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本とか、映画とか。

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昔から好きな本とか映画とかドラマとかの話
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これは経費で落ちません!が好きだというだけの話

2019年のNHKドラマ「これは経費で落ちません!」という、なんだが凄く地味な雰囲気だけれどとても面白い。多部未華子演じる経理部の森若さんが、経理の仕事を通じて社会の問題をどんどん解決していくという、やっぱりとても地味なストーリーだ。 一見ふつうのオフィス系コメディ(ってな言い方があるのかはよく分からないけど)だけれど、この作品は1話につき一つの、社内の(おおむね)小さなトラブルを解決するという内容になっている。トラブル自体もとても地味だが、作りはちゃんとしたミステリの構造

有村架純主演映画「ちひろさん」の感想【ネタバレあり】

元風俗嬢の女性が小さな町をちょっと幸せにして、また別の場所へ旅立つ、という話。ただそれだけの話なのだが、なんだかこちらも幸せをおすそ分けしてもらえる、というような感想がとてもよく生まれそうだ。 私自身は、この映画を観てもとくに心が温まったりしなかった。ただ、主演の有村架純の魅力はただ事ではないなと思った。 有村架純、いいよね~。 有村架純の好きな作品で思い出されるのは、菅田将暉主演のドラマ「コントが始まる」である。この作品は、お笑い芸人を目指していたトリオがその夢をあき

【読書感想文】反応しない練習|草薙龍瞬

以前から仏教の思想に興味があったが、この「反応しない練習」は仏教的思想を現代の生活に置き換えているとのことで興味を持って読んでみた。実際に読んでみて仏教的の考え方が大変合理的で、いわゆる「使える考え方」である事をひしひしと感じている。 まず最も私が感銘を受けた考え方は、「あるものはある、ないものはない」と事実だけを認識するといった考え方だ。目の前に見えている、または経験していること以外は、仏教においては全て「妄想」と言うことになる。これが大変面白い。 例えば何らかの失敗を

【読書感想文】考えて、考えて、考える|藤井聡太・丹羽宇一郎

藤井聡太の思想が気になる。そう思うようになってから、雑誌や新聞、動画などのインタビューはそれなりに目を通しているし、対談などの書籍も読んでいる(全部ではないけれど)。 藤井聡太に興味を持ったのは、例によって史上最年少でタイトルを獲得してからだった。もちろんそれまでも藤井聡太の名前を聴くことはあったし、29連勝の時には人並みに情報を追ったりはしていた。 それ以前はよくスポーツを観戦していたのだが、コロナ禍によりそういったイベントの多くが中止された。将棋界も一時期は棋戦が延期

【読書感想文】探検家の日々本本|角幡唯介

角幡唯介の本を読んだのは、これが5回目だと思う。角幡唯介と言えば冒険家と知られており、私も「極夜行」「空白の五マイル」といったノンフィクション小説やいくつかのエッセイを読んだ。 角幡唯介の本を読んでいると。私が常に持っている常識を一気にひっくり返すような価値観や表現を目にすることがある。基本的に角幡唯介の作品には現代に生きる我々の価値観から永遠大きくずれた部分があり、それらを目にするたびにドキッとするものである。 とは言え私の中にも、「前提」として「角幡唯介には我々と違っ