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Dripping

水で膨らんだ風船の腹に
勢いをつけ針を刺すと、
その風船は思い切り破裂し
飛沫をあげた水とともに跡形もなく散り散りになってしまう。

では、風船の脳天やお尻にゆっくり、そっと針を刺せばどうだろうか。破裂するのだろうか。あるいは…

彼の中にあった不安はすでに解けて流れ去っていったようで、ワタシには以前よりも強く優しい温もりを感じることができる。なにかが変わったみたいだ。そうだな。まるでロープの結び目に水分が染み込み、そこにあった遊びが消え、締め付けがキツくなり、この先解けることが一切なくなったような、そんな感じだ。

それでワタシを縛り付けてくれたらいいのに。

それなのに…

会いたいときに会うことのできないもどかしさが
会えるかもと期待してしまった気持ちが
強く刺激を送ってくる管を通って冷たく細く体から滴り落ちていくような感覚に陥る。

風船の柔らかいままのお尻にそれが割れないようそっと刺した針を抜いたら、ワタシの気持ちが体からポタポタと垂れていくみたいに、風船の水も冷たく静かにゆっくりと滴り落ちるのではないかしら。





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