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雨のなかのアイスクリーム

“Sugar in the morning”

“Ice cream in the rain”


雷が顔を出し、雨が降りそうなキオスクという名の青空バーに、ギターの音が響く

少年のような出立ちで歌を歌うBÄRという名のその人は、4歳と6歳の子どもがいると言って、アイスクリームの話をした

「歌をつくるのが、すき」

そう話す表情に嘘はなさそうだ

周りをみると、オレンジ色の髪をしてノーブラにTシャツのさっぱりとした女の子が、ドリンクを運んだり、席で友だちとおしゃべりしたりしている

大人たちが、ビールとワインショーレと灰皿の乗った机を囲んで、おしゃべりに花を咲かす

どこかで見たことのあるミュージシャンのひと、夏の装いをした若いひと、犬を連れたひと、絵を描くひと

近くで騒いでいた小学生くらいの子どもふたりが、威勢を張って、舞台の邪魔しようとする

ドイツ生まれなのに育ちで英語なまりな歌うそのひとが、
サインならあとでもらいにきな、とあしらう


みんな、好きなことをしているなぁと思う 

まるでベルリンにいるかのような、街の一角の夜


雨の中で食べるアイスクリームのことや、愛、感情を
恥ずかしがることもなく言葉にして音楽にのせることができるのは
その人にしか見えない世界があるからなのか

空気をよむ、という言葉はここにはないけれど

ひとやその場所には、バイブレーションがある

その波長を背中にのせて、
来なかった夕立より先に、わたしは暗くなりかけた街のなかへ帰路につく
 


あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。