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横山起也著「編み物ざむらい」/糸と編み針で悪と闘うお侍さんの話。

書店で目が合い、「何だこりゃ?」と手に取り購入しました。


時はおそらく江戸時代^^;
主人公感九郎は、悪徳医者の不正を暴こうとした事で、仕えていた家から召し放ち(首)となり、さらに親からも勘当された。
実家は落ちぶれた武家という家柄ゆえ編み物の内職で食いつないでいた感九郎。自分にできる事は編み物だけ。という事で、仕方なく編み針を持って家を出る。

【自分の中にあいている「穴」と向き合う】
本来ならば何か大切なものがつまっているはずのその穴は、何をしても「家」とか「お役目」などの名がついた「壁」がまわりを覆い隠していくばかりで、その穴が塞がることもなく、いまやその壁すら全て失せてしまったと、感九郎は途方に暮れる。

ふとした事で出会った、奇妙奇天烈な髪型(月代が逆になっているような、モヒカンみたいな頭)をした不思議な浪人 寿之丞から編み物の腕を見込まれ あるミッションに駆り出される…

そんなあらすじ。
江戸に実在したらしい「編み物ざむらい」が、刀の代わりに糸と編み針で世の不正に立ち向かう活躍を描いた新感覚時代劇。笑

時代ものは苦手でほとんど読んだ事がないにも関わらずとても読みやすく、編み物をする武士という設定も面白く、また、官民の不適切な繋がりやお家の格だのしきたりだのという古くからの因習、そして勘九郎が元々感じていた心の穴ともいうべき目に見えぬものと井戸の中で対峙するあたりからファンタジー要素も盛り込まれた楽しい作品になっていました。

自分とは何ぞや。
正しい事をしたつもりでいたがそれは本当に正しい事だったのかと、自分の心と真剣に向き合う。
そういった心理的描写も織り込んであり、意外と奥が深い作品です(意外にとは失礼な。^^;)

【印象に残った台詞】

登場人物のひとり、御前のセリフ
コキリさんの話が本当かどうかなんて大事なことじゃありやせんよ。人ってえやつは、本当かどうかよりも、それをどう感じたかで生きるもんでございやしょう」
「コキリさんは悲しんでいるし苦しんでいる。一緒に生きていくにゃあそれがわかってりゃ充分でありんす」

何故かおいらん言葉?


常に正しくある事を信条に生きてきた主人公だったが、家を追い出され不思議な人々に関わるうち、 
それぞれが事情を抱えながらも必死で生き抜こうとしている事に触れ、正しいか間違っているかという物差しでははかりきれないということがだんだんわかってくる…

入り口は編み物ざむらいであり、捕物帳のようなドタバタが繰り広げられるが、実は人の心の深淵にも迫った異色作なのかなと思いました。

✳︎✳︎✳︎

著者の横山起也さんのプロフィールを調べていたら、書店の編み物コーナーで目にしていたこの本の著者である事が判明。


著者は本当に編み物男子だった 
という事が判明しました。
この著作が作家としてのデビュー作だそうで、あっぱれです👏

編み物男子というと、
真っ先に思いつくのは広瀬光治さん。外国人ではベルンド・ケストラーさん。
ちなみに長男も編み物好きかも♡
高校の家庭科の授業で、編み物作品を綺麗に仕上げていたのを思い出しました。
もう、男だから、女だから、という括りのない世界になって来たのは喜ばしいことかなと思います。

最後までお読み頂き
ありがとうございました♡

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