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小説(3):革命

小学生ながらこんな素っ頓狂な夢を語っているちょっとおかしな奴に果たして両手で数えるほど友達はいたのだろうか。

それが驚くことに両手では数え足りないほど多くいたのである。
その理由はいたって簡単で、おばあちゃんのおかげで僕の学業の成績が良かったからだ。
都会だったらそんなことは無かったのかもしれないが、僕の住んでいた地域は超がつくほどのド田舎である。
都会と田舎において親の教育に対する意識や教育に費やす金額には大きな隔たりがあるのは周知のとおりだろう。
有名大卒の親を持つ友達なんて皆無に等しかった。
これは僕が小学生のころには全く知らなかったのだが、僕の両親も二人とも高卒であり、いとこや親戚に有名大学卒の人はいなかった。
ただしおばあちゃんを除いて。
おばあちゃんはいわゆる一流大学卒であり、法律の勉強をしていたらしい。だからこそ勉強の大事さが身に染みており、僕が勉強で苦労をしないように小さい頃から色々な図鑑や伝記などを買い与えてくれたのだろう。
当時の僕はその素晴らしい策略に全く気付かなかった。
恐るべきおばあちゃんである。
拍手拍手である。
そういう訳で僕は小学校の勉強で躓くことなんてまず無かった。
周りの友達が算数の計算で四苦八苦している様子を見ては、「なんでだろう?」と思ってはいたが、出来るだけわかりやすく教えてあげ、羨望の眼差しで喝采をもらったりした。
「小学生は力がある奴が一番で、勉強しかできない奴はいじめられる」という考えは僕らの世界には存在しなかった。
力と知の共存である。
ああ、なんと素晴らしき世界。

ただ、一つだけ付け加えさせてもらうと、僕は運動もなかなかできた。
自慢なんかではない、これは事実である。
事実を言って何が悪い。
勿論校内で指折りのかけっこ走者だったかと聞かれれば全くそんなことは無いが、クラス内では3、4番手辺りだった。

そんなある日である。
ひょんなことから僕は父に「将来の夢は探偵になって、犯人をたくさん捕まえるんだ!」と言った。
父は笑いながら「この近くで何か事件が起きたことはあるか?」と僕に聞いた。
僕は質問の意図が分からず元気に「無い!」と答えた。
すると父は「じゃあ探偵はいらないよな」とあっさり笑って言った。
僕は妙に納得してしまった。
確かに誰かが殺されたとか盗みにあったとか聞いたことないな、あ、確かに、探偵いらないかも、と。
驚くほどスッキリと納得してしまったので僕は将来の夢が壊されたからといって全くショックは受けなかった。

特に新しい夢を探そうということもせず、僕は地元の中学校に進んだ。

(4)へ続く・・・


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