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「料理男子」を廃語としたい

先日、大好きなスタイリストさんがご自身のInstagramでつぶやいていた言葉が印象的でした。

私がみてきた父と娘がみる父とではそのあり方が大きく変わる。料理男子もイクメンもいつかは廃語。

わぁ、すごい!その通りだ!……と思わず声が出たのは、
私にも子供がいるから、ではありません。

この言葉、そろそろもういいよ……

と感じ始めている言葉が、最近たくさんあって、
でもそれを「死語」と呼ぶのもなんか違うんだよなぁと、思うところがあったんですが

廃語!

これ、ぴったりの表現ではないですか?
まさしく、アフターコロナで否応なく価値観が変わりつつあるこの際、
廃語にしちゃっていい言葉が世の中にはあふれてると思います。

「料理男子」は、確かに、かつて自分も特集内のキャッチなどで使ったこともありましたが、
今後、自分の食の責任を自分で取れないような大人は、女子からも男子からも見放されるでしょう。
「イクメン」だってそう。
少子化を憂い男女平等を謳うのであれば
「えらいねイクメン!」という言葉はそろそろ、時代遅れでしょう。

そして、同じような感覚を
ここ最近のSNSの投稿を見ていても、ふとした瞬間に覚えます。
私は食、および食を取り巻くライフスタイルをテーマに仕事をしているので
SNSで繋がっているサークルにも食関連の人が多いです。
シェフやソムリエはもちろん、いわゆる「foodie(フーディー)」と呼ばれる、レストランジャンキーの友人知人もたくさんいます。
コロナに突入する前まで、個人的な感覚ではありますが

東京はレストランバブル状態

でした。
「予約の取れない」という形容詞をつけられる店が増え、
他国の大都市に比べれば、確かに東京のガストロノミーは割安であるため、
群雄割拠、生き馬の目を抜くような、血で血を洗うような、息つく暇もないような、
そんなレストラン競争が繰り広げられているように私の目には映っていましたし、
正直、それを追うのが面白くて仕方なかった。
今もまぁ、そんな気持ちがないといえばウソになります。

しかし最近、

久しぶりに予約の取れない「レストラン○○」へ。シェフの腕は健在! ラグジュアリーな夜を堪能しました〜♡

……的な投稿を見ると、あれ?あれ?なんか違う、と違和感を覚えるのです。

最初は

嫌だ、私ったら嫉妬してる?

と思い、ぶるぶるっと首を振ったりしたのですが、いやどうもそれとも違うぞ。
そんな時に、あるお仕事の原稿を書いていて気づいたのです。

「ラグジュアリー」という言葉が空疎化してる

ということに。
贅沢な空間、惜しげもなく使われる高級食材、丁寧できめ細やかなサービス。
コロナの前から幾分、「そういうの、そろそろ違うかも?」という気配はありました。
もちろん、高級レストランや料亭は日本にとっては大切な文化でもありますから、今後も繁盛してくれなくてはなりません。
しかし、そこに意味があるのかないのかが、今大いに問われ始めています。

存在を納得させるストーリーや世界観

なしに、単なるラグジュアリーは成り立たなくなったと思うんです。完全に。

先日、著作家の山口周さんがご自身のTwitterで
そもそも私たちは「過去の完全な回復」などを望んでいるのだろうか?
というようなことを書いていらっしゃいましたが、通じるものを感じます。
なんとなく集まっていた「打ち合わせ」はリモート会議になり、
そこでは、「発言しない&考えがないなら出席しなくて結構」という暗黙のルールが形成されつつあります。
食の世界も同様で、今後尊重されるべきは「思想の有無」。
単なる星ゲッター、単なる制覇欲によるレストラン巡りは
アフターコロナでは不要とされてきているのかなと思います。

……なら、どうする?という話なんですが、
考えることなんでしょうね、きっと。
食べ手である私が、その皿に何を感じ、食後に何を思ったかが、
料理を堪能する以上に必要になったんじゃないかなぁと思っています。

昔、小学校の担任が作文の授業で

いい作文とそうでないもの

について教えてくれたことがありました。
「ダメな作文」とは、先生曰く、
行ったこと、見たこと、食べたもの、聞いたこと、だけを書いてたらあかんのやで(神戸の小学校でした)。
これに対し「いい作文」とは

何を感じたか。自分はどう思ったか

を丁寧に思い起こして記すことだ、と。
先生のおかげで、私は作文の授業が大好きになりました。
(先生、ありがとうございます)
が、これ、作文だけに必要なことではなかったんですね。
主語を自分におくことの重要性を改めて思うこの頃です。

その上で、冒頭にも書いた「廃語にしてもいい言葉」をつらつらと考えるのですが、
結構ありそうで怖いです。原稿書くのが大変になりそう……。

みなさんなら、どんな言葉を外しますか?

#料理 #COMEMO #新しい生活様式

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。