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お目当てのきのこが消えてて1日へこむ

9月半ば。朝外に出て「あ、空気が秋だ」と感じた最初の日。夏の寒い日とは違う、はっきりと秋、な日。この日にどかんと始まりました。きのこ祭り。

夏の間は暑さと晴れ続きで、全くきのこに出会わない日も多く、出会えても常連の地味めなきのこがちらほら程度。少し涼しくなって雨も時々降るようになって、だんだんときのこの種類が増えてきたなー、と思っていたら、いきなりやってきました。あっちもこっちも目立つきのこがぽこぽこ顔を出しています。

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イボテングタケ。歩道との境目にぽこぽこと。

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ウスキテングタケのファミリー

この日から、朝のきのこ散歩も一気に盛り上がりを見せるようになりました。夏の間は、きのこの数が少なく出る場所も限られているので、ある特定の場所に行ってぱぱっと見て帰ってくる、全部で30分程度の散歩でした。それが、こっちにもぽこぽこ、あっちにもぽこぽこ、こっち寄ってあっち寄って、そしていつもの場所でも滞在時間が長くなり...とやっているうちに、30分が40分に、だんだん散歩が1時間ぐらいかかるように。

タマゴタケ

夏の間姿を消していたタマゴタケも戻ってきました。幼菌はまさに卵、そこからつややかな赤やオレンジのかさがひょこっとでてくるかわいく美しいきのこです。

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タマゴタケ幼菌

タマゴタケは成長が早く、卵の状態からひとたび顔が出てくると、その1-2日後には成菌と言われるかさがひらいた状態となります。一度かさがひらくとかなりの早さで倒れてまた土に戻っていく。ぼんやりしているとあっという間に終わってしまうので、卵を見つけると、その成長の過程を一瞬も見逃したくないような気持ちになり、「今日はどうなっているかなー」とどきどきしながらその場に行きます。

楽しみにしていた卵の成長

この数日、中でもとりわけ楽しみにしている卵がありました。通常のタマゴタケの幼菌に比べても2-3倍ぐらいの大きさの卵が二つ並んで、順調に成長していたのです。遠目からでもはっきりとその白い卵が浮かび上がるほどの大きさ。

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そのエリアには以前、卵(幼菌)が大きくベージュとグレーの間のような色のかさが開くミヤマタマゴタケというタマゴタケがいたので、おそらくそれだろう、と予測していました。ミヤマタマゴタケは日本人が発見し今のところ日本でしか確認されていないそう。

「今日は顔出しているかな」「今日はどうかな」。3日ほど、まずはこの場所に直行して確認していました。

前日の卵の大きさを踏まえ「きっと、今日こそは顔を出しているだろう」と確信して向かった日。遠くからでも見えるはずのあの白い姿が見えません。嫌な予感と共にその場所に近づいていっても、やっぱりいない。

そして...

明らかに誰か人の手によって掘り出された後の穴が二つ、見つかりました。

ああ、誰かが採っちゃったんだ...

呆然としながらあたりを見渡すと、中のきのこが取り出された後の割れた大きな卵がぐちゃっと捨ててあるのが見えました。

ああ、誰かが採って中だけ見て捨てたか食べちゃったんだ...

せめてあと1日待ってくれたら...

ショックすぎてその日は1日なんか元気が出ませんでした。

みんな、それぞれ

きのこをどう好きか、きのことの関係の築き方は、人それぞれです。私は今「きのこをただみていたい」派ですが、きのこをみたら食べたい人もいるし、きのこをみつけたらまずは中を見てみたい人だってもちろんいるでしょう。

関係性の多様性もきのこの魅力の一つなのだから、他の人がどのようにきのこと関わろうとそれは受け入れるしかない!

そう自分に言い聞かせて、次の日もまたきのこ散歩に出かけました。

すると、前日はショックのあまり見えなくなっていた、小さいけれど色鮮やかなきのこが次々と目に入ってきました。

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アオイヌシメジ

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アカヤマタケ

心を閉さずちゃんと目を開けていれば、美しさはそこら中に溢れている、ということをこのきのこたちに教えてもらった気がします。

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