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生意気じゃいけないんですか

自慢じゃないけれど「あいつは生意気だ」と言われた回数は両手両足の指を使っても数えきれないと思う。そもそも「生意気ってなんですか?」「生意気じゃいけないんですか?」などと頭の中で反芻しているからいつまでも言われ続けるのだろう。しかし男子が男子に対して「あいつ生意気だな」と言うのと男子が女子に対して「あいつ生意気だな」と言うのはかなり意味が違うことには気づいている。

王子動物園のオランウータン(内容とは関係ありません)

さて生意気歴うん十年ともなると、その生意気さにも磨きがかかり(いや、そんなもの磨かなくていい)出したり引っ込めたりできるようになるのだ。
振り返ってみると、わたしの育った家庭は6人家族で、父親以外は全て女性だった。祖母、母、娘3人である。また父親は教員であり、部活の顧問をしていたため、平日はおろか土日も家にいない。
そうすると父親が帰宅しても、その存在感は薄いのである。さらに異常にせっかちな性格だった父親は、極端にペースの遅い母親のすることまで率先してし始めたのである。つまり食器洗いから洗濯物干し、定年した後には、朝食作りまでし始めていた。いつの間にか母親は毎朝8時起床などというお姫様のような生活を送っていたようだ。そして父親はほぼ娘たちに対して意見することがなかった。振り返って考えても強く叱られた覚えがない。
そういう家庭に育った娘3人はどうなるかと言うと、「生意気製造機」にかけられた「超絶生意気女」になってしまうらしい。これが自分では気づいていないので困るのだ。
わたしは三女だったのでとりあえず家では一番おとなしかったと思う。しかし一番上の姉は自分の思ったことが言葉になり、行動になる人間に育っていた。運動神経以外(ここ強調)は人並み以上だった姉は当時の同級生の中では一番頭が良く、市内で最も優秀な進学高校に入学した。元々旧制中学だったその高校には女生徒が10人くらいしかいなかったらしい。男子生徒は
400人近くいたのにである。その中でも姉は自分の思うまま行動し、発言し、教育実習生を困らせるほど質問攻めにしていたと言う。これについては当時男子の同級生が「それくらいにしてあげなよ」とたしなめたとかなんとか。(なんとなく事業仕分けシーンを思い出す)
その後東京の大学に進学し、夏休みなどに帰省すると何かにつけ

「あんた、田舎者ね」

と散々妹を馬鹿にするのだ。これが「生意気」なんじゃないですか?

プレミアムモルツ(内容とは関係ありません)

帰省のお楽しみということで少し高めの(2,3000円くらい)ワインを買いに行くと

「これはイマイチね。これがいいわね」

などと言って知ったふうに振る舞って銘柄を決める。しかし帰宅してそれを飲むと大して美味しくなく、みんなが変な顔をしていると

「だって知らなかったんだから仕方ないでしょう?」

と言うわけだ。知らなかったら黙っていたらいいのに、などとは妹の身分では口が裂けても言えない。それでも姉のことを「生意気」と言う人を見たことがなかった。わたしが知らなかっただけかもしれないけれど。
6歳年下のわたしも同じ高校に入り(その時は学校群となっていて男女半々くらいだった)田舎の小中学校時代のように伸び伸びと振る舞っていると、どうも周りから浮いてしまうことに気づく。どうやら女子は可愛いく控えめに振る舞い、意見を言うのは許された立場の者(超優秀な女子)だけらしい。
当時体育祭のあとに男子生徒だけファイヤーストームに参加するしきたりがあり、女子生徒は参加を許されず、ただおにぎりを男子生徒の人数分握って教室の机の上に置いておくのが決まりだった。(今もあるのだろうか。)
そのおにぎりを学校の脇で営業していたおにぎり屋さんに注文しようという話になって(誰が言い出したのかわからない)そうしておいたところ、翌朝登校するとクラスの男子生徒はやけに冷たい。他のクラスでは黒板に「○○ちゃん、美味しかったよ」「○○さん、ありがとう」などと書いてあるのに、わたしのクラスだけ何もなかったかのように振る舞っている。あとから人づてに聞いた話では、わたしがそれを指示してお手製のおにぎりを拒否した、ということになっていたらしい。訂正する隙もなかったし、かばってくれる女子もいなかった。はい、「生意気女」決定です。
ここから先は黒歴史になるので端折るけれど、15,6歳で男子の気に入る振る舞いのできる女子は、大人になってもその対応は上手いし、それができない女子はものすごく苦労します。
大学に入り、アルバイトを始めた時もバイト仲間から「あいつは生意気だ」と言われたことがある。酷い時には「顔つきが生意気だ」というのもあった。ごめんなさいね、こればかりは生まれつきなのです。
親に言ってくださいね。

それでも年を経ると少しずつ相手の望むことがわかるようになり(いや、多分永遠に無理)それなりに「わきまえた女」になったかもしれない。(ならないしなれないから。)
それはPTAの懇親会で、煙草に火をつけた男性の前に灰皿を出したり(スナックかよ)カラオケボックスでデュエット曲を楽し気に歌ったり(あー、これは楽しい)空のグラスを見かけたら膝まづいてお酌をしたり(これまたスナックかよ)様々なことができるようになるのだ。もちろん自分もしっかり飲みまくっている。しかしできる女子は違う。先の先まで読むわけだ。
「こういう席では、自分はウーロン茶にして酔わないでおいてタクシーの手配をする」(またまたスナックかよ)

いろいろな思いが沸き起こるけれど、今更何を言っても始まらないので、生意気女歴うん十年は宣言します。
これからは好きにさせてもらいます。デュエットはしますし、お酌もしますが、期待に添える気配りはできません。そして言うべき時にははっきりものを言わせてもらいます。
最後の1つができないから悩んでしまうんだよ。(心の叫び)




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