会計実務の疑問①なぜ取引先別の残高を管理する必要があるの?

このシリーズでは、経理担当の方向けに、今さら聞けない会計の疑問を取り上げていきます。
今回のテーマは、取引先別の残高管理についてです。

①本決算時に勘定科目内訳明細書の作成義務があるため

会社は、決算・申告時に貸借対照表、損益計算書、販売費一般管理費の明細書などの財務諸表、勘定科目の取引先別残高を記した勘定科目内訳明細書を作成し、税務署に提出する義務があります。本決算までには、必ず、各科目の取引先別残高を整理しておく必要があります。ただ、これについては会社経理側で作成せず、作成を税理士さんに丸投げしているケースもあるかもしれません。

勘定科目内訳明細書サンプル

スクリーンショット 2021-07-29 9.26.52


②正しい月次決算・本決算を組むため

月次決算を早期に正しく組んで、現在の財務状況を把握する、そして今後の投資戦略等に活用する。これは理想的な経理・財務部のあり方と言えます。

では、その「月次決算が正しいかどうか」は、どのように確認するのでしょうか?1つ1つの仕訳を目視でチェックしていくのは非常に大変で効率が悪いです。

この点、月次のたび、各科目の摘要(取引先)別残高を整理するのがおすすめです。以下のような視点でチェックします。

・会計データ上の銀行ごとの預金残高は、実際の通帳残高と一致しているか?

・会計データ上の売掛金の取引先別残高は、売上台帳や販売管理ソフトなどで把握している実際の残高と一致しているか?一致していない場合、消し込みがちゃんとできていない、売上が過大/過少計上になっている等、仕訳計上処理に誤りがある可能性がある

・会計データ上の買掛金、未払金の取引先別残高は、仕入台帳や原価管理ソフトなどで把握している実際の残高と一致しているか?一致していない場合、消し込みがちゃんとできていない、経費が過大/過少計上になっている等、仕訳計上処理に誤りがある可能性がある


売上や経費に対する関心から、損益計算書のチェックに力を入れる経理担当の方が多いですが、まずは貸借対照表の残高を確定し、その後損益計算書のチェックをするのがおすすめです。

貸借対照表科目、例えば預金や売掛金、買掛金、未払金、借入金等の資産負債科目の残高は、必ず「現実の残高」と一致する必要があり、答えが一つなので間違いようがないからです。まずはそちらを正しいものに確定していきましょう。


補足1)会計ソフトを乗り換える場合の注意点

会計ソフトを乗り換える場合、前期分の仕訳データを取り込み、期首時点の科目別残高を設定される会社が多いと思います。ここで、動きの多い貸借対照表科目(売掛金、買掛金など)だけでも、期首の取引先別残高を設定するのがおすすめです。

期首の取引先別残高が設定されていないと、期中の残高もよくわからなくなってしまいます。以下の例では、期首の売掛金残高26,411,659円の取引先別残高が設定されていない(=未選択)になっており、12月末時点の取引先別の残高も正しく整理できていません。

スクリーンショット 2021-07-29 9.58.18


補足2)取引先別の残高を管理しなくて良いケース

以下のようなケースでは、会社経理側で取引先別の残高を管理する必要はないかもしれません。
(会社と税理士さんの顧問契約の内容によりますので、顧問税理士さんに確認してください)

①税理士さんに会計ソフトへの記帳を丸投げしている
②部分的に会計ソフトへの記帳は行なっているが、月次決算は全て税理士さんで処理してくれる(会社経理側に勘定科目別の残高を管理する責任がない)

逆に言えば、会社側で月次決算を早期に正しく行い、リアルタイムに財務状況を把握したい!そんな思いをお持ちの場合は、会社経理側で会計帳簿残高に責任を持ち、毎月の取引先別の残高を管理していく必要があると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?