小説(1):革命
僕の小学校低学年の頃の夢は探偵になることだった。
周りがサッカー選手や野球選手、あるいはモデルや医者になりたいという中での僕の夢は、恐らく先生が目も当てられないほど完全に浮いていただろうが、当時の僕は、周りの皆の夢よりはよほど現実的な夢に違いないと考えていた。しかし、少し変わった少年であったことは間違いない。
これには僕のおばあちゃんが大きく関係している。
部活動やクラブ活動の何一つにも参加していない所謂「帰宅部」だった僕は、学校が終わると同じく帰宅部のクラスメートと片道2~3Kmの道を道草を食いながら帰った。
道草といってもそこは途方もない田舎路である。
道草の定番であるゲームセンターや駄菓子屋などあるはずがなく、道に転がっている丸い石を見つけては、道路の端の用水路に落ちないよう細心の注意を払ってひたすら交互に蹴り続けた。
また、道中には橋が架かっており、そこを降りて水切りもよくしたものだった。虫取り網を学校へもっていき、帰りに草むらに分け入って大きなバッタやカエルを捕まえたりもした。
これらが小学生の僕たちにとってはもうとてつもないほど楽しいのである。
勿論ゲームセンターの存在は知ってはいたが、歩いていける距離では勿論なかったし、そもそも行きたいとも思っていなかったので羨ましいと思う気持ちは一つだってなかった。
平均して石が3~4回用水路に落ちたところでクラスメートとは別の道になるので別れ、僕はおばあちゃんの家へ向かう。
僕の両親は共働きであり、二人とも家に帰るのが19時半~20頃になるのが普通だったので、母の帰りに車で拾ってもらうまでおばあちゃんの家にいるのが決まりだった。
おばあちゃんは僕に色々なことを教えてくれた。
囲碁や将棋、オセロなどのボードゲームは全ておばあちゃんから習ったものであり、友達との勝負では負けることがなかった。ただ、おばあちゃんにだけは何度やっても勝てず、負けてぐずる僕に優しく「また上手くなったね」と微笑んでくれた。
また、おばあちゃんは色々なものを与えてくれた。
四字熟語やことわざの本、世界の偉人たちの伝記、科学系の図鑑を僕に与えてくれた。
僕は特に勉強熱心だったわけではないが何かと暇だったのでそれらの本は熱心に読んでいた。
ここまで聞くと、おばあちゃんはさぞ教育熱心な人なのだろうと思うかもしれない。
まあそれは事実なのだが、おばあちゃんは僕に漫画も買ってくれた。
何の漫画かというと今や超人気漫画となった「名探偵コナン」シリーズである。
(2)へ続く・・・
あなたのおかげで夕飯のおかずが一品増えます。