東京お散歩日記#8(目白)
お散歩日記(目白)
・・・3月◎日 晴れ ・・・
目白駅に着いたのはお昼過ぎのこと。
晴れていて、暖かくて、お散歩するのにはもってこいの天気である。
駅前には、緊急事態宣言が解除されたこともあってか、あるいは春休みのせいか、多くの人たちが行き交っていた。みんなトレンチコートや軽いジャケットをはおり、すっかり春の装いである。改札を出てすぐのところには猫バスのようなものが一台停まっていて、見ればそれは移動クレープ屋さんのようだった。
駅舎の前には目白通りがあり、改札を背に右に行けば学習院、左に行けばエーグルドゥース(洋菓子店)のある方面ということで、早速まわれ左して、横断歩道を渡り、エーグルドゥースを目指して気分浮き浮き、道を歩きだす。
ちなみに本日、なぜエーグルドゥースに向かっているのかというと、雑誌で紹介されていたシュークリームを買いたいがためだ。それにエーグルドゥースは以前から気になっていた洋菓子店なので、シュークリームはもとより、お店自体にも興味があるのだった。
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駅から10分ほどの場所にあるということで、道なりに目白通り沿いをまっすぐ歩いていく。「目白銀座商店会」と名のつくとおり、この通りにはさまざまな店があって、気になる店も多い。
まず寛永堂目白支店(甘味が食べられる喫茶がある)があって、志むら(九十九餅と、雪崩のような苺ソースをかけたかき氷が有名)があって、鼓月(波型のヴァッフェルにクリームをはさんだ千寿せんべいが有名)があってと、和菓子店が軒を連ね、先を行くと電気屋さんがあって、なぜか店頭に大量のドライヤーが並んで売られているのがガラス戸越しに見えた。
そして、そのすぐ先には小さな教会があったので外観だけさっと眺め、その先を行くと行列ができていて、みるとそこはどうやらラーメン屋さんのよう。「長」の字を丸で囲った看板のした(あとで調べたら丸長という、つけそばの店でした)、老若男女がずらり並んでいて、かなり人気があるらしい。
そんな行列を横目に通り過ぎ、さらにさらに先を行くと、目的のエーグルドゥースを視界にとらえる。が、こちらもラーメン屋以上に長蛇の列ができていて、一瞬たじろぐ。
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黒っぽい外壁の重厚な店構えはまるでそこだけヨーロッパのようで、見た目だけですでに期待が高まる。ガラス越しにケーキが並んでいるのがちょっとだけ見えるような、見えないような。というのも、行列が人垣となって、はっきり見えないのである。
お客さんを整理している店員さんに「イートインはできますか?」と訊くと、今はお休み中なんです、との回答があり、「あー」と思う。コロナ渦の影響なのだろうけれど、そっか、ではせめてテイクアウトにしようかな、と思って行列の尻尾につくも、店内の人数制限をしていることもあり、結構待つことになりそう。
うーん、と二分ほど考えて、「やっぱりまたにしよう!」と潔くあきらめ、道を戻ることに。とても素敵なお店でケーキもおいしそうなので、今度はオープンと同時を狙って来ようと思った。
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戻る途中、向かいの道にGclefを見かけた。Gclefは紅茶の専門店で、かつて吉祥寺にあったティーサロンには足繁く通っていたのだけれど、今は残念ながら閉店になってしまった(吉祥寺の販売店は今もあります)。またティーサロンを再開してくれないかなあという微かな希望を胸に抱きながらも、目白店には今日は寄らずに駅を通り過ぎて、JRの線路の上にかかる目白橋を渡り(ちょうどそのとき埼京線が通って、地面が揺れて「おっ」となった)、宮越屋珈琲に向かう。
目白まで来たのだから、せめて足休めにお茶くらいはしていきたい。
ということで、以前に何度か行ったことのある、目白駅舎はす向かいにあるTRAD目白内の宮越屋珈琲に寄ることにした。
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扉を開けると静かな店内は雰囲気がよく、入ったとたん、珈琲の香ばしい匂いに全身が包まれる感じがした。たくさんの素敵なカップの並ぶショーケースを過ぎて、右手奥まった場所にある席がちょうど空いていたので、そこに座る。
橙色の照明がほんのり灯り、目の前には淡く照らされた絵画があり、ピアノやサックスのジャズの音色流れるなかくつろいでいると、気持ちがすっと落ち着いてくる。シュークリーム目的でやってきた目白だったので、やはりここでもカスタード系を頼もうかと思ったけれども、メニューのなかにカスタード系は見当たらず、悩んだすえにカフェオレとアールグレイのパウンドケーキをお願いする。
わりと早足で歩いてきたせいで汗ばみ、夏でもないのに携帯していた扇子で思わず顔を仰いでしまう(持っていてよかった)。水を飲もうとグラスを持つと、氷の奏でる涼やかな音が耳に響いた。ふうっと喉を潤す。
しばらくして運ばれてきたのは、なみなみのカフェオレ。カップはアラビア社の鮮やかなパラティッシのカップ&ソーサ―で可愛く、ちょっと嬉しい。そして宮越屋珈琲のカフェオレはとてもおいしく、素敵なカップでもいただけたので、その両方の満足感で気持ちが満たされる。そしてパウンドケーキも口に入れたとたん紅茶の香りがふわっと広がり、とてもおいしい。
はあ、久しぶりの至福の時間…。
家でたのしむお茶時間も良いけれど、カフェで味わう時間はまたべつの幸せがある。しばしのあいだ、自分時間をふふふと満喫。サックスが良い音を響かせていて、なんだか心地が良い。ほの暗い素敵なカフェとジャズの組み合わせには間違いないものがある。
まわりに人はいるようだけれど(奥まった席なので、他はよく見えない)、話し声はまるで気にならない。隣の人はパソコンを開いてパチパチとお仕事中のようだけれど、それも全然気にならない。なんだか、そういう空気感が、お店全体にある。
そんなに長くいたわけではないけれど、充実した時間を過ごして店をあとにした。
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目白はたまに、本当にたまに訪れる街だけれど、いつ来ても良い街だなあと思う。街自体の印象が良いというのか。池袋と高田馬場という、色の濃い街に挟まれていながらも、目白は染まることなく目白で、なんというのか、ちょっと年配の淑女な街という感じがするのだ(個人の勝手な感想ですが)。
落ち着いていて品があるけれど、カジュアルさもあり下町感もあるという、そんな親しみやすさを持った街に感じる。予定は未定だけれど、また来たい街だなと思うし、実際にエーグルドゥースにも再訪したいのでまた来てみよう。
再び、駅前に戻ると、まだ猫バスらしきクレープ屋さんが一台停まっていて、変わらず晴れた空の下、駅舎の前の花壇は色鮮やかな花を咲かせていた。
すっかりシュークリームへの欲求も消えた自分は、足取り軽く、改札口へと向かう。
◇◇◇ 今日のお散歩写真 ◇◇◇
目白駅の駅舎には美しいステンドグラスがはめ込まれています
日中よりも、夜の方が絵をきれいに見ることができそう
改札を出るとすぐ、見晴らしよく景色が一望できました
清掃工場の白い煙突と、ダイヤゲート池袋もよく見えます
駅前には移動式のクレープ屋さんがありました
トトロの猫バスっぽいような…
春の日差しがぽかぽか降り注ぐなか、
目白通り沿いを歩いていきます
寛永堂目白支店がありました(素敵な雰囲気の喫茶室がありました)
脇道をのぞくと、そこは静かな住宅街のようです
目白といえば有名な和菓子店、志むらがありました
夏になると、天然水のかき氷が人気のようです
通りの木々はまだ裸でしたが、幹の根本では
たんぽぽが黄色い花を咲かせていました
目白銀座商店会の商店街、途中、古めかしいアーケードがあります
通りをまっすぐ歩いていると、素敵な教会(目白聖公会)もありました
下落合三丁目のバス停を過ぎて、さらにまっすぐ行くと、
目的の洋菓子店、エーグルドゥースに到着しました
まるでフランスにあるような、クラシックで美しい店構えです
なかにはおいしそうなケーキや焼き菓子がありそうでしたが、
長蛇の列に早々にあきらめ、また別の日にトライすることに
ユータンして再び目白通りを駅に向かって戻り、
陸橋である目白橋を渡ります
途中、埼京線がやってきました
地面が結構揺れました
駅のはす向かい(学習院の前)にある商業施設TRAD目白に向かいます
一階にある宮越屋珈琲へ
奥まった席に座り、まずは冷たいお水をいただきます
カフェオレとアールグレイのパウンドケーキ
カフェオレのカップはアラビア社のパラティッシ(パープル)でした
大きめのカップにたっぷり注がれたカフェオレは濃厚でおいしかったです
パウンドケーキは生地しっとりで、アールグレイの良い香りが広がりました
ゆったりした時間を過ごしたあとは再び外へ…
見上げれば青空、すっかり春の陽気です
駅前の花壇はたくさんの花で彩られていました
面積ぎっしりお花が植えられてあります
手入れがよく良くされているようで、
とても生き生き、どの花も自慢げに咲き誇っていました
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お読みいただきありがとうございます。