朝からりんご
無農薬無肥料の野菜を何十年前から作っている浅野さんという方がいる。
今、週に2日ほど働いている古家具やで知り合った方で、
浅野さんは朝の畑仕事を終えたあとに、
毎週土曜日にカフェで出しているダルバート
(ネパールの国民食)を食べにくる。そして、会うとお話をするのだけど
わたしは浅野さんに会えるのを毎回楽しみにしている。
今でこそ世の中にオーガニックというジャンルが認識されてきたけど、浅野さんは世に知られるずっと前から、黙々と無農薬、自然栽培の野菜を作ってきた。当時、農薬も撒かないで野菜を作るなどありえないと思われたし、賛同者も少ないどころか、批難されたりもしただろうに。
自然栽培は
草が生えたり虫や微生物たちが生きている
自然な環境で土を作ることから始める。
土を作るのにまず何年もかかる。
農薬を撒いたり化学肥料は使わない。
自然を見守る、とか適度に保つことは
とてつもない忍耐力と強い精神力が必要なはず。
農薬を使えばコントロールしやすい。
農薬どうのこうのとわたしが言える立場ではないし
実際に作っている現場の方にしかわからないことがあるのは重々承知。
スーパーに並ぶ野菜がどれも形が整っているのも
全部、農薬が使われているからだし
実際にはわたしも見た目が良い野菜を選ぶだろう。
だけど実際に自然栽培の野菜を食べたら、
それが覆った。
見た目が悪くないどころか、美しいのだ。
周りの農家さんからは、あの人はおかしい、あのやり方は変わっていると思われても
浅野さんは自分のやり方を変えなかった。
30年も続けてきた今では、わざわざ東京から習いにくる人がいるくらい
野菜作りの師匠として認められているけど
きっかけは単純に「お金がなかったから」と話していた。
知り合いの運転手など、農業以外の仕事もやっていたらしい。
だけども、香りも見た目も生命が生き生きとする
自分が作った野菜を見て、確信していたはず。
心の底から良いものだと惚れ込み、売れるかどうかよりも、無農薬、無肥料で農業をしていく事に
確信があったから続けてきたに違いない。
浅野さんはおじいちゃんで、髭を生やしていて、
ただ立っているだけで魔法使いみたいに見える。
あれこれ、自分から話はしない。聞けば話してくれる。
楽しかったよ、これ、食べて。芯まで食べられるから。と唐突に頂いたりんご。
芯まで食べられるなんて。本当だった。やわらかい。そして、当たり前に美味しいし、甘い香りが充満する。
やさしい味がした。
もったいなくて少しずつ頂いている。
手作りの新聞紙の包み紙も今でこそ
サスティナブルと言われるが、
元々やっていた人がやると、
格段におしゃれに見える。
カッコいいなぁ。
お読みくださりありがとうございます。