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相棒に亀山くんが帰って来るから、Season1を振り返って、今との違いを考えつつワクワク待つ

いよいよ相棒に亀ちゃんが帰って来る。
美和子と一緒に学校のない国で学校を作りに行った亀ちゃんが、あの右京さんを変えた亀ちゃんが相棒に帰って来る。

ということで、再放送の罠にまんまとはまりながら、相棒Season1を見直してみたら、右京さんがいかにそれまでの相棒によって変貌してきたかがわかったし、正直このseasonの相棒がどうなるんだろう…という、期待半分、不安半分の気持ちが沸き上がってきた。

〇右京さん、かなりロボティック

当初の右京さん、なかなか無機質だし無表情だし「僕の悪い癖」なんて茶目っ気もありゃしない。トリオTHE捜一も敵対心がすごくて追い払われまくってるし、「警部殿」と呼ばれるのもある意味関係性ができたからの愛称だったのだと感じる。
なんせ無表情だし声の抑揚も一定だし、表情筋もほぼ動かない。本当に右京さんを人間にしたのは亀ちゃんだったと、season1でつくづくと思う。
亀ちゃんがいなければ、神戸くんに対して自分の正義を譲る右京さんも、カイトくんを育てようとする右京さんも、「まだ一緒にいたい」と冠城くんに言う右京さんも存在しなかった。やっぱり亀ちゃんは偉大だった。

〇亀ちゃんの葛藤と相棒になるまで

亀ちゃんが2話と4話でクビに悩む。2話ではイタミンに「特命係の亀山」と言われて「特命係の、は余計だ」と怒るくせに、5話では「犯人わかんなかったら言って来い」と開き直っている。
3話の「秘密の元アイドル妻」では意味わかんないタイミングで落語に連れていかれてもそれなりに素直に楽しんでいるし、亀ちゃんは当初からかなりまっすぐで素直な性格だ。だから、この2回にわたる、自分の人生をかけて右京さんと運命を共にするか、一緒に正義を貫くかっていうところで、特命にいる自分についてとか、右京さんという人について、意識や感覚が変わったんだろうなと感じている。言わば、"相棒"の土台作りの基礎工事だったんだろう。

それでいて、4話の「下着泥棒と生きていた死体」で、徹底的にやって何度も関係者の所に行く右京さんに対して「まだやるんですか?」とか早く終わらせたい感満載だったり、「書けとおっしゃるなら(ホワイトボード)書きますけど」みたいなちょっと上司に仕方がなく従う部下感が出ていたりと、もはや視聴者にとって当たり前になっている、右京さんと亀ちゃんの阿吽の呼吸にはまだまだ至っていない感じもまた初期らしかった。

この4話では、下着泥棒の裏付け捜査が身内である警察の隠蔽に結び付く話だし、その前の2話は権力者の殺人の隠蔽工作を暴く話だった。

「怖くないんですか?」
「怖いですよ。こんなことが積み重なって警察が信じてもらえなくなるのが怖い」
4話「下着泥棒と生きていた死体」

このseason1は「ふたりだけの特命係」というサブタイトルで、放送当時は「season1」とは銘打たれていない。だから、おそらくシリーズ化までは決定していなかったんだと思う。3ヶ月という時間の中で、亀ちゃんの考え方が揺さぶられて、まっすぐな正義が右京さんと共鳴しあっていく流れ(前半で2回もクビに悩むとか)はすごくいいテンポだったなぁ、と思う。

これは相棒が変わるたびにあるターンかもしれないけれど、2代目以降は「杉下右京」がある程度認識されてからの関係作りだから、ちょっと亀ちゃんとは毛色が違うと思っている。
なんていうか、杉下右京という「なりふり構わず正義を貫く存在」に、自分の正義が刺激される、というところで、むしろ最終的に「正義」の影響を受けるのは右京さんであることが多かった印象を、勝手に持っている。(神戸くんラストの印象が強いのかも)

3代目のカイトくんは、刑事として成長期のはじめだったから、そういう意味では価値観の構築には多大な影響を及ぼしたとは思うし、右京さんも「育てる目」みたいなターンを迎えていたから、あれは相棒的には大きな分岐点だったかもしれない、と今ふと感じた。それだけにまさかの闇落ちでカイトくんが退場してしまったから、個人的にはちょっと触れにくいシーズンになってしまったのがもったいないけれど。

右京さんと亀ちゃんが相棒として大きく近づく名シーンに、10話「最後の灯り」で亀ちゃんが右京さんをおんぶするシーンをあげる人は多いだろう。亀ちゃんが右京さんについて理解しようとしたり、いろいろ悩みながら一緒にいるようになる描写は上に書いたみたいにいくつかあるけど、多分このシーンが「右京さんの普通と亀ちゃんの普通が違って、それを右京さんが受け取る」というシーンだからだと思う。

1話から語られたロボティック右京さんが、自分のあまり理解できない非合理的なものを受け入れて人に甘えるんだから、あれは大きな分岐点だった。
今の右京さんが「相棒を置いて行けない」と言ったって別に普通にストーリーは流れて行くと思うし、ピンチの時に「自分のことは置いて行け」と感情的に、あるいは相手を信頼した顔で言っても多分ストーリーは違和感なく進むけど、season1の流れでそんなこと言おうものなら、違和感しかなかっただろうなぁ。

〇その他セットとか音楽とか

ほかにも、環さんの「花の里」のセットや角度が違ったり、環さんが「何年一緒に暮らしてたと…」みたいに元嫁感すごく出してきたり、芹沢がいなくてそもそも捜査一課がトリオじゃなかったり、違っていたところはたくさんある。

「相棒と言えば」なあのオープニングではない。調べてみたら、season3から今のあの曲らしい。

(しかし、同じ素材をアレンジでこんなにも変えるって、編曲ってすごい仕事だし、この人よくこんなにまとめたなぁ)

〇だけどやっぱり変わらないのは

season1を見て、変わらないこともあった。
例えば亀ちゃんがまっすぐなこととか、「正義」を貫こうという姿勢とか。
いろいろあるけど、ここであえて書きたいのは、「美和子がイイ女だ!!」ということ。

一時期謎に亀ちゃんと別れて他の人と付き合ったターンだけはいまだに理解できていませんが、2話と4話で詳しいことは話さないながらも「俺クビになるかも」と言った亀ちゃんに、「自分が正しいと思うことなら貫いてクビになればいい。亀ちゃんくらい自分が食わせる」と背中を押す美和子

ドラマでは数々の「あなたの信じる道を行け」的支える良妻が描かれるけど、わざとらしくなく良かったなぁ、と思った。
「俺はいっぱい食うぞ」「収入減ったら食べる量は半分だ」という4話のやりとりもすごくよかった。そしてゆくゆく、亀ちゃんが仕事を辞めてやりたいことがある、という本当に未知への挑戦についていく。
美和子って本当にいい女だなぁって思ってしまった。

そう、こういう相棒の軽快なやりとり。
どの相棒も信頼関係に伴って右京さんや周囲の人と軽妙なやりとりをするようになってくるんだけど、そもそも亀ちゃん自体が体育会系まっすぐフットワーク軽めの、やや抜けた人だから、序盤からいろんな人と(時にはズレた犯人とさえ)軽妙なやり取りをするのも魅力だった。

〇新シーズン、帰って来る亀ちゃん

予告では、緊張した面持ちの亀ちゃんしか見ていない。
半年あるseasonとはいえ、亀ちゃんと右京さんの別れから10年以上が経過している。14年ぶりの再会で緊張しないわけもない。

最近の相棒の新シーズンの第1話は、当たり前のように前編と後編に分かれているけど、前編は話があっちいったりこっちいったりで、伏線を張っているようでいたずらにこねまわしてるだけだなぁ、と個人的には感じてしまっている。
前編見なくても後編で十分に事足りるというか、30分くらい見逃しても結果的に話にそんなに影響がない、というか。(その後に絡んでくることは確かにあるけど)上手な時間の使い方をしていないなとか、前編後編に分けるほどでもないな、というか。

今回の5代目としての亀ちゃんが、そう長くシーズンを跨がないのではないか、と個人的には思っている。
もしかしたら、今回のシーズンで相棒は終わるかもしれない、くらいのことは思っている。

右京さんと亀ちゃんの久しぶりの出会いは、丁寧に描いてほしいとは思っているし、楽しみにしているけれど、気合や期待が空回るような、「で、とりあえずメインは来週の後編ですね」みたいな1話にならないことを、なんなら3ヶ月経ってやっとぎこちなさがなくなるみたいな、そんなシーズンにならないことを、すごくえらそうな言い方しかできないけれど祈っている。

亀ちゃんが相棒に帰って来るぞー--っっ!!!

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