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気づいていなかったのは、私
今日わたしは28歳になった。
うつも摂食障害も何も変わっていないけれど
年齢は重ねていくらしい。
今朝起きると、ダイニングテーブルの上に紙袋が
置いてあった。
夫からのプレゼントだった。
実はここ3週間ほど、夫とろくに会話もせず
顔も合わせていない状態だった。
それで今年の誕生日はほんとのほんとに孤独だ、と
思っていた。
お祝いしてもらいたいような、嬉しくなるような年齢でもないけれど、それでもやっぱり誕生日は特別な日になったら嬉しい。
写真に残したくなるような出来事が起こればいい。
わたしはここ最近、
「もううちに興味ないんやろ?」
「なんも分かってない」
「うちの話聞いてくれんなったね」
と、そんな言葉を夫にぶつけていた。
夫がわたしの欲しいものを知っているはずがないと思いながら、ゆっくりとラッピングをほどいていく。
入っていたのは、淡いグレーのショルダーバッグ。
涙が出た。
夫にぶつけてきた言葉をかき集めて、なかったことにしたかった。
ごめんねとありがとうがごちゃごちゃになった。
何も知らなかったのはわたしだった。
何も見ようとしていなかったのはわたしだった。
決めつけて塞ぎ込んだのはわたしだった。
夫はわたしを知っていた。
夫はわたしを見ていてくれていた。
夫はわたしの話を聞いてくれていた。
ずっと欲しかった。
ちょっとお散歩に出たり、
ちょっとカフェに行ったり、
そんなときに使えるようなショルダーバッグが。
昨日もショッピングモールで商品を手に取って、
買おうかどうか悩んでいた。
仕事を終えて、宝物になったショルダーバッグを
かけてお気に入りのカフェに向かった。
「お誕生日おめでとうございます!」と
スタッフさんが声をかけてくれた。
びっくりした。
「なんで知っとるんー!びっくりした!ありがとうございます!」と言うと、
「この間自分で言ってたじゃん!
28日誕生日だって!ここのティラミスをバケツサイズで作ってよ〜って言ってたよ!」
あぁ。そうだった。
お気に入りのカフェのお気に入りのティラミス。
もったいなくていつも時間をかけて食べるティラミス。
もちろん今日も深煎りブレンドとティラミスを注文した。
⭐︎happy anniversary ⭐︎
という可愛らしいピックがちょこんと。
写真に残したい出来事がまた起こったじゃないか。
わたしは今日もうつ病だけれど
わたしは今日も摂食障害だけれど
今日のわたしは不幸じゃない。
わたしのことを心の隅に置いてくれている人がいることを感じられたから。
夫に謝ろう。夫にありがとうを伝えよう。
夫においしいご飯を作ろう。
スタッフさんに感謝しよう。また来よう。
たくさん、何度も、おいしいを伝えよう。
今日のわたしは不幸じゃない。
今日のわたしは幸せ者だ。
ありがとう。
28年前に産んでくれた母へ。
ありがとう。
結婚してくれた夫へ。
ありがとう。
すくすくと育ってくれている娘へ。
ありがとう。
おいしいコーヒーとティラミスをつくってくれるスタッフさんへ。
ありがとう。
おめでとう、とメッセージをくれたみんなへ。
ありがとう。
わたしは今日も生きているよ。
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