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4月に補聴器をはじめた話 その1

私は、ごく若い頃から「耳が弱い」という風に思っていました。
でも、このことを言葉にして誰かに相談するとかは全くできずに、長い時間を過ごしてきました。

年齢が上がるにしたがって、私自身も気づかないうちに、ほんの少しずつ聴力が低下してきたようです。徐々に周りの話がわからなくなってきて、「話し相手の声は聴こえるんだけど、何を話しているのか、わからない」ということが多くなってきました。

62才になった今年、3月のお天気のいい日に、なぜかふと思ったんですよ。

《私は、耳が聴こえにくいことで困っている私に、もっともっと優しくしてもいいんじゃないか》って。そして、
《補聴器は合いにくいと言う人もいるけど、それは私自身が試したのではないし、一度私に合う補聴器をとことん探してみよう》って、思ったんです。

はっきりと決めたことで身体がすっと動いて、補聴器外来のある耳鼻科を調べてすぐに連絡しました。すると幸運にも、あまり日を置かずに受診することができたんです。

その医院で私は、お医者さんと言語聴覚士さんに丁寧な説明をしてもらいました。
補聴器も技術が進んで昔より合わせやすくなっていることや、もし軽度難聴であっても補聴器を使用するのは後々の聴こえにとっても大切であることなどを教えてもらい、納得すると同時にホッとしました。

そして、長い間我慢していたことや、どのように困っていたのかという話を聞いてもらえたことで、《ここで補聴器をつくって、これから新しい耳で生きていこう!》と思えたんです。

検査をすると感音性難聴で加齢性難聴でした。
両耳とも中程度の難聴になっていました。私が思っていたよりもずっと耳の聴こえが悪くなっていたんです。これはとてもショックでした。
補聴器を私の耳に合うように調整することと、私自身が補聴器を使うことに慣れるため、3か月ほど定期的に通院することになりました。

初めて補聴器をつけて外へ出たときのことは、よく覚えています。
風の音、車の音、人の話し声、人の歩く音、クラクション……。
色んな大きな音が一斉に頭の中に入ってきて、
《うわっ、うるさっ!》
路上で声を上げそうになりました。

お医者さんからは、「今までは音が、特に高音域の音が脳に届いていなかったので、補聴器に慣れる第一段階として、脳に音を届けることが大切です。いろんな所へ行って、できるだけいろんな音を聴いてくださいね。」と言われていました。

また、「音が聴こえないために、ずっと静かな環境に慣れていたので、補聴器を通すと、どの音もうるさく感じるかもしれません。疲れない程度に色んな音を聴いてくださいね。」とも言われていました。

この指示を思い出しながら、
《大きな音が耳に入ってくるのは、正直うるさくて怖い。嫌だ。
でも、お医者さんの言葉を信頼して、とりあえず今は聴いてみよう。》
と決めました。

そして補聴器をつけたまま、街中の音を聴きながら、あっちこっちブラブラ散歩してたんです。

公園にさしかかったとき、ピピピピピピ…と鳥の声が聴こえました。
私はおもわず息をのんで、立ちどまりました。
《こんな街中にも鳥がいるんだ!
鳥の声が聴こえていないことさえ、私は気づいていなかった!》

久しぶりに聴く鳥の声は、私の耳元にスッとやってきて、頭の中をスーイスーイと通りぬけてゆきます。
《聴こえることは気持ちがいいなぁ~》
鳥の声の心地よさに、私のからだは一気にほぐれていきました。

《私が聴きたい声や音を、ずっと聴いていられたらいい。》
そう思って、その日は長いあいだ公園の中を歩いて、
鳥の声を聴き続けていました。

私と補聴器の最初の一日は、こんな風に過ぎていきました。

#補聴器
#感音性難聴
#脳
#アレクサンダーテクニーク

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