盗撮 おじさん
高校生のとき、ファストフード店でアルバイトをしていた。
いろんな お客さんがいたのだけれど
ひとり、私のことを大好きな おじさんがいた。
って書くと、自意識過剰っぽくて ものすごく恥ずかしいのだけれど
とにかく あのおじさんには 好かれていたと思う。
そのおじさんは 私の出勤時間に合わせて、毎日のように来てくれた。
お店が混んできて、もう1台レジが開いても
私の列から 決して動かなかった。
隣のかわいいバイトちゃんが 「こちらへどうぞ」 と微笑みかけても
頑として 動かなかった。
おじさんの番がくると、注文と一緒に 「いい天気ですね」 などと
当たり障りのない会話をする。
私は営業スマイルで 「いつもありがとうございます」 とテイクアウトの袋を渡し、見送る。それだけ。
あの日。
私はバイトが入ってなかったんだっけか。よく覚えていない。
とにかく、明るい時間に 店から少し離れたところを 学校の制服で歩いていた。
なんだろう、違和感があった。
視線を感じたような気がする。
振り返ると、デカいカメラを構えたおじさんがいた。
いつも お店に買いに来てくれる あのおじさん。
レンズはしっかりと 私のほうを捕らえている。
ファインダー越しに 目が合ったはずだ。
声をかける間もなく、おじさんは逃げた。全速力で逃げた。
それから、おじさんは お店に来なくなった。
撮られたのは あのときだけだったんだろうか。
おじさんは 何を撮っていたんだろうか。顔?足?パンツ??
で、その写真 何に使うの?
よくわからなかったけど、それほど嫌悪感もなかった。
あのおじさん、本当に私のことが好きなんだなー くらいのもんで。
もっとヤバイ人なんて いくらでもいたし。
カメラを始めた今 思うのは
あのレンズ、相当デカかったなって。
300~400mmくらいは ありそうだし、口径も大きかった。
相当どアップで撮れたはず。
願わくは、綺麗に撮れていてほしいなー。
無印の はちみつねり梅を買い占めたいです。