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【読書記録】海をあげる/上間陽子・著(筑摩書房)

上間陽子さんの初のエッセイ、「海をあげる」を読んだ。

上間さんの著書の「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」も一気に読んだ記憶がある。

「海をあげる」も買ってしばらく手元に置いておいて、そして、「今だ」と思って読んだ。

上間さんの本は、読むのに少し覚悟がいる。
冒頭から圧倒された。
上間さんの書くものは、とても静かだ。読んでいるうちに、自分の内側は静かで、とても深淵なところにたどり着く。
著者が、そのように深く深く潜って、そこから言葉を紡ぎだしているのだろう。
浅いところから表面をなでるような言葉は、どこにもない。
ただもう、静かで、ほんとうに静かで、ポツンと落ちる水滴ひとつがどこまでも波紋をひろげるように、響き渡る。

悲しくて、やりきれない。
痛みをもって、沈黙する。
目の前に起きる絶望に、言葉を失う。

若者の声にならない声を寄り添って、聞き取ってきた人の言葉は、とてもやさしい。静かでやさしい言葉だ。
泣けるのは、悲しいからではなく、やさしいから。
こんなにもやさしい人たちが、こんなにも苦しんでいることが、ただ静かに語られている。

「私の中に、だれかに何かを伝えたいという思いが残っているのか
自分の声を聞き取るような1年でした」

言葉を失った上間さんが、「伝えたいことがあるのかを自分に聞き取りながら」書いたものには、読んだものが言葉を失ってしまう、なにか揺り動かされ、突き上げるものを感じた。

自分の内側に、とても大事なものが残る一冊。


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