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カサブランカ202号室

上京してはじめて暮らしたアパートの名前は、「カサブランカ」といった。

「あなたの部屋はイングリッド・バーグマンの部屋ね。」
大家さんから鍵を手渡され、茶目っ気たっぷりにウィンクされた瞬間、胸にこみ上げてきた、あの嬉しさをふと思い出した。
これからはじまる東京での暮らしが、
急に色目きだち、すぐさま映画「カサブランカ」を借りに走ったのだ。

アパートで1人、バーグマンの美しさに魅入りながら、東京で最初に学んだのは、さよならの美学だった。

美しい別れ。

いつか訪れ写真におさめた、バーグマンの名のついたバラの花を眺めながら、一等美しい別れを想った。


麻佑子

#日記 #エッセイ

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