体に力が戻ってきたような、そんな感じがしました。先週1週間の重だるさが嘘のようです。
それで、買い物を終えてひと息ついた午後、読みさしの本をかばんに放り込んで、もう一度外に出てみました。
近所の緑道が整備工事を終えたようだったので、外の風に当たりながら本を読むのもいいかもしれない、そう思ったのです。

大きな木立がほとんどなくなって、日差しがいっぱいにふりそそぐ明るい道をゆっくりと歩いていくと、ふと、白い花をつけた木に目が止まりました。
なんだろう、桜?
それにしては花が大きいかな?
でも蕾とか、やっぱり桜に似ているような?
近づいてぐるりと回りながら見上げると、青々とした空に白い花がよく映えて、とても素敵です。

桜ではなく、正解はヒメリンゴ。

さて、外に出たのは緑道のどこかで本を読もうと思ったからですが、数少ないベンチには先客がいて、自分も座るにはちょっとスペースが足りません。ついでに言うなら、木立を取り払ってしまったので、少し風情に欠けてもいます…
しかたない、散歩がてら別の道を通って帰ることにしよう、そう考えて一本南側の尾根道をたどってみたら、通りに面したマンションの前に桜の木があり、しかもお誂え向きにベンチもあったのでした。伸びた枝が日差しを適度に遮って、本を読むのによさそうです。
さっそく腰をおろして、本を取り出しました。

ゆるい風に吹かれながら一時間くらい、そこにいたでしょうか。
今日くらいの日差しは身体にも心にもいいのかもしれません。
年明け以来の悩みごとはあまり進捗がなくて、気持ちは浮き沈みを繰り返し、ずっと鬱々としていたのですが、はらはらと散る桜の中で思いました。
いつまでそうしているつもりなんでしょう? 
先々の不安にとらわれて、過ぎたことを後悔して、その中でだけ生きていくとでも言うのでしょうか、この先ずっと?
まだ自分が思うような解決にはいたっていないし、不安は消えていないけれど。
でも自分はちゃんとこうして生きているじゃないですか。…十分じゃないですか。

家の中でひとりきり、考えすぎて煮つまってしまったのかもしれません。
晴れた日には外に出よう。
日差しを浴びて、風を感じよう。
そうしたらきっとまた、気持ちの平衡を取り戻せることでしょう。

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