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摂食障害、でも大きくなってゆくお腹は愛おしい

「体型の変化が嫌で食べられないんですか?
 お腹が大きくなるのが嫌ですか?」
「希望しての妊娠なんですか?」

妊娠中、とあるクリニックで投げかけられた言葉だ。
たしかにわたしの体重の増加不良は明白だった。

でも信じて欲しかった。
わたしは赤ちゃんが欲しかった。
赤ちゃんに会える日が楽しみで仕方なかった。
お腹が大きくなっていって、胎動を感じられる日を心待ちにしていた。

でも、体重計の数字が怖かった。水を飲むことさえできなかった。100㎖の水を飲んで100g体重計の数字が増えることが恐怖だった。
1日に何度も何度も体重計に乗り、数字に束縛されていた。

赤ちゃんのために食べないといけない、体重も増やしていかないといけない、と頭では分かっていても心が追いついてこないのだ。

加えて、つわりもかなり酷いほうだったと思う。
食べても吐いてしまう。食べられるものがどんどん限られていく。

赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。何度も泣き、お腹をさすりながら赤ちゃんに謝っていた。

クリニックで投げかけられた言葉は、
「母親になる気があるのか?」
「摂食障害のくせに妊娠してどうするの?」
そうわたしの心には聴こえてきた。

哀しくて、悔しくて、でも何も言い返せなかった。
どうせわたしは摂食障害だから。

ガリガリに痩せ細った自分の手脚を見ながら「ごめんなさい」と小さく言うことしかできなかった。

結局わたしの体重増加不良により、クリニックから県病院へ、そして大学病院へと転院することになった。

大学病院で診てもらっている頃には、つわりで吐き癖がついてしまい、過食嘔吐の症状が週に3回ほど出てしまっていた。

「ごめんね、ごめんね」と泣きながら吐いたあと、自分の中の許可食を食べる日々だった。

低カリウム症状が出た。
ビタミン類が足りない。
体重が増えない。

それでも信じて欲しかった。

わたしはお腹の中の赤ちゃんが大好きだった。
日に日に大きくなるお腹が愛おしくて、なんだかおかしくて、鏡の前に立っていろんな方向から見ては笑みがこぼれていた。

決して良い環境とは言えない、わたしのお腹の中で育ってくれた娘。
そんな娘が明日、はじめての誕生日を迎える。

お腹の中に宿ってくれた小さな命が、
今、この瞬間、いつものひどく悪い寝相で眠っている。

娘はどんな夢を見ているのだろうか。
お腹の中にいた頃を思い出しているのだろうか。

わたしは今日、娘を抱きしめてから眠ろう。

読んでくださり、ありがとうございました。

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