見出し画像

小説(2):革命

名探偵コナンがどんな漫画かという説明はもはや必要ないだろう。
おばあちゃんは大体2週に1回ほど本屋に連れて行ってくれ、その都度1巻の次は2巻、2巻の次は3巻というようにそれを1巻ずつ買ってくれた。
当時の僕は、どんな難事件であれ天性の頭脳で事件を解決に導く主人公、江戸川コナンにひどく憧れたものだった。
また、幼心もあってか、彼が所有する腕時計型麻酔銃や蝶ネクタイ型変声機、キック力増強シューズやターボエンジン付きスケートボードがとてもかっこよくて、探偵になるとこれほどの道具はないにしても、ボイスチェンジャーや魅力的な凄い道具で犯人を捕まえられるんだと本気で考えていた。
今思うととても恥ずかしい。
しかし当時の僕は本気でそう考えていたのである。
なぜなら将来の夢を発表する授業でクラスの皆の前で「ぼくはたんていになりたい」と発表してしまうほどだからだったからだ。
皆の反応は当時の僕の予想とは全くの逆だった。
彼らは「そんなじみなことしたくなーい」「ぜんぜんたのしくなさそー」と口々に言った。
僕は彼らの言葉にショックを受けただろうか。

受けるわけがない。
なぜなら、僕は彼らの誰よりも探偵の仕事内容や面白さを深く知っているつもりだったし、成績も優秀だったので僕には江戸川コナンのような知性があると思い込んでいたからだ。
寧ろ、クラスで僕以外誰も探偵になりたいという人がいないということは競争率が少なく、この地域で探偵事務所を開けばいたるところで引く手数多になるに違いないと思うほどだった。
そして、彼らの「やきゅうせんしゅになりたい」「サッカーせんしゅになりたい」という発表に対して僕は「へたくそなのになにいってんのかなー、ばかなのかなー、もっとげんじつみろよ」と思っていた。

お前自身が何言ってんだ、ちゃんと現実見ろよである。
つくづく阿保である。
どうしようもない阿保である。
思い出すと笑いがこみあげてくるほどの阿保である。
当時の僕はそんな少年だった。

(3)へ続く・・・


あなたのおかげで夕飯のおかずが一品増えます。