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人間そっくり






アイデンティティに触れたSF作品に出会うたびに 〝個〟 たらしめるものとは何なのかと考える。


血か、脳か、心臓か。

記憶か、こころか。

例えば脳以外を機械化してしまったら、それはわたしといえるのか。

機械ではなく、サイボーグだったらどうだろう。

記憶をそのままに、別の脳になったとしたら。


どこまでがわたしであって、どこからがわたしではなくなるのか。



そして 〝個〟 について考えると、同時に浮かぶことがもうひとつある。


〝個〟 に対する 〝ラベリング〟 がわからなくなった時、

何をもってわたしはわたしだと言えば良いのだろう、と。








安部公房 作 「人間そっくり」


主人公は、自称 火星人に問われる。

あなたが地球人だとどうやって証明するのか? と。

自称 火星人の二転三転する言動に主人公は少しずつ追い詰められ、やがて自分自身を見失っていく。




1967年に刊行されたこの作品を、学生の時に初めて読んでから20年ほどになる。


主人公の導き出した答え以上のものが わたしも未だにみつからない。






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