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東京お散歩日記 #1(吉祥寺)

お散歩日記 (吉祥寺)

・・・1月△日 晴れ ・・・

なんとなく疲れていて、気持ちを休めたくなって、
吉祥寺の街を歩いてきた。

吉祥寺は好きな街だ。
いるだけで不思議と元気になったり、癒されたりする。

街にも人間同様、相性があって、この街にいるとエネルギーがアップするなとか、この街にいるとやけに疲労するなとか、自分にしか分からない特有の感覚がある。

吉祥寺の街はだから、自分との相性がいい街、と勝手に思っている。
明るくて、素朴で、活気があるけれどゆったりした空気が流れていて、疲れているときにも居られる街。

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天気が良かったせいか、午前にも関わらず街には人出が多かった。
けれど、構わずまずはリュモンコーヒースタンドへ向かう。
散歩をする際、必ずセットされるのは買い物よりも何よりも、まずはカフェに寄ることだ。

リュモンコーヒースタンドは南口から少し歩いたところにある一軒家カフェで、今回で訪問は二度目となる。

到着するなり「二階席空いていますか?」と尋ねてみたところ、空いています、とのことでほっとした。一階席もあるのだけれど、自分としては二階席の方が好きなので、そちらが空いていると聞いて一安心。
一階でモーニングセットを注文してからそそくさ二階へとあがり、空いているテーブル席に腰をおろした。

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屋根裏部屋のような、天井が斜めになっている小さな空間は、白い壁とこげ茶色のフローリングで、明るいけれども落ち着いた雰囲気がある。すこし開いた窓にはロールカーテンがおりていて、風が入るたびにそれがふんわりと息をするように揺れている様子がなんとも心地よかった。

しばらくすると階段をのぼる音がして、店主さんがモーニングセットを運んできてくれた。

きれいなリーフ模様の描かれたカフェラテと、こんがり焼けた香ばしいトーストを丁寧な所作でテーブルに置いていく。その物腰柔らかい店主さんの雰囲気もまた、このお店の心地よさなのだろうなと思いながら、早速カフェラテをいただいていると、サクサクッ、カリカリッ、と音がした。

見ると、ななめ前方のソファ席に座っていたお客さんも同じくモーニングセットを注文していたようで、背中を丸めながらトーストにかじりついていた。なんともおいしそうな響き。

十字に切り込みの入った厚めのトーストには、中央にバターがドンとのっていて、さらに岩塩もぱらりと振りかけてあって、別添えできび糖シロップまでついてくる。なんだかお洒落なトーストだ。岩塩だの、きび糖シロップだの、家ではそんなことしないし、そもそも思いつかない。

ななめ前方にいるお客さんに続けと、私もサクサクッ、カリカリッ、と良い音をたてながらトーストにかじりついた。

トロトロに溶けていくバターに、ジュワジュワっと浸みていくきび糖シロップ。そして中身はフンワリッ、と、ついついおいしい擬音語を並べたててしまうくらいに、このトーストがおいしかった。別添えのきび糖シロップもたっぷりあるので、惜しみなくドボドボ浸しながら食べる。

もちろんカフェラテだって、すごくおいしい。
コーヒースタンドというだけあって、珈琲にさほど詳しくない私であってもおいしさの分かるカフェラテだった。
香りが良くて、まろやかで、濃厚で。

はあ、しあわせだなあと思う。
カフェっていいなあ、とも同時に思った。
ちょっとした逃げ場所にもなってくれるし、癒し場所にもなってくれるのが自分にとってのカフェである。それは個人経営の店あっても、チェーン店であっても、等しく感じることだ。

いつもなら読書をしたり、考えごとをしたり、書いた小説の推敲をしたりするのが常だけれども、今日はカフェラテ片手に、ただただ、ひたすらぼんやりした時間を過ごした。ある意味、この何もしないで空っぽに過ごすことこそが、カフェで過ごす一番贅沢な時間の過ごし方のような気もする。

お腹も心も満たされたところでリュモンコーヒースタンドをあとにして、
次に井の頭公園へと向かった。

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晴れているわりに北風が強くて寒かったけれど、歩いているうちにだんだん体があたたまってきて、足取りはどんどん軽くなっていった。正月休みも終わり、人はまあまあいるにはせよ、井の頭公園は平穏な空気でみちていた。

池(というには毎度大きいなと思うけれど)には、スワンボートがいくつか稼動していて、スーイスーイと優雅な泳ぎをみせていた。雲ひとつない青空からは太陽の光がさんさんと降り注いでいて、さざ波立った水面がきらきらと光の粒子をまぶしたみたいに光っているのがきれいだった。

そういえば以前、スワンボートが盛況中のときに訪れたときには、ザブザブ!ザブザブ!と遠慮のない音が絶えまなく聞こえていたけれど(それはそれで耳に気持ちよかった)、今日は七井橋のうえからは目立った音は聞こえず、のどかで平和な昼下がり、といった時間が流れている。しばらく橋のうえに立ち、スワンたちの泳ぎを遠目にぼんやり眺めて過ごした。

その後、駅ビルに用事があったので、そこにちょっと立ち寄ったあとは中道通りへ向かう。

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小さな店が軒を連ねるこの商店街は、見ているだけでなんだか楽しい気持ちになってくる。雑貨屋さんや珈琲屋さんや洋服屋さんなどなど、色んなお店をのんびり眺めながら歩いていき、吉祥寺西公園へと辿り着く。

一本の大きな木(シラカシ=どんぐりの木)が印象的なこの公園は、映画「グーグーだって猫である」のロケ地としても使用された公園だ。
今日も元気に子供たちが芝生のうえを駆けまわっていて、その様子をお母さんたちが優しく見守るのどかな光景があった。

ベンチには若い男女が座っていて、何かの食べカスでもあげていたのだろうか、彼らの足元には数羽の鳩が群がるように集まっていた。公園の目の前には「はらドーナッツ」があるから、そこで買ってきたドーナッツのかけらでもあげていたのかもしれない(勝手な憶測)。

鳩は慌てる様子なく、呑気に地面にまかれた食べカスをついばんでいた。
なんだか平和な鳩たち。飛び立つ気配もなく、鳩たちはやたら元気に芝生のうえを歩いていて、誰かがベンチに座ると、餌をおねだりするためにまた数羽で徒党を組んで、その人めがけて勢いよく歩いていった(なかには突然ダッシュする鳩もいた。案外、足が速くてびっくり)。

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いろんな景色を眺めながら、今日という日が安穏に過ぎていった。
特別なことも、目新しいことも、何もなかったけれど。
でも、それがいいんだよなあとも思った。

吉祥寺は、肩の力を抜いて歩ける街だ。
変にかしこまる必要のない、気さくな良い街だなといつも思う。

家に帰るころにはエネルギーをだいぶ取り戻していた。
吉祥寺は自分にとって、心の栄養になる街だなあと、つくづく思った。

◇◇◇ 今日のお散歩写真 ◇◇◇

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Ryumon Coffeestand のリーフ模様が美しいカフェラテ

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十字に切り込みの入ったこんがりトースト

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バターがどん!岩塩ぱらりっ!きび糖シロップたっぷり!

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かわいいレシートと、take free のステッカーもかわいい

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井の頭池にてスワンボートがスーイ、スーイ泳ぐ

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静かに待機するスワンたち

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きらきらと、太陽の光を受けて輝く水面

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人もまばらな井の頭公園 

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物語に出てきそうな西公園のどんぐりの木

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気がつけば、あっという間に日が暮れて・・・
散歩もここで終わりとしよう

◇◇◇◇◇◇

お読みいただきありがとうございます。