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目には見えない声をきく #noteリレー

一緒に働いていた同僚に、赤ちゃんが産まれた。

生後7週間のその赤ちゃんの名前は、ハナという。

何かを見つめていて

うんちをしたり泣いたりしていた。

何も恐れることなどないかのように、小さな手足を力一杯振り動かしている。

見つめるわたしの目を見つめ返し、何かを感じとっているようだった。

その目の先に、何を見ているのだろう。

ありのままのハナの姿を、わたし達大人は夢中になって見つめる。

別の同僚がハナを抱きかかえようとすると、突然ハナが泣き出した。

恐る恐る手を伸ばした同僚の不安を感じ取ったのか、眠くて疲れていたのか、お腹が空いたのか、わからない。

ハナは身体全身を使って、何かを伝えようとしている。


子供の頃、存在するかわからないものの存在をわたしは信じていた。

例えば、夜トイレに行くときに想像する、隠れているかもしれない恐ろしいものの存在。

信号が青に変わるのと同時に足を踏み出せたとき、1日が幸運で包まれているような空想。

親に叱られたときにそばに座ってくる犬は、わたしを慰めてくれていると信じた。

目には見えないものが、わたしの世界で意味を持っていた。


ハナの母親であるわたしの同僚は、ハンガリーから車でやってきた。

過去の経験も両親との関係も愛犬との別れも、すべてを抱えて、それでも何かを求めていた。

彼女をこの地に導いたものは、なんだったのだろう。

彼女と話をすると、心が開いて涙が出るのはなぜだろう。


身体から涙が自然とこぼれるとき、その衝撃を頭が受け入れるのに時間がかかる。

見えない感情を頭が理解するには、身体の発する声にじっと耳を傾ける訓練が必要だ。

身体を内側からスキャンするように、そこにある事実を受け入れ、目に見えない声をきく。

そこにある、わたしの身体を突き動かすものはなに?

ハナが泣くことで伝えようとしているものはなに?

その声は、聞いてもらうことを求めている。


息は浅くなり、血液が広がり、細胞が乾いていく。

目には見えない声を聞くとき

わたしはきっと、痛みを感じて涙を流すことを選ぶだろう。


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光栄なバトンは、愛の人Nomadさんからいただきました。

自分自身ととことん向き合った先にある、澄んだ目で世界と人を見ているようなNomadさん。

「ひたむきに自分と向き合っている人にバトンを渡したい」

信じてもらうことが人間を作っていると思いました。

いつかあなたと話がしてみたい。

とても光栄なご縁に、感謝します。


さて、次のリレー走者、verdeさんにお願いします。

お題: 『わたしの色』


仕事や人との関わり方を通して、生き方が垣間見える、verdeさんの記事。

深くクリアなブルーをまとったverdeさんの、感性を纏った文章が楽しみです。


お忙しい中、引き受けてくださりありがとうございます。

verdeさんのTwitter↓


最後にsakuさん、人の熱が伝わり繋がる企画をくださり、関わるきっかけをくださりありがとうございます。

まだまだ未熟なわたしが、バトンを繋ぐチャンスをもらえたこと、感謝しています。


あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。