これから⑮ 大木のハグ

2020年4月

#stayhomeのハッシュタグが流行った2020年の春

わたしは日当たりの良いキッチンで、おいしく栄養のある料理を食べることに幸福を見出していた

メディアが発信する様々な情報に不安を仰がれながらも
冷蔵庫にある新鮮でカラフルな野菜や、
ソーシャルメディアを通じて知る人の暖かさ、窓の外に向かって歌いだす人々の動画や音楽を見て、
わたしはなんとか心の平穏を保っていた

日常と自分自身に意味を見つけるためのように

朝7時に起きてロードバイクでライン川沿いの森の道を走る

新芽の緑は、毎日少しづつ変化して緑を増していることに気がついて、
毎日同じ時間に、同じ場所でカラスがわたしたちを待って案内しているかのような錯覚をもった

未知なものと、先が見えないことへの不安
仕事ができない自分の存在価値の喪失

見つけたその魔法の場所でヨガをする自分を見つめることは、

何もできないわたしを、ただただ受け止めてくれているような気がした

飛行機の飛ばない真っ青な空、春の柔らかい太陽の光に後押しされ、

わたしは、そこにある大きな大木にハグをする

その木は乾燥しているが、なにか暖かいものに包まれていて
わたしのなかで何かが溢れ出し、涙になった

あぁ、わたしは大丈夫だ
そのとき何か大きなものに支えられているような気がした

そしてそれは、わたしが本当に生きたい人生を生きよう、という勇気に変わった