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運転手


私の人生を変えた旅は、”母親になって子供達の運転する車に同乗すること”だ。

子供が生まれたことが旅のきっかけであり、ナビゲートするという名誉ある仕事が託される。

子供達が小さい頃は私が運転し、彼らは車窓から景色を眺めているだけだった。
初めて見る景色に目を輝かせ、手を叩き、歓声を上げる。
”マミーみてみて!”と大声をあげて、彼らが見つけた素敵なものを教えてくれる。
映画のように流れる景色は、発見と驚きの連続だろう。
ただ、私がスピードをあげすぎたり、急な山道を登ると子供は車に酔ってしまう。

それが成長するに従って、ただ座っているのがつまらなくなりハンドルに触りたがるようになる。
そのタイミングはそれぞれで、いつまでも運転手の横で景色を見ていたい子もいれば、早くから私からハンドルを奪って自分で走りたい子供もいる。

運転の仕方は簡単だ。車のガソリンを満タンにしてしっかりとハンドルを握り、アクセルを踏む。止まりたくなったらブレーキ。
スピードや交通ルールを学んで守ること。
道から逸れない、逸れてしまったら後戻り。
初めは緊張するけれど、経験を積んでそれが楽しみに変わってくるはずだ。
見慣れた景色から、新しい景色を求めて地図を広げ移動距離が増えていく。
私が見たことのない景色もたくさん見せてくれることだろう。

今の私は運転席から助手席に移り、そして後部座席左側に座り直した所だろうか。
想像するだけで寂しくなるけれど、そのうち私は車に同乗しなくなって、行き先から無事到着のメッセージが届くだけになる。

その時が来たら、私ももう一度自分のハンドルを握りしめて走り続けるだろう。
子供の車に乗せてもらいながら自分の車もメンテをするのは簡単ではないけれど、それでもゆっくりと長く走り続けられるように大切にしたい。

この長い旅がいつ終着点を迎えるか分からない。
だからこそ、一瞬を大切に見過ごさないように、いつもそのことを思い返すようにしている。


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