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映画のはなし:やっぱり最高!『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

そろそろ来年のアカデミー賞に向けて、各国の映画賞受賞&ノミネートニュースが入ってきているがゆえに、またしても映画ブーム。
というわけで、時間があるとNetflixやらU-NEXTやらAmazonプライム・ビデオやらを立ち上げているのですが、うっかり見忘れていた作品を思い出しました。

『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

『パンズ・ラビリンス』からのデル・トロファンなのですが、うっかり見逃しておりました。というわけで、早速視聴。ちょっとネタばれあるかもしれないので、「これから観るよ~」という方はお気を付けくださいませ。

原作を含め『ピノキオ』の物語については、「人間の子どもを模して作られた、嘘をつくと鼻が伸びるピノキオがジミニー・クリケットさんと困難を乗り越え、人間の男の子になる」と「星に願いを」くらいのばっくりした記憶しかなかったのですが……(あと、東京ディズニーランドのくじらが怖い。夢の国なのに、アトラクションのダークさが際立ってる)。

いやいや、さすがデル・トロ先生。
最高の解釈で、想像以上でした。
この作品の制作に15年という歳月がかかってる、という狂気じみたところも最高。詳しくはNetflixに制作舞台裏のドキュメンタリーがあるので、そちらをぜひ。すっごい面白いです。あと、こだわりがハンパなくて、「これを15年続けられることがマジですごい」と痛感しました。好きのパワーってすごい。

で、『ピノッキオ』の本編。

デル・トロらしく、ダークでファンタジーな世界観やキャラクターが最高。
しっかりした「おとぎ話」だけど、現実とのクロスポイントもしっかりあって、それが良い方向に働いている。例えば、ゼペット爺さんが息子を無くしてしまった理由は、世界大戦だったり(時代背景も世界大戦中のイタリア)。

今回、デル・トロ先生の『ピノッキオ』を観て改めて考えさせられたのですが、確かに息子の代わりに人形のピノキオを作ったとしても、それは息子とは違うまた別の人格なのは当然。そして、ゼペット爺さんが「完璧な優しい父親」でないのも当然なんだよね。息子を失ったことを忘れられずに、ピノキオに感情をぶつけてしまうことだってある。
誰だって不完全で、それゆえに成長するんだから。
ピノキオと一緒。
そして、そのピノキオの良心であり、ピノキオを導くためのジミニー・クリケットさんだって同じ。
それをすごくまっすぐ描いている。
でも、まっすぐが故の哀しみもある。
でも、それが世の中の真理。

ディズニーではピノキオが人間の男の子になれたことでハッピーエンドとなってるけど、「本当にそれがハッピーなの?」「姿かたちが人間になればそれでよしなの?」と、デル・トロが投げかけてるみたいなラストが最高でした。
泣いた。

こういうのって哲学的な話になってしまうし、好き嫌いも別れるところだと思いますが、私はデル・トロ先生の「見た目じゃないんだよね」という考え方が素敵だな、と思う。
そしてこの作品、「生と死」にもしっかり真正面から向き合っているところにとても好感が持てます。「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」って、そんなわけあるかい!と、心が汚れた私は思ってしまうのです。

今年のアカデミー賞ノミネート候補作のひとつですが、ぜひぜひ!
『シェイプ・オブ・ウォーター』もとっても好きな作品ではあるのですが、やっぱりデル・トロは『ピノッキオ』みたいな、頭がおかしい(めちゃくちゃ褒めてる)くらいクオリティの高いストップモーション・アニメで受賞してほしいんですよ!!(『シェイプ・オブ・ウォーター』でもクリーチャー監督がオスカー撮った!やったー!って喜んだけど)

ちなみにジミニー・クリケットさんの声はユアン・マクレガー。そしてケイト・ブランシェットが声優で出てる、という情報だけは知っていたのですが、本編中「誰だろう?女性の声って木の精霊(ビジュアルがラスボス感満載で最高)くらいしかいないけど……」と思っていたのですが、まさかのおサルさんで驚愕しました。

鳴き声だけ!!!

メイキング観たらめっちゃ楽しそうで、めちゃくちゃ好感度あがりました。


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